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ドローンで防犯、パーキングメーターで渋滞解消

「IoT」が起こすサービスイノベーション

2015/6/10

ドローンは空の産業革命

去る2015年5月20~22日、千葉県の「幕張メッセ」で「第1回国際ドローン展」が開催された。最近は何かとネガティブなニュースの多いドローン(小型無人機)だが、今回の展示会は技術革新を目的としたポジティブなイベント。ドローンに関する最先端の技術やサービスが多数披露された。

第1回の開催ながら、会場には多くのビジネスマンが詰めかけ、特設会場で開かれたセミナーにも立ち見が出るほどの盛況ぶり。今、話題のドローンに対する単純な好奇心はもちろんだが、ビジネスチャンスとしての注目度も高いと感じた。その中で、多くの来場者が目を留めていたのが、ドローンを活用したセコムのオンライン・セキュリティシステムだ。

このセキュリティシステムでは、敷地内のレーザーセンサーが侵入を検知すると、自律型の小型飛行監視ロボット(=ドローン)が自動飛行で現場に急行。不審人物や不審車両を発見すると搭載カメラで撮影を開始する。

撮影した映像は、セコムのセキュリティセンターへリアルタイムに送信。センターでは画像を解析して車体ナンバーなどを特定するほか、得られた情報は現地に向かったセコムの緊急対処員にも共有される。

また、収集した映像などは警察への正確な情報提供に役立てることで、その後の犯人逮捕にも活用する。このようなシステムを確立することで、セコムは利用者の被害を最小限に抑えることを目指す。

セコム常務執行役員の小松崎常夫氏は「ドローンは空の産業革命とも呼ばれている。このような新しい技術をどう適用すれば世の中の役に立つのか。われわれはサービスイノベーションの観点から活用していきたい」と語った。

セコムがセキュリティシステムで導入した自律型の小型飛行監視ロボット

セコムがセキュリティシステムで導入した自律型の小型飛行監視ロボット

IoTとパーキングメーターで交通事情を改善

ドローンを活用した事例以外にも、近年はさまざまなデバイスとインターネットを組み合わせたサービスや仕組みが増えている。これを一言で表したのが「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」だ。4月に発売された「アップルウォッチ」もIoTの代表的な事例だ。

IoTの概念はいたってシンプル。従来はパソコンなどに限られていたインターネットへの接続機能を、パソコン以外のモノにも搭載することだ。インターネットを介して多彩な情報を自動でやり取りし、その情報をさまざまな場面で活用する。日本はもとより、海外でもさまざまな分野でIoTの活用が進んでいる。

たとえばアメリカでは、サンフランシスコ市営交通局(SFMTA)が2010年にスタートした「SFpark」というプロジェクトがある。パーキングメーターにIoTを組み合わせたシステムだ。

路肩の各駐車スペースにはセンサーを埋め込んであり、利用状況をリアルタイムでインターネット上に送信できる。どのスペースに車が駐車されているかを全体的に把握できるシステムも構築しており、利用者はスマートフォンの専用アプリを使って、空きスペースをスムーズに見つけることができる。

スマホで空いている駐車スペースが見つけられるのはとても便利だ。しかし、このシステムが優れている点はそれだけではない。さらに一歩進んだ取り組みとして注目されているのが、蓄積された各駐車スペースの利用状況をデータ解析し、利用頻度に応じて区画や時間帯で料金設定をフレキシブルに変更している点だ。

これはつまり、誰もが駐車したい場所や時間帯では利用料金が上がり、そうでない場所や時間帯では平均よりも安い料金で駐車できるということ。そういった状況になると、中には「料金が高いのであれば、安いところに駐車しよう」という人も現れるため、交通事情には当然変化が生まれるわけだ。

実際、この取り組みをしたことで交通渋滞や交通違反が減少したほか、バスなど公共交通の運行にも良い影響がみられたという。さらに、パーキングメーターの利用金額もアップしたとのこと。交通問題が改善されたうえに、収入拡大という市の財政にもメリットを産んだ成功例と言えるだろう。

サンフランシスコ市営交通局(SFMTA)が導入したパーキングメーター「SFpark」

サンフランシスコ市営交通局(SFMTA)が導入したパーキングメーター「SFpark」

IoTを支える“縁の下の力持ち”

セコムやSFMTAの例を見ると、ドローンやセンサーなどの情報収集デバイスがサービスを確立するひとつのキーアイテムだということがわかる。実際、必要な情報をいかにして収集するかという点が重要なポイントであるほか、革新的な技術が目に見えるかたちでユーザーに示されるという点でも注目を集めやすい。

しかし、それらのデバイスはIoTでいえば“T”の部分でしかない。IoTの実現には、なかなかかたちとしては見えにくい“I”の部分、つまりインターネットに関連するソリューションも意外と重要だ。

たとえば、防犯システムであれパーキングメーターであれ、インターネットに接続するのであればセキュリティ管理は常に注意を払わなければならない大きな問題となる。安全にデータを送受信できる通信環境や情報漏えいに備えた暗号化機能、悪意のある攻撃からシステムを守るファイアウォールなどがソリューションとしては当然必要となるだろう。

そのほかにも、複数のデバイスを効率的に管理・運用するシステムや、収集した情報をさまざまな企業やサービスなどとスムーズにやり取りできるネットワーク環境、情報を効率的に蓄積して的確な解析を行うデータベースなども、展開するサービスや仕組みに応じて求められる。

パーキングメーターの料金変更システムは、蓄積データを解析するソリューションがなければ実現しなかった画期的な成果だろう。スポットライトの当たる機会が多いとは決して言えないソリューションではあるが、IoTの実現には欠かすことのできない“縁の下の力持ち”といった存在となる。

閉じた世界から開いた世界へ

IoTの特徴を簡潔に表すとすれば、「常につながっている」ことだ。インターネットを使っているので当たり前だが、この特徴が意味するものは意外と大きい。

なぜなら、デバイス側が24時間365日データをソリューション(=サービスの提供者側)に送信できる一方で、ソリューション側も常にデバイスへデータを送信したり、ソリューション自体を改善していくことでユーザーに新しい価値を提供したりすることが可能になるからだ。

スマホを思い浮かべてみると、アプリの機能の改善・拡張の場合には、新しいバージョンを配信することが当たり前の設計になっている。これによって、継続的に良い製品やサービスにアップデートすることができる。

IoTソリューションを提供する日本オラクルの杉達也氏によれば、「アップデートで製品やサービスの品質を向上すれば、それはユーザーの満足度を高め、継続利用にもつながる。IoTの一つの側面として、ソリューションを開発する際にはデバイス側およびサービス側の両面で柔軟なアップデートに対応できる仕組みが不可欠」と説く。

これまでの日本の製品やサービスは閉じた環境で開発・運営されるケースが多かったとも言える。携帯電話の「ガラパゴス化」はその典型だろう。IoTを活用するのであれば速やかな意識改革が欠かせない。

「閉じた世界に固執していては視野が狭くなり、時代の進歩から取り残される。IoTを活用して世界に広くつながることで、さまざまな可能性も見えてくるのではないか」と杉氏は言う。

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