(ブルームバーグ): 純資産で初めて6兆円規模に達する巨額の国内投資信託が誕生する可能性が高まってきた。国内投信のこれまでの最大額は5兆8000億円弱。投信マネーの主役交代が起きつつあることも背景に、実現すれば16年ぶりに過去最高を更新することになる。

年明けからの新たな少額投資非課税制度(NISA)や株高を追い風に公募投信全体の残高は3月末に過去最高の227兆円を記録した。中でも個人投資家の資金を勢いよく呼び込んでいるのが、「オルカン」の名称で知られるインデックス型投信の「eMAXIS Slim(イーマクシススリム) 全世界株式(オール・カントリー)」だ。

     同投信を運用する三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄常務はインタビューで、時価の変動が読めない部分はあるとしながらもオルカンの純資産について今年度内に過去最高に「限りなく近づくか、超えていくのではないか」と自信を示した。

   オルカンの躍進は、投信マネーの担い手の変化を象徴している。従来、公募投信の買い手といえば、対面の金融機関を使い月々の分配金に価値を見いだすような高齢者が主だった。だがここ数年、オルカンのようなネット専用の低コスト投信を買い、長期投資により資産増加を目指す比較的若い世代が存在感を高めている。

代田氏はオルカンの強みについて「低コストで市場を買うことだ」と説明。資金流入の約半分が毎月一定額を買い付ける投資家の資金だといい、非課税となる投資額が拡大された新NISAを機に「積み立て投資」が普及してきているとして、相場環境に左右されず安定的な資金流入を見込む。

     オルカンは業界最低水準の運用コストを目指す三菱UFJアセットの投信シリーズの一つ。米国、日本をはじめ世界の株式市場に上場する個別銘柄に分散投資する。過去半年の純資金流入額は1兆円と投信の中で最大。24日時点の純資産は3兆4000億円と過去1年で2兆円以上拡大した。

一方、純資金流入額はオルカンに及ばないが、純資産が4兆6000億円と最大なのが、同じシリーズで米国株に投資する「米国株式(S&P500)」。代田氏は同投信についても過去最大の更新を見込む。

ブルームバーグのデータによると、上場投資信託(ETF)を除く公募投信の中で過去に最も純資産が大きくなったのは、「グロソブ」で知られる外債投信「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」。旧国際投信投資顧問(現三菱UFJアセット)のファンドで、毎月一定の水準の分配金を支払う運用が受け、2008年8月に5兆7685億円の最高値を付けた。

     ただ、グロソブの残高は今や3000億円に満たない。同投信の残高減少について、松井証券の海老澤界ファンドアナリストは、リーマンショック後の円高進行が外債運用の重しとなる中、09年に月々の分配水準を引き下げたことが大きかったと振り返る。巨額の運用資産を積み上げながら、相場環境の悪化を機に衰退していったファンドは少なくない。

     海老澤氏はオルカンなどに投資する個人投資家の多くが、株安・円高両面からの打撃を経験したことがないと指摘。積み立て投資は「淡々と続けるのがセオリー」としながらも、相場が反転すれば動揺して積み立てを「やめる人が一定程度出てくるのは自然だ」と語った。

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--取材協力:佐藤円裕.

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