タムロンでの私的流用から人間のポテンシャルを考えた話
全体に公開・
都内のラーメン二郎によく行くのですが、先日隣のお客さんが「麺なし、醤油ましまし、背あぶらかたまり、野菜ましまし」という相当ハードコアな注文の仕方をしており、しびれました。
これは二郎フリークでないとよくわからない可能性が高いですが、要するに超濃いめで脂っこい野菜スープを食っているわけです。糖質オフでヘルシー指向でありながら塩分油分マックスという、ある種の自己矛盾と自家撞着。
さて、高い技術力で知られる交換レンズメーカーのタムロンから、先日こんなニュースがありました。
タムロンの前社長・元社長が会社経費のうち総額約1.6億円を私的流用していたという唖然とするニュースです。
調査報告書の中にも具体的にありますが、この事案は取締役としての忠実義務違反、そして特別背任等の民事・刑事両面の構成要件を満たす可能性がある深刻なもの。かつ我々の一般のビジネス感覚からしても信じがたい不祥事でもあります。
ただ、私は会社が公表している調査報告書を読むにつけ、そこから染み出してくる前社長・元社長の感情の行間になんとも言えない人間味を感じてもいます。
人間味、、、というとどこか可愛げというか、共感や同情的な意味合いも含みますが、そういうものではなく、ある種リアルな人間の味そのもの、もっというと我々自身が別の世界線にいた場合での姿というか、自分も含む人間のリアリティそのものです。
この事案を批判することも、あり得ないと断罪する気持ちもありますし、そうすべきだと思います。ただ今日ここで書きたいのは、その上で感じる人間のリアリティの話、このトピックスの主眼でもある情報と感情のあり方の話です。
自己正当化とは善でありたいという心の現れ
調査報告書には例えば以下のような記述が出てきます。
当委員会が、鯵坂氏に対して Suica の利用明細を提示するよう求めたところ、鯵坂氏は 2023 年 7 月末に Suica を紛失したので利用明細を提出することはできないと回答した。
社長になると、ETC カード貸与で高速代と自家用車の給油代もタムロンに会社経費として負担させることになっており、これらは社長の特権であるとも述べている。
社長については、社長業の重圧によるストレスを解消するためには、単独で飲みに行く、カラオケに行くなどしてストレスを発散する必要があり、そのための単独飲食費や同伴飲食費は会社の必要経費であるなどと真正面から正当化した。当委員会が、それでは相談役になっても単独飲食費や同伴飲食費を会社負担にしていることはどのような理由からかと指摘したところ、小野氏は、相談役としても、会社の経営に口出しをしたくてもそれを我慢することによるストレスがあり、それを発散する必要があると述べる有り様であった。
鯵坂氏は期初に立てた予算の範囲内で社内飲食費をタムロンに会社経費として負担させているに過ぎないのであるから、単独飲食費や同伴飲食費をタムロンに会社経費として負担させていたことも含めて全く問題がない、その考えは今でも変わらないと当委員会に対して断言して悪びれなかった
2019 年 2 月の業績検討会においても、第 1 四半期が赤字転落するおそれがあることを理由に 2 月、3 月の販管費を削減するべく、鯵坂氏は、経営企画室を通じて販管部門及び販社のすべてに対して 2 月、3 月の経費見込みの見直しを指示したものの、足元の役員室経費に対しては具体的な指示をすることなく、秘書室が保険料を各月 100,000 円ずつ見直したのみで、容易に手を付けられるはずの交際費などの役員室経費については何ら削減しようとしなかったことを容認した。
(きりがない・・・)
繰り返しますが、非常識極まりなく、呆れ果てる話です。
ただ、人間というものは、私は(ごく稀なケースを除いて)完全に素晴らしい人格者もどうしようもなくダメな奴もいない、ほとんどの人が良し悪しの二元論ではなく、その両方が混じり合った存在だと思います。
そして多くの場合、人は弱くてダメな自分に自覚的であり、確信的であり、それをつい自己正当化する気持ちがある。
自己正当化というのはネガティブな響きですが、同時に正しい自分でありたい現れでもあるように思います。