エリック教授の超偏愛的な音楽ライナーノーツ

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12本の記事

青学エリック教授が独断と偏愛で選んだロック・ジャズ・クラシックの曲を中心に、時代背景や社会の動きとともにディープに解説。

松永エリック・匡史

青山学院大学地球社会共生学部学部長教授／音楽家

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青学エリック教授が独断と偏愛で選んだロック・ジャズ・クラシックの曲を中心に、時代背景や社会の動きとともにディープに解説。

松永エリック・匡史

青山学院大学地球社会共生学部学部長教授／音楽家

マイケル・J・フォックス、輝かしいキャリアとパーキンソン病との闘い名作映画と感動のサウンドトラック

全体に公開・2024/03/31

1980年代から1990年代にかけて活躍した俳優マイケル・J・フォックスは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで国際的な名声を得ました。未来から来たマーティーに扮するマイケルが、チャック・ベリーのヒット曲「ジョニー・B.グッド」を演奏し調子に乗ったあげく最後にはヴァンヘイレン調のソロを演奏、会場が引きまくるというシーンは、印象的でした。主題歌のヒューイ・ルイス&ザ・ニュースがパワフルに歌う「The Power of Love」は、全米チャート1位を記録し、第58回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされ、世界的に大ヒットしました。 Huey Lewis & The News - The Power Of Love

「真昼の月」とSwing Out Sisterの出会い

全体に公開・2024/03/10

1996年に放映されたテレビドラマ「真昼の月」。常盤貴子が演じるアナウンサー志望の女性がレイプされ、心に負った深いトラウマを、織田裕二演じる優しいクリーニング屋の男性との出会いから立ち直っていくラブストーリー。当時は、レイプやトラウマなどの社会問題をTVドラマが扱うことはほとんどなく、衝撃のドラマだったことを思い出します。このドラマを彩った楽曲、それがSwing Out Sisterの書き下ろした「Now You’re Not Here」です。日本のみでの発売で大ヒットし、1997年第11回日本ゴールドディスク大賞洋楽部門のグランプリ・シングル賞を受賞しました。この曲を聴くとドラマを想いだし、ちょっと切ない気持ちになる人が僕の同世代には多いのではないでしょうか。

アメリカン・アイドルから世界へ　〜アダム・ランバートの音楽とアイデンティティの軌跡〜

全体に公開・2024/03/03

子どもの頃から舞台で活躍し、その後「ヘアー」、「The Ten Commandments: The Musical」という錚々たるミュージカルに出演した神童が世界の扉を開いたのは、米国で人気のオーディション番組「アメリカン・アイドル」でした。世界に通用するアイドルを発掘するテレビ番組として、2002年から20シーズンにわたって放映され、数々のスターを生み出しました。 2009年に始まったシーズン8では、ポーラ・アブドゥル、サイモン・コーウェル、ランディ・ジャクソンなどの著名な審査員が番組を盛り上げ、そのシーズンでチャンスを掴んだ若者が、アダム・ランバートです。（2023年の第74回NHK紅白歌合戦に、クイーン+アダム・ランバートとして出演していたといえば、わかる人もいるのではないでしょうか。）「アメリカン・アイドル」は、もう一人の挑戦者であるクリス・アレンが優勝しましたが、最終結果発表の前に、アダムとクリスはクィーンの演奏で”伝説のチャンピオン（英語: We Are the Champions）”を歌い上げたのです。クイーンの2人は、この時にアダムをクイーンに迎え入れることを決心していたそうです。ここからクイーン+アダム・ランバートの物語が始まりました。運命はわからないものです。

ジャズ界のパトロン、ロスチャイルド家のニカ夫人

全体に公開・2024/02/18

1988年に公開されたクリント・イーストウッド監督の映画『バード』は、モダンジャズの先駆者であるチャーリー・パーカーの波乱に満ちた人生を描いた作品です。物語は、娘の死によって心身ともに荒れ果て、麻薬に溺れる彼が、高貴な女性に助けを求め、彼女のホテルで過ごす中で、彼が笑いながらテレビを観ている場面、そして咳き込みながら血を吐いて息を引き取るシーンは、多くの観客の記憶に深く刻まれました。その印象的なシーンに登場した高貴な女性こそ、イギリスの大富豪ロスチャイルド家の出身でジャズ界の謎のパトロンとして知られる、ニカ・ド・コーニグズウォーター男爵夫人(通称ニカ夫人)です。 Charlie Parker-Donna Lee

幻の女性への恋、ロックの歴史を変えたバラード

全体に公開・2024/02/11

1980年代の米国音楽シーンは、テクノロジーの進歩により、シンセサイザーやドラムマシンなどのデジタル機器が普及し、それらを駆使したサウンドが流行しました。これにより、ロック、ポップ、R&B、ダンスミュージックなど、さまざまなジャンルで新たなサウンドが生み出され、音楽シーンは多様化しました。特にロックのイメージは大きく変わりました。ロックは、1950年代のアメリカで生まれた音楽ジャンルで、当初は、従来の音楽や社会に対する反逆の象徴として、若者を中心に支持を集めました。ロックといえば、ギターやドラムを中心とした力強いハードなサウンドが特徴です。 Foreigner - Double Vision (Official Music Video)

異彩を放つ勇者クエンティン・クリスプとスティング『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』のメッセージ

全体に公開・2024/01/30

あまりにも有名な曲、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」(Englishman in New York) は、元ポリスのスティングが、1987年にリリースしたソロになって2枚目のスタジオ・アルバム『ナッシング・ライク・ザ・サン』に収録されました。一度聞いたら忘れられない印象的なイントロと歌詞は、今も多くの人を魅了しています。このミュージックビデオを観たことがあるでしょうか？スティングのほかにもう一人登場する、異様なオーラを放つ老人。気になっていた方もいるのではないでしょうか？ Sting - Englishman In New York この人物は、クエンティン・クリスプ（Quentin Crisp 1908-1999）という人物です。

80年代キース・ヘリングが魅せられたミュージックシーンとは

全体に公開・2024/01/08

グラフィティアーティストとしてストリートで注目されたキース・ヘリングと音楽は密接な結びつきを持っています。キースは、1980年代初頭、ニューヨークのダウンタウンでナイトクラブカルチャーやアンダーグラウンド・クラブシーンに没頭していました。特にパラダイス・ガレージ (Paradise Garage) は芸術とクラブカルチャーにおいて強力なエナジーをインスパイアされた関係にあり、客層のほとんどが黒人やヒスパニック系で占められているという独特な雰囲気に、キースは取り憑かれたように毎週土曜日に5年もの間通い詰めたといわれています。キースは、なぜパラダイス・ガレージに魅せられたのでしょうか。従来のクラブとは異なる、オルタナティブでアンダーグラウンドな雰囲気が、キースが求めるボーダレスなオーディエンスに向けて自身のアートを発信できる可能性を感じさせたのかもしれません。さらに、音楽を楽しむ場を超えてアートと音楽が交わり合い創造的なアイディアが生まれる場だったのかもしれません。

100人100色の愛の形があっていい。「Your Song」に秘められたエルトン・ジョンとバーニー・トーピンの愛

全体に公開・2023/08/08

ジャーナリストを目指していたバーニー・トーピンは、1967年イギリスの音楽誌”ニュー・ミュージカル・エクスプレス”誌に出したタレント公募にソングライターとして応募した。同じ時をしてオーディションにシンガーソングライターとして応募していた男は、天才的な作曲センスと歌唱力があったが作詞が大の苦手。二人ともオーディションには不合格だったが、レコード会社の男が山積みになったボツになった作詞の封筒を手渡し、二人は運命的な出会いをした。天才シンガーソングライターの名前は、エルトン・ジョン。初めてバーニーの詩を読んだエルトンに、戦慄が走る。「読んだ瞬間メロディーが浮かんだ。全ての音符が見えて弾かずにはいられなかった。指が頭に追いつかなかったくらいだ。」

地球の悲痛な叫びを表現し環境問題を強く訴えたマイクル・ジャクソン「アース・ソング」

全体に公開・2023/07/19

オゾン層の破壊による温暖化、酸性雨、そして砂漠化。環境問題は、国を超え地球規模で協力し解決しなければならない所まできている。 1997年に採択された京都議定書では、“温室効果ガスを2012年までに約5％削減すること”が目標とされた。しかし2015年に採択されたパリ協定によって、日本は”2030年度の温室効果ガスの排出を26％削減すること”が目標となり、高い削減が必須となった。さらに途上国にもこの協定に参加を要請するなど、地球は待ったなしの状況だ。しかし、こんな状況にありながら、地球が抱える環境の問題を自分ごととして捉えている人は実に少ない。キング・オブ・ポップの威名を取るマイケル・ジャクソンは、言わずと知れた世界のポピュラー音楽に多大なる影響を与えたアーティストだ。ギネスでは人類史上最も成功したエンターテイナーとして認定され、数々のヒット曲、ミュージックビデオ、ライブ映像は伝説になっている。幼いマイケルは「ジャクソン5」の天才シンガーとして世界を魅了し、天才プロデューサーのクインシー・ジョーンズと手を組み『オフ・ザ・ウォール』でアーティストとしての地位を絶対的なものとした。『オフ・ザ・ウォール』は私にとってのベストアルバムの一つで、今でもヘビーローテーションで聴く名盤だ。

忘れてはいけないアパルトヘイトの過去。白人のためだけのリゾート「サン・シティー」

全体に公開・2023/06/30

30年以上も前に南アフリカで存在していたアパルトヘイト、覚えていますか。当たり前のように人種差別が行われていた現状に、アーティストたちが立ち上がった1980年代の出来事から、アートの力と社会課題を考えます。 If you sacrifice your art because of some woman, or some man, or for some color, or for some wealth, you can’t be trusted. 女か男か、肌の色、金持ちかどうかなんかを理由に自分の芸術を犠牲にする奴は信頼できない。マイルス・デイヴィス高校生の時、リチャード・アッテンボロー監督の映画『遠い夜明け』（Cry Freedom）を観た。今でもこんな酷い人種差別が存在するのかと、信じられない気持ちでいっぱいだった。映画で描かれていたのは、目を覆いたくなるような人種差別の現実だ。南アフリカでは、人種隔離と差別の制度が合法化していた。そうアパルトヘイトだ。

反戦への悲痛なメッセージを激しい楽曲で描いたメタリカの「ONE」

全体に公開・2023/06/21

ヘヴィメタルを聞いたことがありますか？力強い音、速いリズム、叫び声、というような特徴的なサウンドから、苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか？ Good music is good no matter what kind of music it is. どんなジャンルであれ、いい音楽はいいものだ。マイルス・デイビス 1989年、グラミー賞のステージは、かつて観たことのなかった光景が広がっていた。夜の戦場を再現したステージには銃声が響き渡る。場違いなラフなジーパン姿で長髪のメンバーの影が浮かび上がり、美しいギターに叫んでいるかのようなボーカルが重なりあう。演奏されていたのは、世界で最も成功を収めたヘヴィメタルバンドとして知られるメタリカの代表曲「ONE」だった。

MTVの白人アーティスト偏重に異議を唱えたデヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」

全体に公開・2023/06/11

皆さん、初めまして。音楽を愛する青山学院大学教授のエリックです。このトピックスでは、元プロミュージシャンならではの多角的な視点で、70年代〜90年代のロック・ジャズ・クラッシックを中心に、独断と偏愛で選んだアーティストや楽曲について、熱く語っていきたいと思います。新しい音楽との出会いと発見をお楽しみください。 NO MUSIC, NO LIFE 初回は、尊敬するアーティストの一人、デヴィッド・ボウイについて。音楽は”聴く”ものという常識を大きく変えたのが、24時間ポピュラーミュージックのビデオを流し続けるという斬新な音楽専門番組、MTV(Music Television)だ。 1981年8月1日12時1分、当時のCOOジョン・ラックによる "Ladies and gentlemen, rock and roll!" の言葉とともに、MTVはスタートした。 12時15分に最初の音楽ビデオ、バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」がオンエアされた。その歌詞が表すように、音楽は”映像を楽しむ時代”に突入していった。まるで、MTVの登場により音楽の楽しみ方が変わることを象徴しているかのような曲だった。

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