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「可能性はあるが蓋然性はない」言葉を丁寧に選び、伝えることの大切さ

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竹本 祐也
アタマをフル活用!「うず潮アタマ」対策塾竹本 祐也

蓋然性と可能性が話題に

株式市場にお金が流れてくる蓋然性が高い
ガイアの夜明け ~沸騰!マネーの行方 2024年5月10日 放送 第1114回

ガイアの夜明けの予告編でゴールドマン・サックス証券への取材が入った、というのを見て、「なんか見たことある人…」と思ってポストをしたのですが、放送後にその「見たことある人」(日本株営業担当のJJさん)の日本語の流暢さが話題になっていました。その中で特に話題になっていたのが上記の「株式市場にお金が流れてくる蓋然性が高い」という言葉でした。蓋然性んて言わず可能性と言いそうなのに、と多くの人が思ったためです。確かに、蓋然性と可能性は言い換えできる言葉のように感じます。しかし、実際には少し違うので、そこまでニュアンスも含めて理解して話しているのがすごいという意見が多く見られました。

蓋然性という言葉は可能性という言葉で言い換えられるのではないか?とも思える言葉です。

辞書でひくと、この2つの言葉は以下のような定義があります。

蓋然性
読み方:がいぜんせい
蓋然性とは、ある事象が起こる可能性や確率を示す概念である。統計学や確率論において頻繁に用いられる用語で、特定の結果が生じる確からしさを数値化したものを指す。蓋然性は、事象の起こりやすさを評価するための重要な指標であり、科学的な予測や判断を行う際には欠かせない要素である。 蓋然性は、具体的な数値を持つことが多く、0から1までの範囲で表される。0は事象が全く起こらないことを、1は事象が必ず起こることを示す。例えば、コイン投げにおける表が出る蓋然性は0.5となる。このように、蓋然性は不確定な事象を理解し、予測するための有効な手段である。
実用日本語表現辞典
可能性
読み方:かのうせい
可能性(かのうせい)とは、ある事象が起こる未来の見込みや、特定の結果が得られる可能な状態を指す言葉である。この言葉は、結果が確定していない状況や、複数の結果が考えられる状況において用いられる。可能性は、数学や物理学などの科学的な文脈では、確率や予測の一部として扱われることが多い。 また、可能性は、個々の能力や才能を示す表現としても用いられる。例えば、ある人が特定の分野で成功する可能性がある、というように表現される。この場合、その人が持つスキルや経験、環境などが考慮される。
実用日本語表現辞典

上記の定義の中での差として、「蓋然性の起こりやすさ」であるのに対して、「可能性は結果が確定していないので複数の結果がありえるかどうか」です。

金融の世界においては蓋然性が重要

夏目漱石が言った例は「教壇で喋る講師が逆立ちする可能性はあるが、蓋然性はない」です。逆立ちするかどうか、結果は確定していないので可能性はありますが、きっと逆立ちしないので蓋然性はないのです。

蓋然性と可能性の違いは金融の世界においては非常に重要です。例えば「明日、リーマンショックのような不景気が再来する可能性はあるが、蓋然性はない」と考えているとします。可能性の議論だけであれば“可能性はある”のですが、一方“蓋然性はない”のであれば、その蓋然性の判断に即して、今日はリーマンショックが明日起こると考えた投資行動を起こすことはありません。つまり、“蓋然性”が重要で、議論も蓋然性の有無で行われるのです。

例えば、現在の円安などでも話題になる「政策金利の上昇」がどの程度市場全体で見込まれているのかは常に計算されています。利上げはある可能性もない可能性もあるけれど、蓋然性について市場としての総意が存在するのです。米国の利上げについて、どう市場が見込んでいるかの推移をとる、ということも可能です。

言葉選びで今も意識する2つのルール

こうしたニュアンスのレベルでの言葉選びについては、コンサルタント時代にも非常に強く指導されました。資料のメッセージラインを「クリスタライズしろ」とよく言われたものです。コミュニケーションをする際、何よりも考えていることを相手に対して適切に伝えることが重要なのは言わずもがなです。特に資料は、プレゼンテーションの場にいなかった人が別の日にその資料を読んでも、ちゃんと伝わるように(別の意味に取られないように)と言葉選びに神経を尖らせていました。

そうしたときにもらったアドバイスで、今も意識するルールが2つあります。ひとつは「体言止めを避ける」こと。もうひとつは「アクショナブルなワードを選ぶ」ことです。

1.体言止めを避ける

「資料を修正する」ではなく「資料を修正」と、体言止めをするのは避けるように教わりました。というのも「資料を修正」だけでは、資料を修正“した”という事実を報告しているのか、資料を修正“する”と今行っていることを伝えているのか、それとも資料を修正“せよ”と指示しているのか、この文章からだけでは分かりません。

クイズ番組で司会者がよく使う手で「その答えは正解で、、、」で止めて回答者をドキドキさせるというものがあります。このあとに「~です」「~ではありません」と最後につなげる言葉で文章の意味をまるごとひっくり返すことができるように、日本語は最後の最後が大切な言語です。だから、体言止めで意味をひっくり返す余地を作らないようにするのです。

読み手が正しく理解するには、背景情報が必要となり、そこから推測が必要となるのです。もし「修正済み資料は提出済み」という背景情報があれば、「資料を修正した」のだろうと推測が可能です。しかしあくまで推測、です。推測が間違うこともあるでしょう。

そもそも読み手に推測という負荷を掛けている時点で、その文字列は改善の余地があります。読み手にはできる限り負荷を掛けないことで、伝わらないことを避けるのです。

2.アクショナブルなワードを選ぶ

コンサルタントが使いがちな言葉として「改善する」というものがあります。これはその言葉を受けて何をすべきかが明確かどうかというとそうではありません。アクショナブルではありません。

「改善する」「成績をあげる」こうしたワードは“どうやって?”がありません。どれも状態を変化させることを示すワードになっているのが問題です。「設備を入れ替える」「参考書を買う」こうしたワードであれば、行動を起こすことができます。

先輩から口酸っぱく言われたことで、僕もそのあとは「読んだ人が行動を起こせるか?」という視点で、動詞を見直してみるようになりました。

ぜひ、言葉選びからコミュニケーションを見つめてみませんか?

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  • 竹本 祐也
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    株式会社WACUL 取締役CFO

    「ガイアの夜明け」で話題になっていた「蓋然性と可能性の話」を書きました


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