(ブルームバーグ): 26日の金融・証券市場は、円相場が対ドルで34年ぶりの安値を更新。日本銀行が金融政策の維持を決定したことで、日米金利差を意識した円売りが優勢だ。日本株は上げ幅を拡大している。

日銀、国債買い入れは3月会合の方針に沿って実施-政策金利維持

日銀は同日の金融政策決定会合で、政策金利の無担保コール翌日物を現状の0-0.1%に維持することを決定した。前回会合でマイナス金利解除を決めたばかりで、市場の予想通りだった。低金利が維持されることで米国との金利差が開いたままとなり、ドル買い・円売りにつながっている。

インフレが根強い米国では連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが後ずれする可能性が意識されており、日米金利差から歴史的な円安が進んでいる。円安が日本のインフレを加速させる影響を日銀は警戒しており、物価に加えて為替の水準が金融政策を左右することになる。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、日銀は円安に対して「無回答」で植田和男総裁の会見でもタカ派色を強めることは想像できないと指摘した。会合結果を受けて円安が進んでおり当局の為替介入があるかどうかが焦点だとし、円安が止まらなければ日銀に対して利上げと量的縮小を前倒しするよう圧力をかける催促相場になる可能性が高いだろうとしている。

日銀は声明文で長期国債の買い入れ方針について、3月の会合の方針に沿って実施するとした。3月会合の声明文では、長期国債の買い入れについて「これまでとおおむね同程度の金額を継続する」とし、注記で「6兆円程度となっている」としていた。植田総裁は午後3時半から記者会見する。

為替

円相場は日銀の金融政策発表後に下げが加速し、1990年5月以来となる1ドル=156円台に下落した。米国の利下げ観測が後退する中、日米金利差に着目した円売り・ドル買いに歯止めがかからない。通貨当局による円買い介入への警戒感が一段と高まっている。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、事前報道で国債買い入れについて減額方向の議論に期待値が高まっていたが、声明文では3月会合で決定された方針に沿って実施となっており、「明確な変化はなかったとの受け止めで円が売られている」と指摘する。

その上で「日銀イベントを通過した感じで156円を超え、2022年9月のような介入が入るのか意識しながらの取引になる」と述べた。

鈴木俊一財務相は26日午前の閣議後会見で為替市場の動向をしっかり注視しているとし、万全な対応を取っていきたいと述べていた。25日に米国のイエレン財務長官が為替介入はまれな出来事であるべきと発言したことについては、コメントを控えた。

債券

債券相場は先物が下げ幅を縮小。日銀が長期国債の買い入れについて、3月の決定会合で決めた方針に沿って実施するとしたことを受け、買いが入った。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、国債買い入れ規模を縮小するとの報道が昨夜にあり身構えていたが、これまでの方針を維持すると説明があり、新しい情報はなかったとし、初期反応としては買いでいいと述べた。

株式

東京株式相場は為替の円安推移を好感し、日経平均は先物主導で上げ幅が一時460円を超えて節目の3万8000円を回復する場面があった。マイクロソフトなど米ハイテク株高の流れを受けた電機株が引き続き高く、不動産株は午後に一段高。保険株も堅調な推移が続く。

フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは、日銀決定会合で政策修正に関する手掛かりやタカ派な内容が出てくることに備えていた向きが買い戻し、円安・株高が進行しているのだろうと述べた。

--取材協力:山中英典、船曳三郎、横山桃花、酒井大輔、田村康剛、日高正裕、院去信太郎.

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