2024/4/10

味はワイングラス次第? ロマネ・コンティを「100均」で飲むと…

シニアソムリエ/MBA
アルコール離れが進むなか、国内で消費数量が増えているワイン。世界共通のビジネス言語として、マナーを押さえておいて損はありません。

業界20年以上のシニアソムリエで「ワインの女神」として等身大のアドバイスに定評のある古川康子さんによると、味の良しあしを決めるのは実はワインの銘柄や状態だけではなく、「ワイングラスにもある」といいます。

100円均一のグラスはBBQ向きではあるけれども、高いワインを台無しに? 日頃はあまり語られることのないワイングラスの奥深い世界をのぞいてみましょう。
INDEX
  • おいしいワインはグラスから
  • ロマネ・コンティを100均のグラスで飲むと
  • 5年後、専用グラスで飲んだら
  • おすすめのワイングラスメーカー3選

おいしいワインはグラスから

みなさん、おうちにワイングラスをお持ちですか?
ワインは、銘柄や料理との組み合わせについて語られることが多いです。これを「マリアージュ」といいますが、「味が合う・合わない」ばかりが語られて、意外と気が使われていないのがワイングラスです。
外食でワインを注文しても、よほどの高級レストランでなければ、メーカーや形状にこだわったグラスでは出てきません。
しかし、ワインの味わいを生かすも殺すも、実はワイングラスにかかっているのです。
Iuliia Pilipeichenko / GettyImages

ロマネ・コンティを100均のグラスで飲むと

世界一高額なワインとして有名な「ロマネ・コンティ」。ワインに詳しくなくても、一度は耳にしたことがある銘柄ではないでしょうか。現在、購入しようと思うと、1本400万円以上します。
極端な例えですが、そのロマネ・コンティを100均で売られているグラスで飲むと、どんな味がするでしょうか?
100均のグラスは分厚くて簡単には割れません。キャンプやBBQなどアウトドアでは使い勝手がいいグラスともいえるでしょう。
ただ、“ワインのプロ”の舌と目から語ると、どんな高級ワインも、分厚いグラスで飲んでしまうと、味は台無しになってしまいます。
Edward Howell / Unsplash
私も似た経験をしたことがあります。
人生で初めてロマネ・コンティを飲んだのは、ソムリエとして駆け出し時代の20年前でした。勤め先のレストランで、お客様が少し残したボトルを手にした支配人が、小さなグラスに注いでくれました。
「貴重なものが飲める」
そう期待していたのですが、苦くて酸っぱくて……。正直、おいしいとはとても思えませんでした。
このときにロマネ・コンティが注がれたグラスは「100均」ではありませんでしたが、似たような小さなグラスでした。テイスティンググラスといって、お客様の注文したワインのコルク栓を抜いた(抜栓した)後に、品質チェックをするためのソムリエ用のグラスです。
wundervisuals / GettyImages

5年後、専用グラスで飲んだら

ロマネ・コンティとの最初の苦い思い出から5年後、飲む機会に再び恵まれました。
今度はロマネ・コンティ専用のグラスです。ガラスが薄いだけでなく、まるで金魚鉢のような大きさが特徴です。
飲んだ瞬間に、花束のような香りが広がりました。ワイン通の間で「ワインの王様」と言われるのも納得。「ワインの帝王」と呼ばれる世界で最も有名なワイン評論家ロバート・M・パーカーJr. も、ロマネ・コンティを絶賛しています。
あの素晴らしい味わいは、15年たった今でも、鮮明に記憶に残っています。
どんな高級ワインも、生かすも殺すもグラス次第。体験的に自ら学びました。
左から100均、ブルゴーニュ用(リーデル製)、ボルドー用(リーデル製)=筆者
勤めているワイン商社ではECサイトの運営もしており、「ちょっと値の張る」ワインを昇進や栄転、さらにはお誕生日といったお祝いの贈答品として選ばれるお客様も少なくありません。知り合いの自宅で開かれるパーティーでワイン1本を手に訪れる、ということもあるでしょう。
そんなときワインをプレゼントするのも、もちろんおすすめですが、今回の話も思い出してください。
自宅にワインセラーを置いて何本ものワインを所有している「ワイン通」を除けば、「いいワイングラス」を持っている人は少ないものです。ワインを贈るのならば、代わりにワイングラスをプレゼントするのは、いかがでしょうか?
CorbalanStudio / GettyImages

おすすめのワイングラスメーカー3選

ワイン選びでも難しいのに、ワイングラスなんて何を買ったらいいか、ますますわからない……。そんな声も聞こえてきそうです。
おすすめのメーカーは「RIEDEL(リーデル)」
ワインを扱う多くのレストランで使われており、ワインの種類に合わせてさまざまなグラスを製造している世界でも名の通ったオーストリアの老舗です。
リーデル公式サイトから
少しこだわりたいという人は「Zalto(ザルト)」は、いかがでしょう。
グラスはさまざまな形状がありますが、細長いグラスの脚と薄いガラスが繊細さを引き立てます。通好みで、ちょっとこだわりを持ったワインバーでも最近よく使用されています。また、高級ワインのワイナリー(醸造所)でも、来客用に使っているところは多いです。
Zaltoのボルドーグラス=野上英文撮影
もしご予算に余裕があれば、迷わず「LOBMEYR(ロブマイヤー)」
ソムリエも憧れのワイングラスで、どんなワインにも魔法をかけてくれます。
もし、訪れたレストランでロブマイヤーのワイングラスでワインが提供されていたら、そのお店のワインへの情熱や思いをきっと感じていただけるでしょう。
ワインをよりおいしく飲んでいただくために、ワイングラスにも目を向けてほしいという話から、おすすめの3メーカーも紹介しました。
購入やプレゼントは1回だけ、と思わないでください。違うメーカーや形状のグラスで、味の違いを楽しんでもらうのも「ワイン通」への第一歩です。