【最新版】あなたは大丈夫?実例で学ぶ「ハラスメント判例」
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ハラスメントに関わることも少なくない産業医ですが、大体裁判や労務問題になるようなハラスメントは、例に挙げられているように
・同意なく/抵抗しているのに身体に接触する
・過剰にプライベートに関与する、相手が関与することを要求する
・周囲の面前で叱責する(SNS含む)
・感情的な言動・行動を行う
に加え、
・訴えてももみ消そうとする、穏便に済ませようとする
といった会社の「まずい対応」が重なって起きます。取り上げられているのは2-1などはときどき見られ、2-2はむしろ会社が適切に対応していた例ですが、他はかなり極端な例であり、「一億総コンプラ違反」と書くのは考えものではないでしょうか。
もちろんハラスメントそのものを起こさないようにすべきですが、より重要なのは「ハラスメントを曖昧に取り扱わない」ということです。ここが「グレー思考」の日本は甘いのです。
日本企業でよく見るのは、ハラスメントと思しき問題に対し、「なかったことに」しようとして、例えば上司に対しては軽く口頭で注意し、部下を異動させて事なきようにしようとする例です。本来ハラスメントを受けた部下が異動する、というのはおかしな話であり、異動or降格させられるべきは上司でしょう。結果として「そんなつもりはなかった」が続き、いよいよ裁判案件になっていくのです。
ハラスメント防止法においても書かれているように、「きちんと事実関係を確認」し、「事実なら被害者をレスキュー」し、「加害者に措置を取る」ことが重要です。
逆に「すぐに上司をハラスメント扱いする部下」もおり、このような部下を異動させても延々上司をハラスメント扱いし続けるだけです。ハラスメントが認められないなら、当然誰にも何も対処しない、というのが原則で、ここでも「なぁなぁの異動」はいい結末を招きません。
なおよく勘違いされますが、ハラスメントそのものは法律違反ではありません。企業の義務は「ハラスメントの防止措置」であり、これを行わないのは違反とされますが、ハラスメント行為自体は(他に法律に抵触する行為がない限り)あくまで個人間の問題であり違法ではありません。
例えば職場で女性のお尻をさわればそれはハラスメントと同時に公然わいせつ罪であり、違法ですが、ハラスメントだから違法なのではなく、その行為自体が違法だから違法なのです。
注目のコメント
グローバル企業では、数十年も前からハラスメントに対する社内研修がしっかりとありました。最近のハラスメント事例を見ていると、日本企業の一部にしかそういった体制がしかれていないのではと感じるほど、驚く内容が多いですね。
特にハラスメントは、上司に相談しづらいケースが多いので、そういった場合も救済して見える化できるように、「ホットライン」と呼ばれる機密性を守るコミュニケーションラインもあります。ハラスメントだけに限らず、コンプライアンス違反に該当するのではという場合に、相談できる窓口であり、ケースごとに調査をする仕組みです。
グローバルスタンダードと比較をすると、まだまだ遅れているので、こういったコミュニケーションラインの仕組みづくりで見える化をすることと、社内研修が必須ですね。ほんの軽い気持ちでやった、一昔前なら信じられなかったような「パワハラ」が判例上も、今は完全アウトとなっております。
極論。くじ引きでもアウトの現代、「何をやったらアウト」かを、学んでいければと思います。いくら社内で管理職向けにハラスメントに関する研修をしても、コンプライアンスに関する知識を習得する機会を増やしても、本人がハラスメントに該当するラインを明確に認識できていなければ(古いままの価値基準を持っていては)、同じようなことが繰り返されてしまいます。
一方で、ハラスメントを恐れて、部下に適切な指導をしない上司も増えています。「ハラスメント」と「時には厳しい“指導”」をどのように線引きしていくかは、上司側が一方的に決めるものではなく、受け手となる人の意識が重要です。厳しい指導の前には、部下の成長に本気で向き合うという信頼関係をいかに構築していくかが前提となるべきではないかと思います。