(ブルームバーグ): 2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は4カ月ぶりの高い伸びとなった。日本銀行が掲げる物価目標の2%以上で推移するのは23カ月連続。日銀のマイナス金利解除後、市場の関心は先行きの利上げペースに移っており、物価動向が引き続き鍵を握る。

総務省の22日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.8%上昇した。前月からプラス幅が拡大するのは4カ月ぶり。政府による電気・ガス代負担軽減策の影響が一巡した。エネルギーは1.7%下落と、マイナス幅は昨年2月以来(0.7%下落)の水準に縮小した。宿泊料が2カ月ぶりに伸びが拡大したことも押し上げ要因となった。一方、生鮮食品を除く食料は6カ月連続で伸びが鈍化した。

日銀が19日の金融政策決定会合で、世界で最後のマイナス金利(マイナス0.1%)を解除するなど政策正常化に踏み出した。会合後の会見で植田和男総裁は今後の政策運営について、物価見通しの上振れや上振れリスクの高まりは「政策変更の理由になる」と言及したが、当面は経済・物価情勢を慎重に見極めていく局面といえそうだ。

野村証券の岡崎康平シニアエコノミストは、今会合で日銀は賃金と物価の好循環の強まりを認めたが、「それが今後の日銀の物価見通しにどれくらい出てくるか大きな注目点になる」と指摘。その上で、10月会合で0.25%への追加利上げを予想。日銀は為替を念頭に政策運営をする訳ではないが、マイナス金利解除後に進んだ円安から生じる「インフレを念頭に、情報発信や実際に動く可能性も十分ある」と語った。

生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは3.2%上昇と6カ月連続でプラス幅が縮小。市場予想は3.3%上昇だった。

賃金動向を反映しやすいサービス価格は2.2%上昇と、前月から横ばいだった。今年の春闘では第1回回答集計の平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超えており、賃上げに応じた価格転嫁が進むかが焦点となる。

みずほリサーチ&テクノロジーズの河田皓史主席エコノミストは、植田総裁の言う基調的な物価上昇率は「ゆっくり動くサービスが重要であるということ。そこは賃金と連動性が高い」と指摘。今回強かった賃上げのサービス価格への転嫁次第で日銀の見方も変わってくることが予想されるため、そこに注目する必要があると語った。

詳細(総務省の説明)

  • 政府の電気・ガス激変緩和対策事業は継続されており、その影響がない場合、2月のコアは前年比3.3%上昇。そもそも同事業自体がなかった場合のコアは2.3%上昇となる
  • 宿泊料の上昇幅拡大は、今年は2月に3連休が2回あったことや、中国の春節(旧正月)に伴うインバウンド(外国人訪日客)需要の拡大を反映
  • 生鮮食品を除く食料のプラス幅縮小は鶏卵の下落傾向などを反映
  • サービス価格は宿泊料の影響で通信・教養娯楽関連サービスのプラス幅が拡大したが、特に目立った動きは見られない

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--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香.

(詳細とエコノミストコメントを追加して更新しました)

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