2024/4/2

マーケから研修まで。「ビジネス×3Dアニメーション」が相性よすぎる理由

NewsPicks / Brand Design Senior Editor
 動画シフトが止まらない。デジタル化の進展とSNSの普及により、いまや情報発信やコミュニケーションの手段として気軽に「動画」が使われる時代となった。
 ビジネスにおいても、SNSマーケティングや社内教育など、動画コンテンツの利用が増加している。
 ただし、企業が動画コンテンツを継続的に作成するハードルは依然高い。また、実写動画の場合、出演するのがタレントであれ、社員であれ、属人性リスクがつきまとう。
 こうした懸念を見事に払拭してくれるのが、「3Dモデル」(3Dアバター)を使用したアニメーション動画である。
 そう述べるのは、バーチャルコンテンツに豊富な実績を持ち、現在、企業向けに3Dアニメーション運用ソリューション「VARK SHORTS Corporate Plan」を展開するVARK代表の加藤卓也氏だ。
 3Dアニメーション動画が企業における動画コンテンツの最適解である理由と、その運用方法について、加藤氏に聞いた。

属人的リスクをゼロにする

 TikTokやYouTubeショートなど拡散性が高い短尺動画は、SNSマーケティングやPRに最適なコンテンツである。
 一方で、トレンドの移り変わりも激しく、企業が、世間の流行を押さえながら投稿を続け、他社から抜きん出た認知度や露出を獲得するには、高いハードルが存在する。
 実際、加藤氏も、こうした企業の悩みを多く聞いてきたと語る。
「もともと弊社は、VTuberやアニメIP、アーティストに向けてバーチャルライブやバーチャル空間でのイベントを企画制作し提供してきました。
 そうした中で、企業からも『3Dモデル(3Dアバター)を活用した動画制作ツールを使いたい』という声をもらう機会が増えてきました。
 単純に『バズる動画を制作したい』『制作の仕方がわからない』という要望もありましたが、よくよくお聞きすると、根深い問題が2つあることがわかりました。
 1つは、通常の動画制作にコストがかかりすぎること。もう1つは、属人的であるがゆえの不便さです。
 後者について言えば、『撮影場所やスケジュールの調整が面倒』『炎上リスクや顔出しをしてまで出演したくない』『出演者が退社すると、動画がお蔵入りとなる場合がある。また、集客したアカウントの拡散力も弱まる』といった声があります。
 企業の場合、人的リソースに依存することによる障壁やデジタル上のリスクが非常に大きいのです。
 一方で、動画コンテンツを使ってSNSマーケティングやPRで効果を出すには、公開本数を増やして認知度や露出を上げることも必要ですから、悩ましいところです。
 このネックを解消し、かつ、動画の目的をより効果的に達成してくれるのが、3Dモデルを使ったアニメーション動画なんです。
 そうしたニーズに応えるために、弊社では3Dアニメーション動画の作成ツールとして「VARK SHORTS Corporate Plan」を提供しています。
『3Dアニメーション動画』と聞くと難しく感じるかもしれませんが、クオリティを担保しつつ、動画制作の手間やコストを圧倒的に減らすことができます。人間の出演者も不要ですから、属人的なリスクもなくなります」

動画の8~9割を自動生成

「VARK SHORTS Corporate Plan」では、3Dアニメーション動画作成のために必要なステップは3つのみだという。
「基本的な制作の流れを追いますと、最初に3Dモデルを選んでいただきます。もし、すでにオリジナルキャラクターをお持ちであれば、そちらを3Dモデルとして使用することも可能です。
 次に、テンプレートがありますのでお好きなものを選んでいただきます。このテンプレートには、背景やBGM、演出などが含まれています。そして、最後に字幕を入れるなど、お好みでチューニングしていただく。
 この簡単な作業だけで、初心者でも高品質な3Dアニメーション動画を仕上げることができます」
 実際に、加藤氏のアドバイスをもとに、「VARK SHORTS Corporate Plan」を使用してNewsPicksの記者が作ってみた3Dアニメーション動画が以下となる。
 作業はPC1台で完結。かかった時間は15分程度であった。
 わずか数ステップで3Dアニメーション動画が作れてしまうことも驚きだが、AIを使えば、テキストから動画を生成することも可能だという。
「イメージや雰囲気をテキストで入力していただくと、AIがテンプレートから動画を生成します。このやり方ですと、ベースの動画は1~2分で完成します。
 といっても、ただ動画が作れればいいわけではありません。私たちが注力しているのは、テンプレートを使うことによる『作業の手軽さ』と『創造性』の両立です。
 ゼロの状態から、『では、動画を作ってください』と言われても、ハードルが高く感じられる方は多いのではないでしょうか。その点、テンプレートや生成AIという下地は、動画の方向性や作業の範囲を、いい意味で絞り込んでくれます。『制約』と言ってもいいかもしれません。
 テンプレートはそのまま使用することもできますし、カスタマイズも可能ですから、結果として、目的にあわせた動画を誰もが簡単に作成できます。
 たとえばTikTokで『猫ミーム』というジャンルのショート動画が流行っています。あれなども、素材の使い方はテンプレ(テンプレート)に沿ったものですが、伝える内容やアウトプットは制作者によってさまざまです。
 では、なぜ『猫ミーム』が流行るかと言えば、キモはやはり『制約』と『カスタマイズ性』のバランスにあると思います。手軽さと創造性が両立することで、コンテンツに多様性と量産性がもたらされるわけです。
『VARK SHORTS Corporate Plan』にも、ビジネス動画において、このような手軽さと創造性を両立させうるテンプレートが多数用意されています」

とにかく本数をアップせよ

 企業の担当者にとっては、動画制作のあとに、その動画を「どう運用するか」という問題もある。
 加藤氏によれば、「せっかく動画を作っても、SNSにおける効果的な運用がわかっていないため、もったいないことになっている」企業のケースが多く見られるという。
「SNSマーケティングにおいては、高い頻度で本数をアップすることがなによりも重要です。
 コンテンツ制作に時間をかけ、渾身の動画をタイムラインに投下する企業が多いですが、だいたいの場合、それは逆効果です。企業の規模にもよりますが、最初から時間をかけてクオリティを磨いたところで、登録者が少ない状態では影響力も少なく、費用対効果が悪いからです。
 SNSには非常に多くの情報が流れています。その中で、企業が限られた本数しか動画を出さないのであれば、端的にいって情報は埋もれてしまいます。
 私が企業の担当者にアドバイスする場合は、『クオリティは気にせず、50日連続で毎日動画を上げ続けてください』とアドバイスしています。どんな企業でも、毎日投稿を続け、50本動画をアップすれば登録者数やコメントの数は劇的に変わります。
 実際、ゼロベースからこのやり方で50本アップしたことで、YouTubeアカウントの登録者数が1500人ほど増え、1本あたりの動画につくコメントが約50件にまで達するようになった企業もあります。
 そうやって50本の動画をアップし、ある程度数字が伸びてきたところで手の込んだコンテンツを投下する、というのが勝ち筋だと私は思います。
 また、頻繁に動画をアップし、露出することで初めてわかるSNSマーケティングへの理解や知見も多いです。ユーザーの反応やコメントが増えることで、N1の声として自社の商品やブランドへの評価が見えてきますし、場合によっては、テストマーケティングのような使い方もできると思います」

動画が「3D」であることの強み

 最近では、米国「VYOND」のようなビジネスアニメ制作ツールが企業で使われるケースも増えており、SNSでも見かけるケースが出てきた。それらは2Dアニメーションだが、企業が3Dアニメーションを使うメリットはどこにあるのだろうか。
「たしかにホワイトボードアニメーションのような2Dでの動画制作ツールもあります。シンプルさが売りで、コンテンツを作りやすいとも思います。
 ただ、マーケティングにおいては、そのシンプルさと、かつテイストがツールに依存するので、動画のテイストが似通ってしまうという問題があります。
 一方、私たちの『VARK SHORTS Corporate Plan』は、たとえば『VYOND』のようにさまざまなテンプレートやパーツを組み合わせることで簡単に動画が作れる上に、3Dモデルを使うことで、オリジナリティのある動画を生み出すことができます。
 もし、すでに独自のIPをお持ちであれば、より忠実にキャラクター性を再現した3Dアニメーション動画を作ることで、IPの価値を高めることもできます
 3Dモデルの表情や動きなどを、多彩に演出することも可能です。実際の人間の表情や動きをトレースし、パラメーターを細かく調整することもできます。
 つまり、『VARK SHORTS Corporate Plan』を使えば、2Dのホワイトボードアニメーションのような簡便さで、さらに『エモさ』や『リッチさ』のある3Dアニメーション動画を作成できるのです」

3Dアニメーションが当たり前の時代に

 社外向けのみならず、企業内においても、動画が使われるケースは増えてきている。
 研修コンテンツや、社内外におけるプレゼンなど、宣伝や販促目的以外でも需要が拡大している。特にリモートが定着したアフターコロナでは、よりその傾向が顕著になっているという。
「『VARK SHORTS Corporate Plan』の導入企業のケースを見ていても、特に、人材系の企業とは相性がいいのを感じますね。事業部紹介や業務説明を動画で完結できるので、重宝されています。
 観光や、小売り店のフロア案内など、ビジュアルのほうが訴求力が上がる企業からも好評です。
 また、社内のプレゼン資料でも、何十ページもあるスライドを読むより、動画のほうが内容が入りやすいという声もよくいただきます。
 デスクツアーや社内ツアー用や、社内PR動画で活用できる社員インタビューを模したものなど、いろいろなビジネスシーンに適したテンプレートを用意していますし、さらに充実させていく予定です」
 企業のさまざまなな用途に使える3Dアニメーション動画だが、デジタルが浸透しきった時代だからこそ、さらなるブレイクスルーが期待できるという。
「大事なのは、かつてのように動画コンテンツを特別なものと捉えないほうがいい、ということです。
 人間が出演し、照明を当て、高価な機材で撮影をする。企業ではどうしてもそういう考え方になりがちですが、ビジネス用途を考えれば、まったく別の動画活用の可能性があることを認識してほしいですね。
 これから企業の中核となっていくデジタルネイティブはもちろん、今のZ世代のように小さい頃から動画コンテンツや3Dゲームなどに触れてきた世代にとって、3Dモデルや3Dアニメーションは馴染み深いものです。ここからのシフトは非常に早いと思います」