〈次代へのイノベーション~部品メーカー技術担当役員に聞く~〉カルソニックカンセイ 村上秀人 副社長執行役員
2015/05/12, 日刊自動車新聞
■幅広い製品群 熱マネジメントで強み
カルソニックカンセイは2000年に旧カルソニックと旧カンセイが合併して発足した日産系最大の部品メーカーだ。それだけに、熱交換器、エアコン、排気系部品、電子部品と製品群は幅広い。この強みを高次元の環境・安全が求められる次世代の車にどう生かすのか。
◆17年度から5年間10以上の新製品
―これからの自動車技術をどう予想する
「パワートレーンで言えば、電動化、内燃機関の進化という二つの流れがあると見ている。電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)が増えていく一方で、内燃機関は20年になっても市場の大半を占め、その効率を高める技術へのニーズも高まる。これらの流れの中で商機を見いだしていく」
―技術部門の戦略は
「当社は熱交換器、エアコン、コンプレッサー、排気システム、電子部品、コックピットモジュールの六つの製品群を保有している、これを四つの領域に大別し、将来に向けたロードマップを描いた。フロントエンド、キャビン、熱マネジメント、電力マネジメントの四つの革新を進める。17年度からの5年間には、10以上の新規アイテムを出す」
―それぞれの開発テーマは
「フロントエンドはパッケージングの変化への対応が必要だ。空力特性を向上させるためボンネットを低くすると、エンジンルームに入る風が減り、熱交換効率は悪化する。ラジエーターへの風の当て方やフィンの形状などを変え、効率を上げる必要がある。熱マネジメントの領域では、排出ガスの熱を回収する排熱回収器や、燃費を向上させるEGR(排出ガス再循環)クーラー、エンジンオイルを温めるオイルウォーマーの役割が増すだろう。排気システムと熱交換器・空調機器を持つサプライヤーはめずらしく、その強みを生かしていく」
―コックピットはどのように変わるのか
「自動運転の時代にどう対応するのかが課題の一つだ。タッチパネルや音声を使い、ドライバーの意図をどう車に伝えるのか、あるいはドライバーに車からの情報をどう伝えるのかを考える。メーターも液晶が組み込まれた形に変わっていくだろう。コストが下がって液晶を大型化できれば、カーナビの地図表示が可能になる。そうなれば運転中に前方から視線を逸らすことが減り、安全性が高まる。ヘッドアップディスプレー(HUD)も安全に寄与する装置であり、当社としても先行開発を完了している」
◆HUD技術は重要、拡張現実に対応
―HUDはどう進化する
「人が飛び出してきたらそこに警告表示を出すなど、実際に見える道路に重ね合わせて表示するAR(拡張現実)HUDになるのではないか。自動運転の開発が進んでも、ドライバーが最終責任を持つ時代はしばらく続くので、HUDの技術は重要だ」
―EVやPHVではどのような技術に取り組むのか
「EVではバッテリーの冷却に我々の技術を応用できる。また、EV・PHVはエンジンがない、または小さいため冷暖房の能力が落ちるので、効率の良い空調システムを開発する。ヒートポンプに電気ヒーターを組み合わせたタイプが有力で実用化もされているが、まだ玉石混合という状態だ。システムとして洗練されていけば効率が上がり、コスト面でも受け入れ可能なものになるだろう」
(小室 祥子)
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