(ブルームバーグ): あおぞら銀行は1日、今期(2024年3月期)の連結業績見通しを下方修正した。純損益は240億円の黒字から一転して280億円の赤字に陥る。米国オフィス向けの不動産融資で損失に備える追加の引当金を計上するほか、米金利の上昇を受けた外国債券の含み損を処理する。

同行は4月1日付で大見秀人副社長が社長に昇格し、谷川啓社長が退任する人事も併せて公表した。谷川社長は同日の記者会見で「当初予想を大きく下回ったことについておわび申し上げる。新たなマネジメント体制で着実な成果を目指す」と話した。

第3四半期と期末の配当予想は無配。最終赤字は09年3月期以来、15年ぶりとなる。あおぞら銀の株価は前日比21%安の2557円とストップ安(値幅制限いっぱいの下落)で終了し、08年10月以来の下落率となった。谷川社長は下期が無配となったことに関連し、自身の取締役報酬の一部を返上すると表明した。

米商業用不動産の市況悪化を巡っては、地銀持ち株会社のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が1月31日、引き当て強化を迫られ、23年10-12月(第4四半期)決算で予想外の赤字を発表。一部の現地銀行に深刻な影響を与えており、日本にも飛び火した形だ。

あおぞら銀の開示資料によると、米オフィス向けの不動産融資では市場の流動性が低く厳しい状況にあるとした上で、破綻懸念先について不安定な市場の影響を考慮したストレスをさらに加えた引き当てを実施すると説明。谷川社長は11月、北米の不動産向け貸し出しについて追加の引当額は大きく膨らまないと話していたが、第3四半期に324億円の引当金を追加計上する結果となった。

谷川社長は11月の発言について「結果的にその通りにならず反省している。当時は十分な引き当てができていると考えていた」と話した。

同行の12月末時点での米オフィス案件の融資残高は18億9300万ドル(約2780億円)で、貸し出し全体に占める割合は6.6%。損失に備える融資の引当率は9月末の9.1%から18.8%まで大幅に引き上げた。

あおぞら銀は1957年、長期信用銀行法に基づき「日本不動産銀行」として設立された。国内の不動産を中心に担保を取った資金を貸し出すビジネスに長らく携わってきた歴史がある。谷川社長によると、米国の不動産関連ビジネスを始めたのは20年以上前からという。

米国不動産への今後の関与の度合いについて、4月からかじ取りを担う大見次期社長は「資本配分を多少見直す」と述べた。今回オフィス向け融資で影響が出たことを巡っては「コロナ前はオフィスに来て働くのが当たり前で、まさか在宅勤務の環境が訪れるとは思わなかった。私たちが間違ったのはこの点かもしれない」との見方を示した。

市況悪化の波及を注視

松井証券の窪田朋一郎シニア・マーケット・アナリストは、あおぞら銀について「昨年の間に引き当ての処理が進み、最悪期は過ぎたのではないかという見方があった中、ふたを開けてみたら赤字転落でショックが走った」と分析。同行のように「米不動産にここまで注力してきた銀行はなく、メガバンクはリスクコントロールができている。これをきっかけに、銀行株が軒並み売られるということはないだろう」とみる。

海外不動産のリスクは金融庁が注視する分野の一つだ。同庁担当者はブルームバーグの取材に対し、外国向け不動産は大手行全体でも貸し出し全体に占める割合が相対的に低く、経営に与える影響は限定的との見方を示す一方、海外不動産市況の悪化が波及する可能性については引き続き注視すると話した。

1日の取引でTOPIX銀行株指数は、一時1.8%安となったが下げ渋り、終値は0.8%安とTOPIX並みの下げにとどまった。あおぞら銀急落のショックはそれ以外の銀行株には広がらなかった。

あおぞら銀は米国不動産での対応のほか、米金利の上昇で評価損を抱えた外債などの有価証券の売却処理を加速させる。24年3月までに410億円の損失を計上する見込みだ。

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--取材協力:佐野七緒、鈴木英樹、布施太郎、浦中大我.

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