(ブルームバーグ): 銀行持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は31日、株価が記録的な下落となった。2023年に起きた地銀危機の勝ち組と目されていたNYCBは、同年10-12月(第4四半期)決算が予想外の赤字となり、配当を引き下げた。商業不動産が次の波乱要因となる可能性を示す前兆だとして、投資家の懸念が広がっている。

23年に破綻した米地銀シグネチャー・バンクから一部を取得したNYCBは、貸し出しリスクに対応するためにキャッシュを積み上げた。問題債権には2件のコープ式物件とオフィス物件向けが含まれる。またシグネチャーの部分買収による規模拡大に伴い、当局の規制が強化されたことも影響した。NYCBの貸倒引当金は5億5200万ドル(約810億円)に急増し、アナリストや株主に衝撃を与えた。

パイパー・サンドラーのアナリスト、マーク・フィッツギボン氏は「行ったことはすべて理にかなっており、長期的には良いことだろう。しかし短期的にみれば、市場はサプライズを好まない」とインタビューで指摘。「ばんそうこうは剝がされた。傷は治る過程にあると思う。ここから問題が悪化するとは考えられない」と述べた。

第4四半期の株主配当は5セントに引き下げられた。アナリスト予想では17セントでの据え置きが見込まれていた。31日のニューヨーク株式市場で、NYCBは一時46%下落。終値は38%安だった。他の地銀株も下落。KBW地方銀行株指数は6%下げ、昨年3月にシリコンバレー銀行(SVB)に取り付け騒動が起きて以来の大幅な下落となった。

NYCBのトーマス・カンジェミ最高経営責任者(CEO)は31日、「今回の減配は全ての株主にとって重要であり、またその影響も認識している。決定は容易ではなかった」との声明を発表した。

第4四半期の純損失は2億5200万ドル。アナリスト予想は2億600万ドルの純利益だった。収入は8億8600万ドル。市場や9億3200万ドル近い収入を見込んでいた。

破綻したシグネチャー・バンク

NYCBはシグネチャー・バンクの預金を買い取ったことで、追加資本を必要とする規制カテゴリーに入った。同社によると、これが減配と予想以上の貸倒引当金積み増しの原因となった。貸倒引当金は5億5200万ドルと、アナリストが見込んでいた4500万ドルの10倍を上回った。

NYCB経営陣が過去に資産の質は良好だと述べていたと、RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ジョン・アーフストロム氏は顧客へのリポートで指摘。「何かが見解のトーンをはっきりと変えた」とし、「これは重大なネガティブサプライズだ」と述べた。

米国債市場ではNYCB決算が発表されると、それまでの利回り低下に拍車がかかった。金利動向に敏感な2年債は、利回りが直後に15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。10年債利回りも一時8bp以上の低下となった。

金利スワップ市場では年内利下げ観測の広がりが見られる。3月利下げの織り込み具合は現在は約3分の2。前日には3分の1だった。2024年全体で150bp近い利下げが現在織り込まれている。

昨年にはシグネチャーを含む地銀3行が相次いで破綻。金利の上昇で保有資産の価値が下がったことが背景にあった。NYCBは傘下のフラッグスター・バンクを通じ、シグネチャーの資産380億ドル(現金250億ドルとローン約130億ドルを含む)を連邦預金保険公社(FDIC)から買い取ることで合意した。

原題:NY Community Bancorp Plunges on Surprise Loss, Dividend Cut(抜粋)

 

(株価の終値や新たなアナリストコメントを追加し、更新します)

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