(ブルームバーグ): 楽天グループが計画する海外市場でのドル建て社債について、発行予定額を10億ドルから17億5000万ドル(約2580億円)に増額して投資家の需要調査を続けていることが分かった。同社はこれを元手に2024年に満期を迎えるドル建てシニア債を全額借り換える。

需要調査を実施しているのは償還期間3年のドル建て債。発行価格と額面価格との差を踏まえた利回りは12.25%程度で、前日の12.5%程度から25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。円換算の調達金額は当初予定した規模から約1000億円増える可能性がある。事情に詳しい関係者によると、発行条件は米国東部時間の30日午前にも決まる予定だ。

楽天Gは今回債による調達資金で24年に満期を迎えるドル建てシニア債を買い付ける計画。買い付け額は当初最大10億ドルとしていたが、30日の発表資料によると残存する17億5000万ドルを全て対象にする。全額を借り換えることで、償還時期を3年先延ばしにする形だ。

S&Pグローバル・レーティングによる格付けが「BB」と投資適格に満たない楽天Gの社債はいわゆる「ジャンク債」に分類される。海外ではハイリスク・ハイリターンのジャンク債は投資家の強い需要がある。

土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は、米国で金利低下に伴い利回りの乗る社債が少なくなっている中、楽天Gが提示する利回り12.25%程度は投資家にとって「割安」だと指摘。同社としては高い金利を払ってでも可能なうちに資金を調達しておきたいのではないかと読む。2月14日に決算発表を予定していることから、その前に資金調達について市場に安心感を与えたい可能性もあるとの見方を示した。

今後も多額の社債償還を控えて利払い負担への懸念は根強く、楽天Gの信用リスクを表すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は拡大傾向にある。トレーダーによると、30日午前11時時点のミッド・スプレッド(ビッドとオファーの中間値)は27年12月償還予定のもので487bpと、29日午後4時半時点の460bpから拡大した。

東京株式市場で楽天G株は起債と既発債の買い戻し計画の発表後、一時8カ月ぶり高値に上昇したものの、既に発表前の水準まで押し戻されている。いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は、ドル建て債を増額しても株価への影響はあまりないと言う。一段の株高に向かう上で「大事なのは次の展開で、モバイル事業で健全なビジネスができるようになるかが焦点」だと指摘した。

モバイル事業に自信

三木谷浩史社長は25日、都内のホテルで一部記者団の取材に応じ、赤字が継続するモバイル事業について、加入者が増え解約率が下がっていることから「非常に順調にいっている」と話した。今後は広告展開や新たなサービスを検討、「ギアを入れていく」とした。

三木谷社長は23年末に600万だった楽天モバイルの加入者数は24年には800万を「軽く上回らなくてはいけない」とし、25年の1000万超えについては「目標にしているのはそれより高い」と話した。

--取材協力:Ayai Tomisawa.

(第3段落に楽天Gの発表について追記し、記事を再構成しました)

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