[ハーグ/ガザ/ヨハネスブルク/ワシントン 26日 ロイター] - 国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルに対し、パレスチナ地区ガザでジェノサイド(大量虐殺)を防止するためにあらゆる措置を講じるよう命じた。ただ、ジェノサイドであるかどうかの判断は示さず、戦闘停止についても言明しなかった。

南アフリカは昨年末、イスラエルがジェノサイド防止に関する条約に違反していると提訴し、イスラエルに戦闘停止の緊急措置を命じるようICJに求めていた。

ICJは、ジェノサイド防止やガザにおける人道状況改善に向けた措置を講じ、1カ月以内に進捗状況を報告するようイスラエルに命じた。ジェノサイドに関する判断には数年を要する見通し。また、イスラム組織ハマスパレスチナ武装勢力に対しては、戦闘の引き金となった昨年10月7日のイスラエル攻撃で拘束した人質を解放するよう求めた。

命令を上訴することはできないが、ICJには命令を執行するメカニズムはない。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ICJが戦闘停止に踏み込まなかったことについて、イスラエルの「基本的自衛権」を剥奪する「法外な要求を正当に拒否した」と指摘。同時に、イスラエルがジェノサイドを行っているという主張は「虚偽か言語道断」で、「IJCがこうした主張を議論することに前向きであることは不名誉」という認識を示した。

パレスチナ外務省は「いかなる国家も法を超越することはできない」ことを改めて示す判断として歓迎。ハマス高官はロイターに対し、今回の決定は「ガザにおける犯罪の暴露」に寄与すると語った。

南アは、国際法の支配にとり「決定的な勝利」と称賛。ラマポーザ大統領は同国で行われたアパルトヘイト(人種隔離)政策に言及し、「南アフリカ市民として、われわれは消極的な傍観者となるつもりはない」と言明。「民主主義を掲げ、法の支配を尊重する国家として、イスラエルが命令を順守すると期待している」と述べた。

米国務省の報道官は「われわれはジェノサイドの主張に根拠はないと引き続き確信している」とし、ICJの判断は、イスラエルが国際法に従い行動を取る権利があるという米国の見解と一致するという認識を示した。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は声明で、イスラエルとハマス双方がICJの命令を「完全な形で即時順守することを望む」とした。

昨年10月のハマスのイスラエル奇襲では1200人が殺害され、240人以上が人質となった。その後、ガザにおけるイスラエル軍とハマスの戦闘では2万6000人超が死亡している。