(ブルームバーグ): 米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は16日、インフレが再燃しなければ、金融当局は今年利下げすることが可能だとの認識を示した。ただし、その場合でも利下げは秩序立った慎重なペースで進めるべきだと強調した。

ブルッキングズ研究所主催のオンラインイベントで講演したウォラー氏は「インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、連邦公開市場委員会(FOMC)はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」と語った。

「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序立って慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」と述べた。

ウォラー氏の同日の講演は、今年の政策緩和に関する米金融当局の意図を巡るこれまでの当局者発言の中でも、とりわけ具体的な内容だ。ただ、利下げに対するオープンな姿勢を示す一方で、市場が見込む年内6回の利下げについてはけん制とも取れるものだった。

同氏は「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと鈍化しつつあり、以前ほど急いだり迅速に利下げしたりする理由は見当たらない」と、急ペースの利下げにつながった過去の経済ショックを挙げて説明した。

こうした発言を受け、米国債利回りは急上昇。トレーダーは、3月にも利下げが実施される確率と、今年の利下げ幅の見通しをいずれも後退させた。

ウォラー氏は利下げの開始時期と利下げ幅は「今後発表されるデータ次第」だと述べた。

二つの責務のバランス

一連のコメントは、金融当局の二つの責務のバランスを取り、景気抑制的な金利水準にあまりにも長くとどまることを避けると同時に、2%のインフレ目標が確実になるまでは利下げに着手しないというウォラー氏の立場を浮き彫りにした。

同氏はまた、利下げに踏み切るには、月次インフレデータが引き続き低水準であることに加え、消費と雇用の減速が必要だと指摘した。

ウォラー氏は金融当局者が2%のインフレ目標を達成する「射程内」にいるとの確信を強めているとしながらも、「インフレ率が当局目標に向かって持続的に下降しているという見方を確認するか(ことによると)疑問を生じさせる情報が今後数カ月にもっと必要になるだろう」と話した。

さらに、実体経済やインフレのデータで目にしたトレンドの持続が見られれば、「実質金利をゆっくりと調整して引き下げることが可能になる」とし、「急ぐ必要があると考えれば、データに従って急ぐことができる。ただ、重要な点は秩序立って慎重であることができるよう、柔軟性を持つことだ」と語った。

その上で、インフレ率が持続的に2%近辺にとどまると金融当局が比較的確信できれば、「どの程度の速さ、期間、ペース、規模で利下げを進めたいか検討を始める」ことができると説明した。

連邦準備制度のバランスシートについては、ランオフ(償還に伴う保有証券減少)のペース減速を「年内のある時期」に考え始めるのが妥当だろうと述べた。

エコノミストの反応

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のマイケル・ゲーペン氏はリポートでウォラー氏の発言について、早めの利下げ開始が望ましいとの考えを示唆するものであっても、3月利下げへの「断固たる支持」ではないとし、重要なのは緩和ペースに関する部分だとの見解を示した。

ゴールドマン・サックスのエコノミストも、「最初の利下げが当社の3月予想よりもややずれ込んで、引き下げのペースが当初から四半期ベースとなるかもしれないリスクを高めるものだ」と、ウォラー氏の講演を分析した。

ウォラー氏は昨年12月の雇用統計が予想外の強い内容となったことに関し、進行中の緩和トレンドを背景とした「おおむねノイズ」だと指摘。2023年中の統計の幾つかはその後下方修正されており、「12月分が下方修正される可能性は十分ある」と話した。また、来月予定されている消費者物価指数(CPI)の改定を注視するともコメントした。

同氏は現行の金融情勢を景気抑制的であると表現し、「引き締め過ぎを避けるため、政策の設定は一段と慎重に進めなければならない」との認識を示した。「政策の設定は適切だと思われる」とし、「それは景気抑制的であり、需要に下押し圧力を加え続けて、引き続き穏やかなインフレ率の推移を目にすることができるだろう」と述べた。

原題:Fed’s Waller Urges Cutting Rates ‘Carefully’ If Inflation Cools(抜粋)

(エコノミストの反応などを追加して更新します)

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