(ブルームバーグ): ファッションのトレンドが1990年代遅くから2000年代早期に回帰する中、ある小売り株が2023年の明確な勝者となっている。

カジュアル衣料を手掛ける米アバクロンビー・アンド・フィッチ(アバクロ)の株価は年初から28日終値までで300%近く上昇。年間での上昇率としては1996年の上場以来最大だ。これはS&P1500種株価指数の中で最高のパフォーマンスであり、人工知能(AI)ブームで注目を集めた米半導体大手エヌビディアの約240%上昇をも上回る。同業他社との比較でもアバクロ株は大きくアウトパフォーム。S&P小売株セレクトインダストリー指数は、今年約21%の上昇だ。

こうした好調なパフォーマンスは、低調だった2022年とは極めて対照的だ。22年は、不透明な経済環境と消費者の慎重姿勢により株式市場全体が圧迫され、アバクロ株も34%下落していた。しかし23年に入り、アバクロは余剰在庫を解消し、新型コロナ禍を経て仕事や学校、社会生活に復帰するミレニアル世代とZ世代というターゲット層に焦点を絞った。

そうした戦略によりアバクロは職場向けや特別な時のための衣服、アクティブウェアなど取り扱う商品の幅を広げることができたと、アーガス・リサーチのアナリスト、クリスティーナ・ルゲリ氏は指摘する。

ルゲリ氏は19日付のリポートで、「この戦略により、アバクロはメッセージを送る対象を絞り、対応可能な市場をジーンズなどのカジュアル衣料品以外にも広げることができた」と記述。同氏はアバクロ株の目標株価をウォール街で最高となる97ドルに引き上げた上で、高めの価格設定や輸送コスト低下、サプライチェーンの安定化も寄与する形でホリデーシーズンを通じて売上高と利幅の拡大の勢いが続くと予想した。

アバクロではさらに、堅調な四半期決算も23年の株価押し上げにつながっている。直近の決算発表では、8-10月(第3四半期)の売上高が市場予想を上回ったほか、同社は通期の純売上高予想を引き上げた。

原題:Abercrombie’s 300% Surge in 2023 Beats Even Sizzling-Hot Nvidia(抜粋)

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