[鹿児島 22日 ロイター] - 鹿児島県の住民らが九州電力<9508.T>川内原発1・2号(同県薩摩川内市)の運転差し止め仮処分を求めた申請について、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は22日、住民側の請求を却下する判断を示した。この結果、原子力規制委員会から再稼働を前提とした検査を受けている同1号が今夏にも再稼働することがほぼ確実になった。

<地震、火山、避難の住民側主張退け>

住民側弁護団によると、同地裁は、住民側が主張した地震動想定の不合理性、火山噴火のリスク、避難計画の不備の3争点について、いずれも訴えを退けた。

住民側代理人の河合弘之弁護士は決定を受けた後、記者団に対し「先日の高浜原発での(福井)地裁の決定とは全く反対の内容で非常に遺憾。ひるむことなく闘い続ける」と述べた。

今後は福岡高裁宮崎支部に不服申し立て(即時抗告)を行うとともに、川内原発に関しては宮崎県や熊本県など近隣の裁判所でも同様の法廷闘争を仕掛けるとしている。

今回の決定に対して九州電力の広報担当者は「川内原発の安全性は確保されているとの当社の主張が裁判所に認められ、妥当な決定をいただいた」とコメントした。

規制委が合格判定を出した原発のうち、関西電力<9503.T>高浜3・4号については、今月14日、福井地裁(樋口英明裁判長)が住民らが求めた運転差し止めの仮処分を認める決定を出しており、原発再稼働に対する両地裁の判断が割れた形になった。

<約2年ぶりに原発ゼロ解消へ>

川内1・2号は、原子力規制委員会から昨年9月、新規性基準に適合しているとして「原子炉設置変更許可」を受けている。

また、昨年11月までに鹿児島県や薩摩川内市の各議会や知事、市長らが再稼働に同意済みで、今回の地裁判断によって再稼働に向けた最後のハードルを乗り越えたことになる。

同2機のうち川内1号は現在、再稼働を前提とした規制委の「使用前検査」を受けている。九電は7月の再稼働を目指しており、順調にいけば今夏にも実現する見通しだ。

その場合、関電大飯4号が2013年9月に停止して以来続いていた日本国内での原発稼働ゼロが約2年ぶりに解消する。

<再稼働は今後もスローペースか>

とはいえ、原発が今後も次々と再稼働するような状況ではなさそうだ。2030年に電源構成に関する政府の有識者会議に参加する東京理科大学大学院の橘川武郎教授は、ロイターの取材に対し「再稼働は相当スローペースになるだろう。来年2016年末で7基が稼働しているかどうかだ」と述べた。

具体的には、年内に川内1・2号、来年に四国電力<9507.T>の伊方3号、九電の玄海3・4号に加え、関電の不服申し立てが認められて仮処分決定が覆った場合の高浜3・4号を同教授は指摘した。

いずれも原子力規制委の審査が先行している加圧水型で、東京電力<9501.T>などが採用する沸騰水型の再稼働は「(16年よりも)もっと先になるだろう」(橘川教授)としている。

*内容を追加して再送しました。

(浜田健太郎)