(ブルームバーグ): 家庭用ゲーム機市場でソニーグループや任天堂の風下に立つマイクロソフトが国内でのソフト発売元であるゲーム会社(パブリッシャー)との関係強化を急いでいる。パブリッシャーとの薄弱だった関係が存在感を示せない要因の一つだとみて、ソニーG出身の女性エースがその一端を担う。

Xboxは2001年の発売以来、日本市場をあまり重視してこなかった結果、ライバルに大きく水をあけられた。ゲーム事業責任者のフィル・スペンサー氏は、こうした方針に問題があると認めたうえで、関係強化に向けた取り組みに乗り出した。

同社に7月、ソニーGのゲーム子会社で職務経験のある加藤芽奈氏が加わった。ゲーム業界をよく知る同氏は今後、日本パートナーシップ担当ディレクターとしてパブリッシャーとの関係を強化する役割を牽引していく。

加藤氏はブルームバーグとのインタビューで、パブリッシャーと日々会話することで、日本の声を迅速に米国本社に伝えることができるようになると話す。取り組むべき課題は、国内のキャンペーンやマーケティングなどさまざまだ。

Xboxの立ち位置について加藤氏は、チャレンジングだと認める半面、日本のパブリッシャーがさらにビジネスを拡大するのであれば、われわれともパートナーシップを組まないと難しいと話す。ソニーGの「プレイステーション(PS)」への依存だけでは彼らの成長にも限界があるからだ。

加藤氏は関係強化を図ると同時に、Xboxの日本の外での存在感を生かし、日本発のゲームの海外展開も狙う。国内には創造性や革新性の高いパブリッシャーが多く、これらを取り込まないことには「グローバルでの成功はない」と考える。

UBS証券の福山健司アナリストはXboxの国内展開について、「ブランディングの歴史が圧倒的に足りない」とした上で、加藤氏の起用についてはローカルマネジメントをしっかりやり直すという意味で理にかなっていると指摘する。

女性活躍への思い

加藤氏は1999年、当時のソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)に入社。社内グローバル組織の立ち上げや他社との提携など「ゲーム制作以外は全部やってきた」。米国や英国で暮らした経験もあり「日本の素晴らしさや文化をいかにグローバルに通じるものにしていくのかがキャリアを通した一つのテーマ」だという。

 ゲーム業界は長い間、人材という意味では男社会で経営トップも男性が独占してきた。コーエーテクモホールディングスの襟川恵子会長は女性経営者として有名だが、続く人材が少ない。加藤氏は「足りないのはロールモデル」だとして、より多くの女性が昇進することで女性活躍の好循環に期待する。

マイクロソフトの日本での立場は想像以上にもろい。ファミ通によると、Xbox Series X/Sの国内推定販売台数は53万台超で、スイッチの約3143万台、プレイステーション5の約480万台と比べて大きく見劣りする。

加藤氏は、日本市場における現在のポジションは劣勢だが、「だからこそ変えられるものがまだあると思っている 」と話す。コミュニケーション力やネットワーク作りなど自身の強みを生かしてXboxの存在感向上に挑む。

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(見出しと第一段落の表現を訂正します)

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