「悪い物価上昇」進行の実態…実質賃金低下と物価上昇でエンゲル係数上昇
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個人的に興味深かったのは、シニア層の多い無職世帯では上昇が限定的ということです。
背景には、コロナの重症化リスクが高いシニアがコロナ後極端に抑制していた移動や接触を伴う支出が回復してきたことで、表面上のエンゲル係数が上がりにくくなっていることがあるようです。永濱さんの論考は、データとグラフを使って極めて明快に「悪い物価上昇」や「エンゲル係数上昇」の実態を解説しておられ、今回のインフレの問題点に関する理解が進みました。ありがたいです。
また、植田総裁の言われる「第一の力」のインフレだけでは世帯間の所得格差を悪化させるという重要な点を指摘しておられることも有益です。
だからこそ(ここから先は個人的意見ですが)、一刻でも早く、岸田減税が撤回され、低所得世帯に対する給付に切り替えた物価対策が実現されることを希望しています。追記:記事は無視しているが、食料エネルギーをを除いた物価でも4%上昇している事がグラフで示されており、それ以外の輸入コスト、エネルギーの流通コストへの転嫁があるとしても、この半分位は輸入物価では説明できない。コストプッシュだからマクロ政策をやれというのは、失業率も低下している現実が見えていない。
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食料とエネルギーの輸入依存度が高い日本のような国では、それらの輸入価格が上がれば当然の結果、「節約志向」も輸入物価上昇による負の所得効果であって、それに伴って起こる。
インフレの要因はそれ以外にも様々あるが、「国内需要の拡大によって物価が上昇し、これが企業収益の増加を通じて賃金の上昇をもたらし、さらに国内需要が拡大するという好循環を生み出す」ような「良いインフレ」など大抵は起こらない。物価上昇以上に賃金が上昇するかはインフレとは関係ないからである。「本当の意味でのデフレ脱却」なども意味がない。
「年収が最も高い1500万円以上に属する世帯の割合は2000年から2022年かけて低下している。こうした所得構造の変化は、我が国経済がマクロ安定化政策を誤ったことにより、企業や家計がお金をため込む一方で政府が財政規律を意識して支出が抑制傾向となり、結果として過剰貯蓄を通じて日本国民の購買力が損なわれていることを表している」は、根拠のあるようなものではなく、高齢化が進めば1500万以上も稼ぐお年寄りは少ないため、割合として1500万円以下が増えただけではなかろうか。
「植田新体制になって日銀はフォワードガイダンスに賃金を盛り込んでいるからである。そして具体的に日銀は2%の物価目標を念頭に置いた場合、名目賃金上昇率+3%、つまり実質賃金が+1%上昇する姿が理想的であると説明」
植田総裁は、こういう黒田時代の金融緩和の支持派に気を遣ってこんなふうに言い方を工夫しているが、物価高に長期金利の上昇を容認しており、本気で賃金をファーワードガイダンスの指標にはしていないだろう。