Mark John

[22日 ロイター] - エコノミストが地球温暖化による世界経済への影響を予測する際に、損失を把握するのに適していない分析モデルが使われているとの批判が出ている。

問題となっているのは「統合評価モデル(IAM)」。これは外部からの衝撃を受けて需要、供給、価格が経済全体でどのように相互作用し、新たな均衡を見出すかを分析した「一般均衡理論」に基づいている。

報告書をまとめたブリュッセルを拠点とするNGO、ファイナンス・ウォッチのティエリー・フィリポナ氏は、「気候変動は他のショックとは根本的に異なる」と指摘、「基本的な前提に欠陥があるのなら大半はほとんど意味をなさなくなる」と述べた。

もう1つの問題はIAMで国内総生産(GDP)の損失を計算する際に、気温の変化を2乗する「2次関数」が用いられてきたことが挙げられる。影響が過小評価されがちで、急激な変化の分析には指数関数などの他の方法がより適しているとされる。

またIAMは具体的な設計や含める変数によって結果が大きく異なるため、解釈が難しいという問題もある。

ノーベル経済学賞を受賞したウイリアム・ノードハウス氏の2023年のモデルによると、産業革命前から気温上昇が3度に達した場合の損失は世界生産の3.1%となる。

これに対し中央銀行で構成される気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)が使用した最新モデルでは、気温が2.9度上昇する「現在の政策」の下で50年までに災害による生産の損失が8%になるとしている。