DJ-「良いデフレ」と「悪いデフレ」―中央銀行に区別は可能か
2015/04/14, ダウ・ジョーンズ
世界の中央銀行は、デフレの脅威を過大評価し、今そこにある危機とは程遠い状況へ対処するために新たな緩和策を相次いで実施しているのだろうか。
先進国のインフレ率はほぼ3年にわたって低下しているが、原油価格が急落したことで、2014年末にかけ低下基調に拍車が掛かった。欧州では消費者物価が前年比で低下し始めており、他の国々の物価も前年の水準へ徐々に迫っている。
14年の終盤は、世界経済の大部分がデフレスパイラルに陥りつつあるように見えた。デフレスパイラルとは、物価下落を受けて家計や企業が支出を先送りすることで、ただでさえ鈍い経済成長が減速し、物価がさらに下落するという最悪のシナリオだ。
こうした結末が案じられるようになったのは、日銀の大規模緩和に続き、欧州中央銀行(ECB)が1月に量的緩和として知られる新たな資産買い入れ計画を発表し、他の中銀も相次いで利下げに踏み切ったことが主な原因だ。だが、2015年に入ってしばらくすると、中銀はそれほど警戒する必要はないのではないか、との疑念が一部でくすぶり出した。国際決済銀行(BIS)が3月に発表した最新の調査報告書は、財・サービス価格の下落が続いた場合でも心配することはほとんどないという内容で、大恐慌に加え、1990年代後半以降の日本で見られた長期の緩やかな物価下落について新たな解釈を示した。
だが、デフレ的な現象はどれも深刻な脅威だとみなす代わりに、どれも害はないと一蹴するというかなり大きなリスクを冒すよりも、物価を押し下げている要因や、それが脅威となる水準にどう影響しているかを精査することの方が理にかなっているかもしれない。
最近の例としては、RBCグローバル・アセット・マネジメントのエリック・ラシェルズ氏がまとめたリポートがある。同氏はこの中で、物価に作用しているさまざまな要因を特定し、それらの持続性や危険性を正確に評価しようとしている。
同氏は、最近の世界的な物価動向は見かけほど脅威ではないと結論づけている。その主因が、むしろ経済成長には好都合かもしれない原油などの一時的要因にあるためだという。より長期的で悪影響が大きいと考えられる人口高齢化などの動向は、物価への影響がずっと小さいとしている。
もっとも、ECBに対して公平を期すため、ラシェルズ氏は「悪い」デフレ圧力の最大の要因がユーロ圏にあると結論づけている。この結論に異論を挟む向きは少ないだろう。対照的に、米連邦準備制度理事会(FRB)と英中銀イングランド銀行が直面しているデフレ圧力は、長期化する公算が小さく、ユーロ圏よりも総じて弱いとラシェルズ氏は分析している。これは、インフレ率が低下する中、FRBと英中銀が政策対応の必要性を感じていない理由を説明する上で役立つ。つまり、中銀関係者はデフレ圧力への対応でより繊細になっており、この6カ月間はうまくかじ取りできた、と言えるのかもしれない。
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