[10日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズは10日、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げた。米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由に挙げた。

長期発行体格付けおよびシニア無担保格付けは最高位の「Aaa(トリプルAに相当)」で維持した。米国の高い信用力と経済力が裏付けとなっている。

ムーディーズは声明で「議会内で政治的二極化が継続」していることで、債務支払い能力の低下を遅らせるための財政計画が議会でまとまらないリスクが高まっていると指摘。

ムーディーズのシニアバイスプレジデント、ウィリアム・フォスター氏はロイターに、2024年大統領選を前に政治的二極化が予算に関する意思決定を難しくすると指摘。この結果、米国の格付け見通しを再び「安定的」に戻す時期が後ずれする可能性があるとした。

「財政基盤の弱体化に対するいかなる有意義な政策対応も、恐らく25年までに講じられることはないだろう」とした。

同氏によると、ムーディーズは通常、ネガティブの見通しに関して1年半─2年の期間内に「安定的」に戻すか、格下げをするかを判断するが、この手続きが長引く可能性がある。

主要な格付け3社で米国債に最高位の格付けを維持しているのはムーディーズのみで、フィッチは8月にトリプルAから「AAプラス」に引き下げた。S&Pは11年以降、AAプラスの格付けを付与している。

アディエモ米財務次官は声明で「ムーディーズは米国のAAA格付けを維持しているが、われわれは格付け見通しのネガティブへの引き下げに同意しない」とし、「米経済は引き続き好調で、米財務省証券は世界有数の安全かつ流動性の高い資産だ」と述べた。

ホワイトハウスジャンピエール報道官は、格付け見通し引き下げについて「議会共和党の過激主義と機能不全」を反映しているという認識を示した。

議会の上下両院は政府機関の閉鎖を回避するために、現行のつなぎ予算が今月17日に期限を迎えるまでにさらなる予算措置で合意する必要がある。

LPLファイナンシャルの首席グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「時間は刻々と過ぎており、政府閉鎖を招き得る混乱が再びわれわれを待ち受けているとの認識がじきに市場に広がるだろう」と予想した。