Tatiana Bautzer Lananh Nguyen

[ニューヨーク 27日 ロイター] - 今年は企業の合併・買収(M&A)が低調だったが、米大手投資銀行はこの傾向が底を打ったとの見方を示している。一部で買収の動きが始まっており、第3・四半期に不振だった投資銀行収入は回復するとの期待が芽生えつつある。

ディールロジックによると、第3・四半期の投資銀行収入は世界全体で前年同期に比べ16%落ち込んだ。しかし石油大手の米エクソン・モービルと同シェブロンがそれぞれ500億ドルを超える買収を発表して以来、投資銀行から明るい声が聞こえるようになった。

新規株式公開(IPO)にも復活の兆しが見えており、M&Aと併せて来年の投資銀行収入を支えそうだ。

ラザードのピーター・オルザグ最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「少しまだら模様の回復になりそうだ。全ての協議が発表までこぎ着けるわけではなく、発表された全ての案件が完了に至るわけではないだろう」と語った。

ただオルザグ氏は「6カ月から9カ月前に比べると状況は明らかに少し違っている」とし、M&A市場は「底を打ちつつある」との見方を示した。「顧客との話し合いは、過去数カ月と比べて建設的な内容になっている」という。

モルガン・スタンレーのテッド・ピック新CEOも26日、CNBCで「月を追うごとに計画段階の案件が増えている」と語り、次のサイクルでは、幅広い業種にわたって中規模から大規模のM&Aが「最も興味深い部分」になるとの見方を示した。

ディールロジックによると、今年1─9月の世界の投資銀行収入は500億ドルと、前年同期を20%下回った。

<見通しは慎重>

経済環境が不透明なため、来年の見通しは慎重だ。リスク要因として、米金利、インフレ、ウクライナと中東での紛争などが挙げられる。

ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・マヨ氏は、大手行の投資銀行収入が来年5─10%増えると予想した。ただ、絶好調だった2021年に比べると、活動は低調な状態が続きそうだという。

シティグループのジェーン・フレーザーCEOは今月、アナリスト向けの電話会議で「活動が持続的に回復する時期を見通すのはまだ難しい」と述べた。「主要顧客向けのレバレッジファイナンスが増え始めている」ほか、企業が社債発行を活発化させつつある一方で、IPOの見通しは不透明感を増しているという。

バークレイズの調査では、「アクティビスト」投資家による企業に対する働きかけの約半分に、M&Aの要求が盛り込まれている。これもM&Aの回復を告げる兆しの1つだ。

ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOは最近の決算発表で、同業他社に比べてM&Aに関して強気の見通しを示した。ソロモン氏は「良好な環境が続くなら、資本市場と戦略的活動(買収)の両方で回復が続くと予想している」と述べた。