2023/11/7
新時代の労働力。なぜ日本企業はフリーランスを恐れるのか?
株式会社ソレクティブ | NewsPicks Brand Design
近年、企業の新たな労働力として、フリーランスに注目が集まっている。
一昨年の国内のフリーランス人口は約1670万人※と、わずか1年で57%急増した。
国内のフリーランス人口の増加に伴い、フリーランス活用に積極的な企業も増えつつあるが、米国と比較するとその水準は未だ低い。
少子高齢化で働き手が減少する中、企業のフリーランス活用は喫緊の課題といえる。
そんな中、「フリーランスの価値を証明する」をミッションに掲げ、企業とハイスキルフリーランスをつなぐ完全審査制フリーランスプラットフォーム「Sollective(ソレクティブ)」を展開するのが株式会社ソレクティブだ。
なぜ企業はフリーランスを活用するべきなのか。そして、フリーランスを活用することで企業にもたらされるメリットとは。
ソレクティブ共同創業者兼CEOの岩井エリカ氏に聞いた。
※ランサーズ『フリーランス実態調査 2021』参照
企業のフリーランス活用を阻む、正社員信仰
── 日本のフリーランス人口は増えつつありますが、フリーランスを活用する企業はまだ多くありません。
岩井 本当にもったいないことだと思います。
企業のプロジェクトに必要な知見やノウハウを適切なタイミングで調達でき、単発や期間ごとに契約できるリスクの低さなど、フリーランス活用には様々なメリットがあります。
そうした良さがまだ十分に広まっていないと感じますね。
── なぜ日本企業ではフリーランス活用が進まないのでしょうか。
最大の理由は、企業組織を構成するメンバーは正社員がスタンダードで、それ以外は異質という、ある種の正社員信仰が文化として根付いているからではないでしょうか。
企業はフリーランスを特別視する傾向があり、弊社にも「フリーランスのマネジメントはどうすればいいのか」というお問い合わせを多くいただきます。
実際には、フリーランスといっても人と仕事を進めていく中でのやりとりは正社員と区別する必要はないのですよね。
また、日本におけるフリーランスの社会的地位の低さもフリーランス活用が進まない理由の一つだと考えています。
アメリカでは「フリーランス=プロフェッショナル」の認識が社会に浸透しており、インディペンデントなフリーランスは尊敬されます。
一方、日本は協調性が重視される社会のためか、フリーランスは「組織に馴染めなかった人」というイメージが強いと思います。
「フリーター」(定職に就かずアルバイトで生計を立てる人)と混同されることもあります。私自身、フリーランスになったときには周りから「会社員を辞めて大丈夫?」とずいぶん心配されました。
ただフリーランスと一口に言っても、そのスキルと経験は千差万別であり、企業にとっては見極めが難しいことも活用が進まない理由とも言えます。
── 不特定多数の人が登録できるクラウドソーシングサービスのようなところから適切な人材を選ぶのはリスクが高そうです。
たしかに一時期、フリーランスは誰でもなれて稼げる夢の仕事!と謳われたこともあり、正直人材の質は玉石混淆です。
しかし今は、正社員で長年活躍していたスキルも経験もある方たちが、フリーランスの世界に続々と参入してきています。
企業はこうした時代の流れや、新しい人材を積極的に活用していかなければ、これから大変なことになるのではないかと思います。
日本企業は大きなビジネスチャンスを逃している
──「大変なことになる」とはどういうことでしょうか?
ご存じの通り、日本はこれから少子高齢化に向け、働き手が減少していきます。人材採用は今以上に難しくなり、採用活動もますます長期化するでしょう。
メンバーシップ型雇用からジョブ型への移行によってプロフェッショナル人材を採用する企業は増えると思いますが、その採用もさらに難しくなると思います。
日本企業は正社員という「同じ釜の飯を食う」仲間だけで組織をつくる習慣が根づいています。そのため、人材ポートフォリオの多様性が非常に低い。このことはビジネスにとって大きなリスクです。
例えば新規事業を立ち上げる際に足りないリソースがあっても社内のメンバーだけで何とかしようとしたり、正社員を採用して賄おうとします。
これではスピード感を持った事業の立ち上げは難しいのではないでしょうか。素早い組織づくりができなければ、企業の機会損失はどんどん膨らんでいきます。
正社員採用の場合、募集から採用まで3カ月〜6カ月のリードタイムがあります。さらに内定から入社までも1カ月〜3カ月のリードタイムがある。
やっと入社しても、その人が会社の仕事に慣れてバリューをアウトプットできるまでにまた1カ月〜3カ月かかるでしょう。長ければ12カ月、つまり1年間も機会損失をしていることになるのです。
1年あれば何ができるか、想像してみてください。
例えばTwitter(X)やInstagram、Slackは、いずれも1年以内に開発されて初期バージョンがリリースされているんです。1年のあいだにどれだけ機会損失をしているか、これでわかるのではないでしょうか。
日本企業は好むと好まざるとにかかわらず、フリーランス活用を真剣に考えなければならない時期に来ていると私は考えています。
業界課題としての「期待値ギャップ」
── 一方海外におけるフリーランス活用は、どの程度進んでいるのでしょうか。
日本のフリーランス人口は全労働者の1割ほどと言われていますが、特にアメリカでは労働者の3割以上をフリーランスが占めています。
実際Googleでは5割以上の人材がフリーランスですし、2020年にはAppleがブランド部門でのフリーランス活用をますます増やしているということも報道されました。
またIT業界だけではなく、ポルシェやネスレなど、メーカーでも活用は進んでいます。
日本の組織とは異なり、正社員雇用だけがスタンダードではないんです。むしろ、社内にはない知見を有する存在が、より強いチームを作ると広く認識されています。
日本でも先進的な企業はフリーランス活用を始めていますが、まだまだ数としては少ないですし、業界としての根深い課題もあります。
── どのような課題でしょうか。
例えば、企業側とフリーランス側との「期待値ギャップ」です。
日本ではクライアント企業がフリーランスを採用する際に、仲介会社を挟むのが一般的です。
この仲介会社は、フリーランスとクライアント企業をマッチングさせ、その契約が続く限り中間マージンを取ることでビジネスが成り立っています。
問題は、中間マージンの不透明さです。
企業は時給単価1万円の人材を採用したつもりが、マージンを抜かれているので7,000円の人材が来るというケースもザラです。その結果、どうなるか。
企業側は「高い時給を払っているのにそれに見合う仕事をしてもらっていない」、フリーランス側は「これだけしかもらっていないのになぜ期待値ばかり高いのか」と感じてしまう。
この期待値ギャップは、企業とフリーランスの双方を不幸にします。
また、仲介会社ではなく、逆に人材紹介会社を利用すると、企業にとっては初期投資が高額になるデメリットもあります。
採用した人材が期待した成果を挙げても挙げられなくても、企業は採用の時点で多額の紹介手数料を一度に支払う必要があるからです。
これらの理由によって、高いビジネスリスクが生じ、日本企業のフリーランス活用を及び腰にさせています。
マージンや採用時に発生する多額の費用なしで実力や相性を試せる「Sollective(ソレクティブ)」
── そんな中、ソレクティブはハイスキルフリーランスに特化した完全審査制プラットフォーム「Sollective(ソレクティブ)」を開発し、2020年10月からサービス提供を始めています。どんな特徴があるのでしょうか。
Sollectiveは、登録するハイスキルフリーランスや副業人材と企業とをつなぐプラットフォームです。
2023年10月にリリースした「MATCH NOW PAY LATER™︎(マッチナウ・ペイレイター)」によって、企業がより安心してフリーランスを採用できる仕組みを開発しました。
通常の人材紹介は、リスクが非常に高く、マッチング時に多額の紹介手数料が一気に発生します。しかし「MATCH NOW PAY LATER™︎」では、マッチング時に紹介手数料が一気に発生するのではなく、人材の質を確かめた上で、満額お支払いいただく形になっているのがポイントです。
具体的には候補者が確定し、マッチングが成立した際(成約時)に初期費用が発生します。ちなみに、業界の平均からすればかなり低額です。
稼働開始4週間経過した際に、双方のフィット感を確認し、ご納得いただけたら残額をお支払いいただく仕組みです。
フリーランス採用版のBNPL(後払い決済)と考えていただければ、分かりやすいかもしれません。
── 企業にとってリスク低く、ハイスキルな人材を見つけられるんですね。
はい。企業側は業務委託内容と当該フリーランスの専門性を十分に確認した上で、残額を払うか否かを判断することができます。
この点において、企業側は採用とコスト双方のリスクを最小限にとどめることができるのです。
また、企業とフリーランスは直接契約*をしますから、私たちがフリーランスの報酬から手数料をいただくことはありません。そのため期待値ギャップの問題も解消できます。
正社員雇用時は別ですが、業務委託契約の更新時にも手数料はいただきません。
※直接契約が難しい企業には、別途オプショナルなフリーランスマネジメントサービスも提供。
ハイスキルフリーランスを集められる理由
── なぜSollectiveはハイスキルフリーランスを集められるのでしょうか。
最大の理由はやはり、企業にとってもフリーランスにとっても、報酬の透明性を実現するビジネスモデルにあると考えています。
また、フリーランスが安心して本業に集中できるようにバックオフィス業務を一元管理できるビジネスツール「FreelanceOS™︎」を無償提供していることも支持される理由でしょう。
「FreelanceOS™︎」を使えば、面倒な契約も請求もストレスフリーにできて、バックオフィス業務に時間を奪われることはありません。
加えて、弊社コミュニティマネージャーが運営するコミュニティの存在も、ハイスキルフリーランスにとっての魅力になっていると思います。
フリーランスは孤独な面もありますから、情報交換やクライアント企業と円滑に取引するためにはどうしたら良いかなど、相談できる場があることに安心感があるのだと思います。
── サービス運営上、大切にしていることはありますか。
自分のスキルを本気で求める企業と向き合いたいと考えるフリーランス、「フリーランス=プロフェッショナル」と考え自分を安売りしたくない方に向けて発信することを心がけています。
Sollectiveに登録しているフリーランスの方々からは、「1人で活動していたときには出合えなかったような仕事に出合える」というお声をいただいています。
日本ではフリーランスは知人からの紹介で仕事を得るリファラルが大半。そのため、紹介される仕事が同じようなものに偏ってしまう面があります。
そこで、フリーランスの仕事獲得がデジタル化すれば、リファラルでは出合えないような仕事と出合う確率が上がるのではないか、と考えました。
あるアートディレクターはファッション業界での仕事が主だったのですが、Sollectiveに登録後、世界的に有名なテクノロジー企業の案件を獲得することができました。「Sollectiveがなかったらこういう仕事はできなかった」と感動されていましたね。
審査通過率わずか数%のプロのみを厳選
── フリーランスは企業の問い合わせがあってから探すのでしょうか?
いいえ。それではスピード感を持ってプロジェクトにジョインできないため、自社開発のツールやコミュニティを通じて、私たちはさまざまな専門分野を持つメンバーを常にプールしています。
企業さまから問い合わせをいただいたら、事業課題やニーズを徹底ヒアリングさせていただき、ご希望の要件に合ったハイスキルフリーランスをご紹介するイメージですね。
弊社がご紹介するフリーランスは、高いスキルと経験を持ち独自の審査を通過したと認められた方のみです。
例えば、マーケティングならマーケティングのプロフェッショナルが審査し、選ばれた人だけがSollectiveの「認定フリーランス」になることができます。審査通過率はわずか数%です。
その点をクリアできたらパーソナリティーや自己啓発、ラーニングの意欲がどの程度あるかを面接を通して判断し、ようやく登録に至ります。
── 登録するフリーランスを厳しく審査するのはなぜでしょう。
通常、人材紹介サービスではキャリアコンサルタントが間に入って企業と人材のマッチングをすることが多いと思いますが、人材のスキルや経験を果たして本当に見極められるのか、と常々疑問に思ってきました。
キャリアコンサルタントは、その道の専門家ではない場合も多いですよね。
そのためSollectiveでは、登録フリーランスをその道のプロが審査しています。それによってスキルセットの見極めを徹底できると考えています。
── なるほど。具体的な直近の実績としては、どのようなものがありますか。
例えば以下の事例では、実際にSollectiveを通じてハイスキルフリーランスを組織に採り入れたことで、企業として成果を上げることが出来ました。
そのほか、最近企業さまからは、デジタルマーケティングやブランディング、新規事業開発、UIUXデザイン、システム開発のプロを紹介してほしいというお声が多いですね。
企業の成功を左右するフリーランス活用
── 今後、企業がフリーランスを活用する際に知っておいたほうがいいことがあれば教えてください。
フリーランスを特別視するのではなく、事業の課題に共に取り組む協業パートナーでチームの一員と考えていただくのが良いと思います。
ハイスキルフリーランスの方々は、企業にバリューを提供したい、自分のスキルや経験を発揮したいという思いで登録されています。
どんなアウトプットを期待しているのか、いつまでにして欲しいかをきちんと言語化して伝えていただければプロジェクトはスムーズに進みます。
── ソレクティブのサービスを通じてどのような社会をつくりたいですか。
ハイスキルフリーランスを集める仕組みは整ったので、フリーランスがさまざまな企業で活躍できる場を増やしていきたいですね。
これからは、ベストなプロ人材をいかにスピーディーに入れて活用できるかに企業の成功がかかっていると言っても過言ではないと思います。
ぜひ日本企業の方々には、ハイスキルフリーランスの活用を本格的にご検討いただきたいですね。
執筆:横山瑠美
撮影:吉田和生
デザイン:小谷玖実
取材・編集:花岡郁
撮影:吉田和生
デザイン:小谷玖実
取材・編集:花岡郁
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