Miho Uranaka Noriyuki Hirata Sam Nussey

[東京 25日 ロイター] - 旧日立系半導体製造装置メーカーKOKUSAI ELECTRICは25日、東京証券取引所プライム市場に新規上場した。初値は公開価格を15%上回る2116円で、一時29%高まで上昇した後、2350円(公開価格比27.7%高)で引けた。半導体市況が弱含み、新規株式公開(IPO)市場がさえない中で、2018年のソフトバンク以来の大型上場は順調な滑り出しとなった。

市場では、公開価格を上回る初値となり「無難なスタート」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)と受け止められた。

東京エレクトロンやアドバンテスト、レーザーテックといった半導体関連株は米金利の高止まりや半導体需要の回復の遅れで上値の重い地合いだが、政府による半導体産業支援への期待もあり、KOKUSAI株の無難なIPOにもつながったとみられている。KOKUSAIは、他の半導体関連と同様、半導体の需給動向や国際政治情勢などの影響を受けるとみられる。

IPOに伴い、米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が保有株の一部を売却した。追加売却分を除いてKKRの持分は73.2%から47.7%まで低下する。売り出し総額が1245億円と、過去5年間のIPOで最大となる。

ただ「IPO市場の復活は期待しにくい」と松井証券の窪田氏は指摘する。KOKUSAIは時価総額5000億円規模で機関投資家の資金流入も見込まれ、個人投資家が中心の小型グロース株とは投資家層が異なる。金利先高観がある中では、新興株市場の軟調な地合いは継続しそうだと窪田氏はみている。

<業績低迷も技術力に評価>

KOKUSAIは、成膜技術を軸とした半導体製造装置の専門メーカー。前工程における回路形成に必要な成膜装置を主力とし、特に数十枚以上のシリコンウエハーを一度に処理するバッチ成膜装置に強みを持つ。成膜後に熱をかけて結晶サイズをそろえる「熱処理」工程で用いられる装置も手掛ける。

18年に日立国際電気(東京都港区)から独立し、現在はKKRの傘下に入っている。KOKUSAIによると、KKRの持ち分は今後減少していくとみられる。

24年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、売上収益が前年比26.7%減の1800億円、営業利益は同48.1%減の291億円、純利益は同49.9%減の202億円。メモリー向けが多く、半導体の需要が停滞する中、減収減益見通しとなっている。

金井史幸社長は会見で、半導体市況について「厳しい状況は続いているが、顧客の在庫が減り始めているため底を打った」との認識を示した。ただ、回復が本格化するには時間がかかるとみており、「24年末から25年にかけて需要は着実に戻り、これまでを超える」と見込んでいる。

業績は低迷しているものの、技術力への評価は高い。岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは「今期は厳しいが今後微細化が進み、トランジスタの構造が複雑化する中、先端半導体の製造に必要な装置。成長期待がある」と指摘する。

米運用大手のキャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントとラザード・アセット・マネージメントが売り出し株の購入を約束するなど[L4N3BG06U]機関投資家の関心も高く、ブックビルディングの海外販売分の需要倍率は10倍を超えていた。

21年には、同業の米大手アプライドマテリアルズが中国独禁法当局の承認を得られず、買収を断念した経緯もある。それでもアプライドマテリアルズはKOKUSAIの株式を買い進め、現在約15%保有している。

金井社長は、アプライドマテリアルズが「これ以上保有を増やすことはない」とした上で、お互い強みのある分野で「協力関係を持つのは意味がある」と説明。今後、ほかのM&A(合併・買収)の機会も追求したい考えも示した。