Takaya Yamaguchi

[東京 20日 ロイター] - 日銀は20日発表した新たな金融システムリポートで、日本の金融システムについて「健全かつ頑健」との評価を維持した。金利変動による金融機関の収益性や資産価値の変化を表す「金利リスク」を包括的に点検し、金利が上昇しても損失吸収力があると結論付けた。

金融システム全体に対する評価は「安定性を維持していると評価できる」とした。金融循環と金利リスクは、目安となる全14指標で2017年の10―12月期以来、過熱でも停滞でもない「緑」となった。

新型コロナウイルスの感染が広がる中では与信を分子とし、国内総生産(GDP)を分母とする指標を中心に過熱を表す「赤」があった。経済正常化に伴って「民間債務と経済活動水準のリバランスが進み、赤が消滅した」としている。

金融機関の資産となる貸し出しや有価証券などを足し上げたリスク量が計16兆円なのに対し、負債サイドのリスク量は19兆円になっている現状も示した。

今後、長期金利だけが上昇して利回り曲線がスティープ(傾斜)化した場合、大手行も地域金融機関も資金利益は預金の追随率が高くても低くても、時間の経過につれて増益幅が拡大。金利上昇直後に債券時価は悪化するが、その後は徐々に改善するとした。

一方、短期金利も長期金利も上昇する場合、預金追随率が低いと大手行も地域金融機関も金利上昇直後から増益に、預金追随率が高いと資金利益はしばらく悪化した状態が続く、としている。

リポートでは、主要中銀による金融引き締めの継続と、それに伴う海外経済の減速懸念などから「ストレス局面は一段と長引く可能性がある」とし、想定外のリスクへの警戒は引き続き重要との見解も示した。

現状では、海外預貸利ざやは改善し、リバランス効果で有価証券の評価損の拡大は抑制されるようになってきた。

ただ、外貨預金調達の金利追随率が「過去平均を上回って90%まで上昇する場合には、損失吸収力を表す損益分岐点信用コスト率はマイナスになり得る」とし、日銀では「海外金利の高止まり期間が長引くほど企業財務が悪化して金融機関の信用コスト率が非線形的に上昇していく。アジア向け貸し出しで顕著になっている」としている。