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Weekly Briefing(スポーツ編)

本拠地開幕カードで見えた、プロ野球12球団の球場力

2015/4/5
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。日曜日のテーマはスポーツ。今回はプロ野球本拠地開幕カードのある「数字」から、12球団のスタジアム力を見ていく。

3月27日、2015年シーズンのプロ野球が開幕した。長いペナントレースの展望を語るのはまだ時期尚早だが、球団経営において極めて重要な「数字」は、早くも明暗が分かれている。観客動員率だ。

観客動員率は、それぞれのスタジアムをどれだけ有効に活用できているかという点で、極めて重要な意味を持っている。今回は本拠地開幕カードの観客動員率から見える、各球団の傾向をピックしたい。

まずは、本拠地開幕カードにおける12球団の観客動員率を見てほしい。

1位:ソフトバンク 98.7% 3月27日(金)〜29日(日)ヤフオクドーム 対ロッテ
 2位:オリックス 96.7% 4月3日(金)、4日(土) 京セラドーム 対日本ハム
 3位:阪神 96.5% 3月27日(金)〜29日(日)京セラドーム 対中日
 4位:巨人 94.88% 3月27日(金)〜29日(日)東京ドーム 対DeNA
 5位:広島 94.86% 3月27日(金)〜29日(日)マツダスタジアム 対ヤクルト
 6位:楽天 90.9% 3月31日(火)、4月2日(木)コボスタ宮城 対西武
 7位:DeNA 88.6% 3月31日(火)〜4月2日(木)横浜スタジアム 対広島
 8位:日本ハム 84.7% 3月27日(金)〜29(日)札幌ドーム 対楽天
 9位:西武 77.6% 3月27日(金)〜29日(日)西武プリンス 対オリックス
 10位:中日 66.1% 3月31日(火)〜4月2日(木)ナゴヤドーム 対巨人
 11位:ヤクルト 65.9% 3月31日(火)〜4月2日(木)神宮球場 対阪神
 12位:ロッテ 59.7% 3月31日(火)〜4月2日(木)QVCマリンフィールド 対日本ハム

※楽天は4月1日、雨天中止。オリックスは4月3、4日のみ集計

ホームゲームを週末に開催した球団を赤字、平日は青字にしている。当然、足を運びやすい週末開催にアドバンテージがある一方、平日の試合に訪れるファン数が少なくなるのは仕方がない。例えば、3月31日から本拠地でオリックスとの3連戦を主催したソフトバンクは、観客動員率が81.3%だった。

そんななか、平日開催の“悪条件”で健闘しているのが、IT系球団だ。

傾向1:IT系戦略でファン定着

今季初の本拠地開幕カードを平日開催した5球団で、トップの観客動員率をたたき出したのが楽天だ。3月31日のナイターでは球団史上最多となる2万6267人がコボスタ宮城に足を運び、午後2時開始だった4月2日の西武戦には同球場でのデイゲーム史上最多となる2万5949人が来場している。

スタジアムの「ボールパーク構想」を掲げる楽天は、今季を迎えるにあたり、総工費約10億円をかけて観客席の新設、球場の外に大型グッズショップやイベント施設を建設。

コボスタ、リニューアルで見所盛りだくさん スポーツ報知(2015年3月31日)

スタジアムというハードの魅力を高めるだけでなく、選手のファンサービスを年俸の評価基準に取り入れるなど、ソフトの良質化も図っている。2013年の日本一から一転、昨年は最下位に沈んだが、「経営黒字化」を見据えた取り組みが身を結び、東北で確実にファン拡大中だ。

また、球団史上初のクライマックスシリーズ進出を狙える戦力が整ったDeNAも、シーズン序盤から好調だ。返金可能チケットを発売するなど、さまざまなファン獲得策を打ってきた球団は今季、開幕6連戦でビジター席を除くすべての入場者にレプリカヘルメットを配布。「コミュニティボールパーク化構想」は、早速成果が表れている。

傾向2:カープ人気が今年も上昇

セ・リーグの優勝候補に挙げられる広島は開幕3連戦でいずれも3万人を超える観客を集め、動員率94.86%を記録。今季の目玉である黒田博樹が先発した3月29日のヤクルト戦は開幕3試合で最も多い3万1540人を集め、広島地区での視聴率は平均34.9%をたたき出した(ビデオリサーチ調べ)。

近年のカープ女子人気も手伝い、観客動員率は2013年が66.8%、2014年が82.5%を記録しているが、今季はこれを上回る数字も期待できそうだ(データはベースボールチャンネル参照)。

フロント陣もチームを後押しすべく、負傷で長期離脱となった主砲エルドレッドの穴を埋めるため、年俸約1億4000万円で新外国人のシャーホルツを獲得。24年ぶりのリーグ優勝を狙う球団の本気度が伝わってくる。

広島に史上最高額116万ドル助っ人 スポーツニッポン(2015年4月4日)

傾向3:中日の人気凋落が顕著

開幕カードで3連勝を飾った中日だが、観客動員では幸先の悪いスタートを切った。ドル箱の巨人戦だったにもかかわらず、スタンドには空席が目立ち、動員率66.1%と低迷。2、3戦目の観客動員数は2万6000人未満で、稼働率は62%だった。

ただし、中日の観客動員を握るのは、対戦相手の人気ではないのかもしれない。事実、4月4日の金曜日に行われた広島戦では、巨人との2、3戦目を上回る2万5862人が来場。延長10回、エルナンデスのサヨナラ打で4連勝を飾り、ドラゴンズファンは気分よく帰途に着いた。

中日は近年、スター候補と期待されてきた平田良介、堂上直倫、高橋周平が思うように伸びていない一方、今季はプロ入り9年目の福田永将が大ブレイクの兆しを見せている。森野将彦がケガで離脱したものの、代わって出場機会を得ている亀澤恭平もヒットを重ねており、二人は人気巻き返しの起爆剤として期待されるところだ。

傾向4:ロッテとヤクルト、スタジアム問題が課題

開幕カードで「水」を刺されたのがヤクルトとロッテだ。4月1日、冬に逆戻りしたかのような寒さと雨に見舞われた関東で、両球団はホームゲームを開催。ヤクルトは人気の阪神戦にもかかわらず、1万8945人の観客しか集まらなかった。一方、春休み中の子どもファンの来場を狙い、平日のデイゲームで行われたロッテ対日本ハム戦は、1万4244人と寂しい客足だった。

近年、観客動員に苦しむ両球団にとって、打開策として考えられるのが「魅力あるスタジアムつくり」だ。ロッテのサブローは2015年の年俸更改を終えた直後の会見で、「ドーム球場を造ってほしい」と訴えている。

サブロー熱望も…千葉マリン「ドーム化を阻むいくつもの壁」 日刊ゲンダイ(2014年12月26日)

記事中にあるように実現へのハードルは高いが、QVCマリンフィールドは最寄駅から徒歩15分と遠く、ファウルゾーンが広すぎるなど、ファンに足を運ばせる阻害要因がいくつもある。熱狂的なファンに支えられ、さまざまなイベントを行っているロッテだが、スタジアム問題を解決しない限り、観客動員を回復させるのは難しいだろう。

一方、1926年に竣工した神宮球場は、2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせ、建て替えを含めた開発計画が検討中だ。

神宮球場建て替えなど神宮外苑を再開発 NHK(2015年4月1日)

個人的に神宮は好きな球場だが、老朽化は否定できない。地下鉄の外苑前と国立競技場、JRの千駄ヶ谷と信濃町と計4駅から徒歩圏内という立地のよさがあるだけに、魅力的な箱をつくればファンの拡大は可能だと思う。

広島や楽天が観客動員で好調なのは、魅力あるスタジアムに支えられている部分が大きい。あぐらをかいていてもファンが来てくれるのは、東京ドームくらいだ。ファンが足を運びたくなるようなスタジアムつくりがいかに大切なのかは、開幕カードの観客動員率が顕著に示している。

※Weekly Briefing(スポーツ編)は、毎週日曜日に掲載する予定です。