2023/10/16

【橋本栄莉】南スーダンで活動する、知られざる日本人学者の人生

立教大学 文学部 准教授
人生の「探求者」たちのエピソードから、自分らしく、しなやかに生きるヒントを探る連載「Life Questライフクエスト)」。

今回は、文化人類学者で、立教大学文学部准教授を務める橋本栄莉(はしもと・えり)さんの人生を深掘りする。

橋本氏は、南スーダン共和国のヌエル族における、予言者信仰と紛争の関係について研究を行ってきた。

ヌエル族の世界では、ものの見方も、当たり前も、何もかもがまるで違う。

「当たり前」ってなんだろう。

橋本氏の人生を追いながら、あなたの「当たり前」を見つめ直してみると、きっとあなたの世界は広く、自由なものになるはずだ。(第1話/全5回

橋本 栄莉(はしもと・えり)文化人類学者、立教大学准教授
専門は文化・社会人類学、アフリカ研究。2008年より南スーダン、ウガンダでフィールドワークを行う。関心は、世界の信仰と紛争、現代の予言・呪術など。著作に『エ・クウォス:南スーダン、ヌエル社会における予言と受難の民族誌』(2018年、九州大学出版会)がある。澁澤賞(澁澤民族学振興基金)、発展途上国研究奨励賞(ジェトロ・アジア経済研究所)などを受賞。
INDEX
  • フィールドワークは「命がけ」
  • ヌエル族の「家族」になる
  • 仲良くなるために心がけたこと
  • 銃声は日常茶飯事
  • 日本も南スーダンも楽園ではない

フィールドワークは「命がけ」

私は立教大学で文化人類学の研究をしています。
具体的には、アフリカの南スーダンの「ヌエル(ヌアー)」と呼ばれる民族集団の「予言」について研究をしています。
人類学の研究者は研究対象と生活をともにする「フィールドワーク」を行います。
ヌエル族は人類学では有名な民族で、王や首長が存在していないのに秩序が保たれていた、というのがヌエル社会の大きな特徴です。過去にいろいろな国の研究者が調査に訪れています。
が、現在ヌエルでフィールドワークをしている日本人は、いまのところ私だけかもしれません(南スーダンのほかの民族にはいます)。
南スーダンの正式名称は、南スーダン共和国。2011年に国家として独立しましたが、私が初めて訪れたのはそれより前の2008年でした。
(Photo by: Encyclopedia Britannica/Universal Images Group via Getty Images)