フェイスブック、「1000機の無人機」で世界のネット接続を目指す
2015/04/01, The New York Times
コードネームは「Aquila」(鷲)
ギリシャ神話では、「Aquila」はゼウスの用いる雷の矢を運ぶ鷲だった。フェイスブックはこれを空高く飛ぶ無人機のコードネームとして使っている。まるで同社の野望を象徴するかのようだ。
V字形をした無人機の翼幅はボーイング767に匹敵するが、重さは小型車よりも軽い。50億人のインターネット接続を可能にするというフェイスブックの計画の中心にあるのがこの無人機だ。
太陽光電池式の無人機を天高く飛ばし、インターネット接続を可能にするという計画は、利益を得るために広告を売っているハイテク企業の行動とは思えないかもしれない。14億人が利用しているフェイスブックのビジネスモデルは、ボーイングよりもNBCとの共通点の方が多いように思われる。
各社がインターネット支配にしのぎを削る
多くの企業がインターネット支配を目指してしのぎを削っている。グーグルは高度気球と高速のファイバーネットワークを整備し、アマゾンは配送のための実験的な無人機や、巨大なデータセンターを所有している。フェイスブックには、実際の製品よりもむしろ理論的プロジェクトを追求する能力があることを示すようにとの圧力がかかっている。そうした突飛のないアイデアの一つが成功する場合もあるからだ。
ワシントン大学でコンピューターサイエンス・エンジニアリング学部長を務めるエド・ラゾウスカは、「アマゾンやグーグル、フェイスブックのような企業は、われわれの生活を変えてしまうような完全に新しいものを模索している。ヒューレット・パーカード(HP)やIBMのような企業は、もう壮大なプロジェクトに取り組むことはなくなってしまった」と語る。
「メッセンジャー」のコードを公開
3月25日にサンフランシスコで開幕した開発者会議で、フェイスブックの最高経営責任者(CEO)、マーク・ザッカーバーグは、 同社のモバイルメッセージングアプリである「メッセンジャー」のコードを公開して他社が利用できるようにすると発表した。同社が既に優位に立っているモバイル端末における立場をさらに強化しようとする動きの一環だ。
こうした動きは、フェイスブックが影響力を一段と強化するために今後開発する予定の無人機、バーチャルリアリティー(仮想現実)にプラグインできるゴーグル、人工知能(AI)など一連の製品の第一段階にすぎない。
同社は開発者会議で、メッセンジャーの50種類近いアプリケーションのデモンストレーションをした。その中にはテキストメッセージを歌に変えることを可能にするアプリや、今の気分を表すためのGIFアニメを探して送ることができるアプリも含まれる。
ザッカーバーグは会議で、「これまではこれらのアプリをすべて自社で開発し、メッセンジャーを改善しようとしてきた」としたうえで、「メッセンジャー・プラットフォーム」を開放することで、より創造的なアプリを他社が開発することが可能になると述べた。「わが社の高速で単純なツールによって皆さんができるようになることを考えるとわくわくする」(ザッカーバーグ)。
フェイスブックは、企業がメッセンジャーを使ってパーソナル化されたサービスを顧客に提供できるシステムの試験をまもなく開始することを明らかにした。例えば、利用者がメッセンジャーを使って注文したシャツの色を変えたり、UPSの荷物を追跡できるようになるかもしれない。
360度のパノラマ動画の表示も
フェイスブックは今のところ衣料小売業のズーリリーとエバーレーンと提携しているが、顧客サービスの問題に直面することが多い航空会社やケーブルテレビ会社のような他の企業とも提携したいと考えている。
フェイスブックのメッセージング製品部門を率いるデービッド・マーカスはあるインタビューで、「今は企業と話をするのがとても難しいことはだれでも認識していると思う。われわれは商業における企業と顧客の対話を取り戻そうとしている」と述べている。 フェイスブックはまたニュースフィードに360度のパノラマ動画を表示できるようになると発表した。
夢は1000機の無人機で世界をインターネットに接続
フェイスブックは昨年無人機メーカーのアセンタを買収したが、これによって同社の一員になった無人機チームは、太陽電池で動く無人機はいずれ上空1万8000~2万7000メートルに3カ月滞在できるようになり、レーザーによって、世界の最も遠隔地に高速データを送ることができるようになると語る。実用化は何年も先のことになるかもしれないが、試験飛行は今年の夏に始まる。
フェイスブックのコネクティビティー・ラブのトップ、ヤエル・マガイアは、高速インターネット信号によって 「世界のすべての人に奉仕したい」と語る。各国の規制当局の承認を必要とするものの、夢は1000機もの無人機で人々をインターネットに接続することだ。あまりに遠隔地で無人機さえも到達できないところには衛星を利用する。「地球上のすべての人が一度に同じメッセージを受け取れるような時がいつかくるだろうか。私はその日を心待ちにしている 」とマガイア。
フェイスブックの幹部は、その日はまだまだずっと先のことになるかもしれないと認める。「Aquila」の最終的な費用はまだわからないが、そのビジョンを実現するための数十億ドルの支出はいとわないようだ。
ただ懐疑的な向きもある。S&PキャピタルIQのアナリスト、スコット・ケスラーは、 「グーグルと同様に、フェイスブックは何をしても許される。批判をものともせず、5~10年先に目を向けている先見性のある経営者がいるからだ。それでも人々はどのくらいコストがかかるのか、それが利益につながるのかどうかを知りたいと思っている」と指摘する。
(執筆:Quentin Harday、Vindu Goel、撮影:Harvest Zhang/Facebook via The New York Times、翻訳:飯田雅美)
© 2015 New York Times News Service
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コメント
注目のコメント
楽しみだねぇ。日本の成層圏プラットフォームは予算が無くなり消えたが、グローバル企業はそれを完遂する。国民国家の徴税は何の為か、ぶら下がり国民を救済する必要などないのではないか
自らがインフラを創る特大の構想。こちらの記事と合わせて読むと、理解が深まります。https://newspicks.com/news/897255/
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