Maki Shiraki

[東京 2日 ロイター] - 故ジャニー喜多川氏による性加害問題を抱えるジャニーズ事務所は2日会見し、被害者の補償に専念し、補償終了後に廃業すると発表した。ジャニーズを冠した関連企業を含む社名、グループ名全てを変更する。新たにタレントのマネジメント・育成会社を設立し、社名はファンクラブで公募する。日本のエンターテインメント業界に長年君臨し続けた同事務所は消滅、「ジャニーズ」の名とも決別して再出発を図る。

同事務所は17日付でこれまで社会貢献活動を行う際に使っていた「SMILE₋UP.(スマイルアップ)」という名に変更。他の株主が入ると被害者に法を超えた救済が事実上できなくなるため、創業家の藤島ジュリー景子氏が100%株主として残る。9月末までに478人から連絡があり、うち325人が補償を求めており、11月から補償を始める。

藤島氏は会見に欠席。手紙で「叔父ジャニー、母メリーが作ったものを閉じていくことが加害者の親族として私ができる償い」、「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」などと述べた。同氏は今後、関連会社全ての代表取締役からも降りる。ジャニー・メリー両氏からの相続後、「事務所維持のため事業承継税制を活用したが、代表権を返上することでこれをやめて、税金を全て支払い、会社を終わらせる」とした。

スマイルアップと新会社の社長に東山紀之氏、新会社の副社長には井ノ原快彦氏(現ジャニーズアイランド社長)が就く。新会社については役員と従業員が出資し、経営に明るい外部人材の招へいも検討している。法令順守担当役員には山田将之弁護士が就いた。藤島氏は出資せず取締役にも入らない。タレントは新会社と個別にエージェント契約を結ぶ。

2度目の会見に臨んだ東山社長は、社名を残すという判断が「まさに内向き体制だったと批判されて当然」と話し、「ジャニーズと付くものは全てなくなる」と語った。

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の代理人弁護士は「ジュリー氏の手紙の内容はすごく真剣には感じた」としつつ、「今後の姿勢を注意深く見守りたい」と話した。タレントの広告起用見送り企業が方針を転換するかは、事務所の「今後の行動を見ないと何とも言えない」との見方を示した。

広告起用を停止中の日産自動車と継続中の住友金属鉱山は会見を受け、それぞれ「方針に変更はない」(両社の広報)とした。日産は「事務所が発表した改革や再発防止の取り組みを注視」しつつ、将来の販促活動も「適切な対応を取っていく」とコメント。住友鉱は、取引先は契約をすぐ解除せず、粘り強く影響力行使に努めるよう求める国連の指導原則に則っているとし、過去の調査・救済・今後の人権侵害防止を「見極めたい」と説明した。