(ブルームバーグ): 「金利上昇は今後も続く」という中央銀行からのここ1年の警告を債券市場は先週、ようやく理解したようだ。

米国からドイツ、日本に至るまで、2023年初めにはほとんど想像できなかった利回り水準が今や射程に入っている。債券売りがあまりに極端になったため強気派は降参し、ウォール街の金融機関は予想を撤回せざるを得なくなっている。

独10年国債利回りは3%に接近し、2011年以来の水準。同年限の米国債利回りは、世界金融危機以前の平均に戻り、5%に迫る勢いだ。

どこまで上昇するかが今の問題だ。重要な水準を突破した後、本当の天井が見えない。既に行き過ぎた動きだとする意見がある一方で、「ニューノーマル(新常態)」と呼ぶ人もおり、中央銀行が何兆ドルもの債券を買い入れ市場をゆがめた時代の前の世界に戻ることになるという。

 

金利上昇の影響は市場だけにとどまらず、住宅ローンや学生ローン、クレジットカードの金利、そして世界経済の成長そのものにまで及ぶ。

債券売りの中心は世界で年限最長の国債で、逆風は強まり続けている。原油価格は上昇し、米政府の債務は膨らみ、再び政府機関閉鎖の危機にもさらされたほか、中国との緊張は高まっている。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのアセットアロケーション担当責任者フレデリック・ドダール氏は、「ここ数カ月の出来事は基本的に、インフレがすぐに減速し中銀が極めてハト派的になると市場が読み誤った」ことを示していると指摘。「インフレが中長期的にどう推移するかですべてが決まるが、超低利回りの状況からは変化したと言っていいだろう」と付け加えた。

ブラックロックのラリー・フィンク氏やパーシング・スクエア・キャピタルのビル・アックマン氏など、世界で著名投資家の中には、現在のトレンドはまだ終わっていないかもしれないと言う人もいる。

債券利回りは既に、節目にどんどん近づいている。独10年債利回りは月間で今年最大の急上昇を記録。日本国債は四半期ベースの下げが過去25年で最悪となり、米30年債利回りは四半期ベースで09年以来最大の急上昇となった。

キャンドリアムのマルチアセット・グローバル責任者ナデージュ・デュフォッセ氏は、現在の市場トレンドが長続きしない可能性があり、徐々に長期債にシフトしていくことを検討していると話す。

ただ、長期債への圧力が和らぎ始めたとしても、世界の中銀の中で政策正常化で出遅れている日本銀行にとっては、別の大きな試練が待ち受けている。政策当局は債券利回り上昇の動きを抑制しようとしているにもかかわらず、すでに数年来の高水準に達しつつある。

ハートフォード・ワールド・ボンド・ファンドのポートフォリオマネジャー、マーティン・ハービー氏は、「日本については当面の問題であり、世界市場にどう影響するか議論が必要だ。金利が一層上昇するのきっかけとなる可能性があり、注視が必要だ」と述べた。

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原題:Once Unthinkable Bond Yields Are Now the New Normal for Markets(抜粋)

--取材協力:Anchalee Worrachate、Ye Xie、James Hirai、Sujata Rao、Dayana Mustak.

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