[フランクフルト 27日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が27日公表した8月のデータによると、ユーロ圏のマネーサプライが過去最大の落ち込みを記録した。

ECBの利上げを受けて、銀行が融資を抑制し、預金者が定期預金などに資金を移していることが背景。

現金と当座預金残高のみで構成するマネーサプライは8月に過去最大の11.9%減少。預金者が金利の上昇した定期預金に資金を移した。

定期預金と短期銀行債も含めたより広義のマネーサプライも、過去最大の1.3%減。一部の資金が銀行部門から完全に流出し、国債やファンドに滞留している可能性が高い。

オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、ダニエル・クラル氏は「ユーロ圏の目先の見通しは厳しい。第3・四半期の域内総生産(GDP)は縮小し、第4・四半期も停滞する可能性が高い」と指摘。

非金融企業向け融資の前年比伸び率(調整済み)は8月に0.6%と前月の2.2%から鈍化し、2015年終盤以来の低水準となった。

家計向けの伸びも7月の1.3%から1.0%に鈍化した。

企業向け融資の月間フローはマイナス220億ユーロ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に見舞われていた2年以上前以来の弱い数字だ。

INGのエコノミスト、ベルト・コリジン氏は「ユーロ圏経済にとって良いニュースではない。ユーロ圏経済はすでに停滞しており、低迷の兆しが増えている。制限的な金融政策の影響により広範な分野で低迷が続くだろう」と述べた。

ECBの利上げに伴う借り入れコストの上昇が成長にブレーキをかけており、今後数四半期の域内経済は良くても停滞にとどまると見込まれている。