(ブルームバーグ): 今年4月に東京証券取引所に新規上場(IPO)した楽天銀行株が急騰劇を演じている。上場後5カ月近くは2000円を挟むレンジ相場だったものの、9月半ばから急激に動き、月初来の株価上昇率は3割強に達する。

4月21日に上場した楽天銀の初値は、公開価格の1400円に対し33%高の1856円と好発進。その後はおおむね1800-2100円のレンジ内で推移してきたが、9月11日から9連騰し、26日の取引で一時2747円と上場来高値を付けた。

日本銀行の植田和男総裁のインタビュー記事をきっかけに政策修正観測が高まる中、国内長期金利の上昇傾向を材料に東証銀行株指数は15年ぶりの高値を更新する右肩上がりの展開が続いており、相対的に出遅れていた楽天銀も見直されやすかった。

モルガン・スタンレーMUFGの長坂美亜アナリストらは22日のリポートで、楽天銀急騰の理由として「円金利上昇の恩恵を受ける銘柄としての市場期待の高まり」を挙げた。同社は住宅ローンなどTIBOR(東京銀行間取引金利)に対応するアセット構成比が高く、買入金銭債権も短期市場金利に連動すると理解され、金利感応度は相対的に高いとみている

一方、ヘッジファンドを巻き込んだ需給要因が株価の急騰に拍車をかけたとの見方もある。

アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、楽天銀株は「追加売り出しの観測や楽天グループの財務脆弱性などの需給懸念が長く上値の重しとなっていた」と指摘。大株主が市場で持ち株を一定期間売却できないロックアップ期間の終了が10月中旬に迫る中、「ショートがたまりやすい環境」だったと言う。

金融情報サービス会社のIHSマークイットによると、楽天銀のショート(空売り)が浮動株に占める比率は9月中旬に急上昇。その後も高水準で推移し、25日時点で18.2%に達した。買い戻しによる株価急騰が新たなショートを呼び込む展開となっている。

三井氏は「ロックアップ後の株価下落もあり得るとの思惑は銀行セクター人気で外れ、損失覚悟の買い戻しが反発のジェットエンジンに火を付けた可能性がある」と分析。直近の株高は需給要因が大きく、「買い戻し一巡後は再びボックス相場となることも考えられる」と話した。

27日の取引で楽天銀株は、一時前日比8.8%安と上場来最大の下落率を記録した。午後1時3分時点で銀行株指数を構成する78銘柄中、値下がり1位。26日は値上がりトップだった。独自の需給要因を背景に、同社株のボラティリティーの大きさは銀行株の中でも際立っている。

(最終段落に株価動向を追記、記事を更新します)

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