2023/9/10

【週末に読む】現代人の「苦しみ」に仏教はどう答えるか

NewsPicks編集部
2500年続く「仏教」の教えにこそ、現代の人々の悩みを解決するヒントがある──。
仏教を「宗教」ではなく「思考体系」として解説した新著『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』(イースト・プレス)は、悩める現代人にそう語りかける。
では、仏教の教えを具体的にどう日常に生かしていけばいいのか?
著者で僧侶の松波龍源氏に現代人の「苦しみ」の正体とその解決法を聞いた。
INDEX
  • 現代社会が「生きにくい」理由
  • 幸せも苦痛も「心の外」にはない
  • 仏教思考、実践の3STEP

現代社会が「生きにくい」理由

──前編で、仏教の目的は「人間の苦しみを取り除き、より良く生きるヒントを与えること」だと伺いました。現代の人々はどんな「苦しみ」を抱えているのでしょうか?
松波 昨今に特有なものでいうと、やはり「心が満たされない苦しみ」でしょうか。
近代以前の苦しみは、「食べるものがない」「温かい場所で寝られない」といった、もっと物質的な欲求に紐づいたものでした。
一方、現代社会は物質的な豊かさが満たされましたが、飽くなき成長主義に疲弊したり、バズや承認欲求に振り回されたり──。
こうした、心的な苦しみが顕著になってきています。
そもそも、なぜ豊かになったはずなのに、「しんどさ」は減らないのか。
私は、現代社会のOS(基本システム)そのものに原因があると考えています。
一言で言えば、物質的な豊かさや成長が優先され、心の問題が「ない」ことにされているのです。