2023/9/10

【大失敗】飲み仲間と「SPACやろうぜ」の末路と教訓

2021年春、日本の著名なベンチャーキャピタリスト千葉功太郎氏は、ハワイで飲み仲間にこんな言葉を聞いた。
SPAC──。
SPACとは、事業を持たない「空箱」の会社のことだ。空箱を米NASDAQに上場させ、未上場の事業会社を探す。
事業会社は、SPACと合併することで、面倒な上場審査を迂回してNASDAQに上場できる。SPACの主催者は、事業会社の大株主となり利益を得る。
一通り話を聞いた千葉氏は、飲み仲間と意気投合した。
「SPACやろうぜ」
日本企業を初めてSPAC上場に導いた千葉氏の計画は、こうして始まった。「僕は起業家気質があるから、やってみて、肌感覚で経験したい」
その、日本で初めてSPAC上場を果たした事業会社が、悲惨な末路を迎えている。
1日目に動画で紹介した「空飛ぶバイク」のSPAC上場から墜落までを、テキストでより詳しくお伝えする。
札幌ドームで新庄剛志監督が乗ったA.L.I.テクノロジーズのホバーバイク(2022年3月、時事通信)
INDEX
  • 1年余りで倒産の危機
  • 東証IPO断念
  • 千葉氏「異常事態」
  • 1ドル増資→売り殺到
  • 嵐に突っ込むホバーバイク
  • 「×」ばっかり
  • 宴の後

1年余りで倒産の危機

「給与未払いは生活に直結する事象ですし、いたずらに先延ばしにせず、タイムリーなご判断・ご決断・ご調整と従業員に対する情報共有をお願いいたします」
8月下旬、A.L.I.テクノロジーズの従業員は、悲痛なメールを会社側に送信した。
ALIは、浮かぶバイク「ホバーバイク」を開発する。
2022年3月には、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督が、これにまたがって札幌ドームの空中に浮いて登場した。
夢のようなバイクを開発する会社として一躍脚光を浴びたが、わずか1年余りで暗転した。倒産の危機に瀕し、従業員に給与すら支払えない状態なのだ。
この転落劇に深く関与したのが、ほかならぬ千葉氏のSPACだ。