[東京 2日 ロイター] - 日銀が6月15―16日に開催した金融政策決定会合では、イールドカーブ・コントロール(YCC)の将来的な見直しを意識した議論が展開されていたことが明らかになった。ある委員が、出口戦略の局面での急激な金利変動を回避するなどの観点から早期の見直しを求めたほか、1人の委員は仮にYCCを見直すとしても、国債の大規模買い入れに伴う金利押し下げ効果は残り続けることを説明すべきと主張した。

日銀が2日、同会合の議事要旨を発表した。同会合では金融政策の現状維持を全員一致で決定したが、7月27―28日の決定会合でYCCの運用柔軟化を賛成多数で決めた。

6月会合では、イールドカーブの歪みの解消が進んだことや、市場機能がひと頃より改善していることから、YCCの運用を現時点で見直す必要はないとの結論に至った。ただ、ある委員はYCCの運用について「出口観測が高まった際に金利が急上昇することを極力避ける必要がある」と述べた。

YCCの早期見直しを主張した委員を含む何人かの委員は、将来YCCを見直す場合には「意図せぬ金融引き締め方向のアナウンスメント効果をもたらすリスクがある点には留意する必要がある」と指摘した。

ある委員は、足元の物価の強さで中長期のインフレ予想に大きな変化が生じている証拠はないものの、中長期のインフレ予想は「YCCの運営との関係で重要な要素だ」と述べた。

<企業の価格転嫁、「足元が変曲点の可能性」>

決定会合では物価を巡る議論も活発に展開されていた。多くの委員が、足元の物価上昇率を見ると、4月の展望リポートでの想定より「幾分上振れ気味で推移している」との認識を示した。日銀は7月の展望リポートで2023年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しを前年度比プラス1.8%からプラス2.5%に大幅に引き上げた。

複数の委員が、消費者物価ではサービス価格の上昇ペースが目立つなど国内要因が強まっていると指摘した。企業の価格転嫁が進められている背景として、複数の委員は「需要の底堅さも寄与している」との見方を示した。

ある委員は、企業がすでに生じたコスト高を反映するのではなく「将来のコスト変化を先取りする形での価格設定行動が広がっているとすれば、従来とは異なる動きだ」と述べた。足元が「変曲点」の可能性もあるとして、企業のマージン率や収益、家計の物価や賃金動向の受け止め、値上げ後の売れ行きなどを幅広く見ていく必要があるとした。

1人の委員は、高水準の企業収益を踏まえると「来年の春季労使交渉においても高水準の賃上げが続く可能性もある」と述べた。

何人かの委員は、長い目で見た物価の下振れリスクが依然大きいとして「拙速な政策転換を行うことで目標達成の機会を逸してしまうリスクの方が大きい」と述べた。ただ、このうち1人の委員は、日本も欧米のように「物価上昇の持続性を過小評価している可能性も否定できない」とし、 十分に注意する必要があると付け加えた。

ある委員は、物価面で変化の兆しが見られていることも踏まえると「政策は経済・物価情勢次第だ」としっかり伝えていくことがますます重要になっていると述べた。

(和田崇彦)