[東京 26日 ロイター] - 半導体材料モノマーで世界シェア首位の大阪有機化学工業の安藤昌幸社長はロイターとのインタビューで、機運が高まる半導体素材業界の再編に否定的な考えを示し、競争力強化に必要なのは規模ではなく技術力だと強調した。

安藤社長は「再編が競争力につながるとは考えていない」とした上で、「技術力や開発力のない会社は、自然に淘汰される」と述べた。

同社は半導体ウエハーに回路パターンを転写するのに使うフォトレジストの高付加価値品の原料モノマーで世界シェア6―7割を持ち、JSRや東京応化工業など主要レジストメーカーに供給。需要拡大が今後期待される先端半導体向けの開発も進めている。

業界再編はレジストメーカーとの垂直統合、同業との水平統合があり得るが、安藤社長はいずれの可能性も否定した。垂直統合は他のメーカーへ供給ができなくなる上、研究開発費や設備投資など顧客当たりのコストが上昇すると説明。水平統合も設備や技術が異なるために「競争力は出ない」と語った。

戦略物資として重要性が高まる半導体の世界的な供給網の中で、日本は素材や製造装置に強みを持つ。しかし、個々の企業規模が比較的小さく、いずれ国際競争力を失う可能性が指摘されている。

レジストで世界シェア首位のJSRは6月、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入ることを決めた。規模の拡大で競争力を高めることを狙い、株式を非公開化して同社主導で業界再編を進める態勢を整える。

一方、安藤社長は数千億円規模の設備投資が必要な台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子など半導体メーカーと比較し、「材料産業は規模を追いかけてコストダウンするビジネスではない」とした上で、最も重要なのは「技術力」と述べた。同社が扱う製品はモノマーだけで100種類以上。供給先ごとに仕様が異なり、それぞれ違う品質管理ができることに競争優位性があるという。

同社の主力はArF(フッ化アルゴン)用レジスト向けのモノマーだが、回路線幅1桁ナノメートル(ナノは10億分の1)の先端半導体の製造に欠かせないEUV(極端紫外線)向けの開発も進めている。安藤社長は微細化が進む中で添加剤としての需要が拡大するとみており、採用してもらえる「自信がある」と語った。

シティグループ証券の西山祐太アナリストは、同社のEUV向けモノマーの売り上げはレジスト市場の成長率(年30―40%)を上回るペースで伸びるとみている。機能性を多様化したいレジストメーカーの間で採用が広がるとし、「フォトレジスト市場よりも成長性が高い」と予想する。

*インタビューは25日に実施しました。

(浦中美穂、Sam Sussey 編集:久保信博)