30年後に備える資産運用

利用者の3分の2が基準額より分配金の増加を希望

「分配型投資信託」との正しい付き合い方

2015/3/12
分配型投資信託は長らく隆盛を誇ってきたが、必ずしも上手な使われ方をしてきたとは思えない。投資家は分配金をまるで利息のように思っていたり、分配金の高さに目が向いてリスクの高さに意識がいっていないなど、課題が多い。しかし、資産を引き出す機能そのものには有用性がある。その点を理解して、上手な使い方が求められるところだ。

分配金の使い方に懸念

少し前になりますが、2010年に分配型投資信託保有者3340人を対象にしたアンケートを行いました。このなかで、「分配金の使い道」を尋ねると、分配型投資信託保有者3340人のうち52.8%が「将来のための貯蓄」としています。

分配金を受け取れば、当然ながら税金を支払うし、投資の複利効果さえ犠牲にします。これでは効率的な投資にはなりません。特に資産を作り上げようとする40代、50代で「将来のための貯蓄にする」比率が相対的に高いのは、かなりもったいないことをしているように思います。

もちろん、毎月分配型の投資信託が悪いわけではありません。実際、毎月分配型投資信託に投資している人は多いと思います。

前述のとおり資産を作り上げていこうとする資産形成層には向かない金融商品だと言えます。しかし、分配型投資信託は引き出し機能を持っていることで、「使いながら運用する」という退職後の資産運用には有効なもののはずです。

アンケート調査からは、60代の方が40代、50代よりも、使うことに分配金を利用している比率が高いことはホッとする点です。上手に使って資産の長持ちを図りたいところです。
 24_何のための分配金か

「もっと多い分配金を」

もちろん、分配金への誤解や課題が多いことも理解する必要があります。前述の分配型投資信託保有者3340人を対象にしたアンケートでは、「頭で分かっているのに分配金の多さに目がくらんだ」姿が見受けられました。

例えば、「次に投資するなら、どの投信か」と聞いた設問では、「分配金は増えないが基準価額は上がる投信」を選んだのは全体の56.6%、「分配金は高くないがリスクの低い投信」を選んだのが29.4%でした。逆に「分配金が増えるが基準価額は下がる投信」(1.9%)、「分配金は高いがリスクも高い投信」(5.0%)といった選択肢はほとんど選ばれませんでした。明らかに分配金よりもリスクや基準価額の動きを重視すると答えており、理屈にかなった投資態度だと言えます。

しかし、同じアンケートの別の設問で、「どれくらいの分配金があれば満足か」の設問には、「今より5割くらい多い」が33.7%、「今の2倍以上」が30.1%に達しています。3分の2が「もっと多い分配金を」と望んでいるのです。なんだか、頭ではリスクのことが分かっているのに、実際の投資行動は分配金が多い方に流れてしまっている姿がうかがえ、残念なところです。

分配金は元本や投資収益のなかから資金の引き出しとして投資家に分配するものです。そのため分配金を出すたびに、その分、投資信託の基準価額が下がっていることが理解されなければなりません。しかし、受け取った分配金を銀行預金にしている人が多いように、その投資行動からみると分配金はもうけた分だと理解して、例えば「銀行の利息」のようなもの、「毎月のお小遣い」のようなものと思っている節があります。そのため分配金が下がると、それは「悪い投資商品」と考えがちなのです。

高い分配金を求める結果のリスクにも要注意

誤解に基づいた人気の離散を避けたいために、できるだけ分配金を引き下げないで済まそうとする力も働きます。本来、分配金は運用成果に基づいて増えたり、減ったりすべきものなのですが、結果としては変動しにくい分配金になるわけです。

さらに心配なのが世界的な低金利が続く中、十分な分配金を確保するためによりリスクの高い投資対象を組み入れた投資信託が求められるようになってきていることです。分配金の高さだけに目が行って、リスクを十分に把握できていない懸念もありそうです。特に高齢者ではその懸念が心配で、思わぬ損失につながらないように十分検討したうえで投資をする必要があります。

繰り返しになりますが、分配型投資信託がだめなのではなくて、その良さと問題点を理解して、資産形成に、また退職後の資産の活用に、うまく利用してほしいものです。

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※本連載は毎週木曜日に掲載する予定です。