(ブルームバーグ): 三井住友トラスト・ホールディングス(TH)やみずほフィナシャルグループ(FG)などが出資する資産管理信託銀行、日本カストディ銀行は9日、元取締役による不正行為が同行の社内調査で判明したと発表した。複数の関係者によると、元取締役は三井住友信託銀行出身の田中嘉一元社長。顧客の資産を預かる資産管理信託銀行でトップ自らが不正に手を染めていたことになる。

田中氏は、三井住友信託銀行出身で、同行専務から2018年に日本カストディ銀の前身である日本トラスティ・サービス信託銀行社長に就任。21年に日本カストディ銀社長に就いた。複数の三井住友信託関係者によると、システム畑が長く、専門性が評価されていた。昨年12月末に任期満了で退任したという。

同行の発表によると、不正行為の疑いが出たことから、外部の弁護士を中心とする調査委員会を今年1月に設置した。資料分析や関係者へのヒアリングなどの結果、同行が外部に委託する業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為を確認した。刑事上の扱いについては、捜査機関にも相談しているという。

     日本カストディ銀の広報担当者は、捜査機関に相談していることを理由に、田中元社長が当該元取締役かどうかについては回答を差し控えた。不正行為の時期についても回答できないとした。田中氏本人からのコメントは得られていない。

日本カストディ銀は、20年に三井住友THとみずほFGのそれぞれ系列の資産管理信託銀行が合併して誕生した。三井住友THが33.3%、みずほFGが27%、りそな銀行が16.7%を出資。そのほか、第一生命保険や朝日生命保険なども出資している。

同行が公表している22年9月末時点の預かり資産残高は約652兆円で、三菱UFJ信託銀行系の日本マスタートラスト信託銀行と並び、国内最大の資産管理専門銀行。

生命保険会社や運用会社などの機関投資家が運用する有価証券を預かり、売買や配当の計算などの決済業務を受託している。投資信託の基準価格の計算や、投資信託の購入者に対する収益の交付なども手掛け、金融市場のインフラ機能を担っている。

--取材協力:梅川崇.

(新たな情報や会社発表の内容を追加して記事を更新します)

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