【森永康平】「マクロ」の観点で物事を見られると、「ミクロ」の世界の勝率を上げられる

2023/5/17
実践第一主義のプロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」では、2023年5月27日 (土)、6月11日 (日)の2日間にて『CFOや事業責任者が知るべき、金融と経済の本質』を開講する。
プロジェクトリーダーを務めるのは、経済アナリストの森永康平氏だ。
本プロジェクトでは金融と経済についてミクロの視点だけでなく、マクロの観点から学んでいく。
金融や経済について体系的に学ぶことで、資産運用だけではなく、CFOがマクロ環境に合わせて資金調達計画を作ることができたり、事業責任者がこれからの環境変化に応じてビジネスプランを練れるようになることを目指している。
そんな森永康平氏は、NewsPicksのトピックスでも「森永康平のリアル経済学」といううテーマで定期連載を続けている。
その中から、森永氏が本プロジェクトへの意気込みを込めた記事「マクロ経済の観点が実業に役立つ瞬間」を再編集してお届けする。

マクロの観点を無視することは危険

物事を見る際に、観点を表す言葉としてミクロとマクロという言葉が使われることが多々あります。簡単に言えば、個人や企業をミクロ、それらを取り囲む環境をマクロと考えると分かりやすいでしょうか。
私は常々、ミクロとマクロ、両方の観点から物事を見なくてはいけないと主張していますが、これは意識をしていないとなかなか出来ないことです。
基本的に人間はミクロの観点でしか物事を見ることは出来ません。なぜなら、無意識に生きているとミクロの観点しか存在しないからです。
とはいえ、そのミクロの観点はマクロ環境の中において存在しているため、マクロの観点を無視することは非常に危険なのです。
しかし、ミクロとマクロの両方の観点を持てるようになると、新たな困難に直面します。それは、同じ事象を見ても、ミクロとマクロで真逆の見解が生じることがあるからです。

「合成の誤謬」が起こってしまう

たとえば、日本経済を例にとってみましょう。30年近く日本経済がほとんど成長することなく、平均給与も上がらず、少子高齢化が進んでいるということは多くの方が知るところでしょう。
このように経済の冷温停止状態を長く経験していると、自然と国民は将来を不安視するようになり、節約をするようになります。
すると、企業はモノやサービスが売れなくなってしまうので、買ってもらうために価格を下げて売ろうとします。
しかし、ただ価格を下げると利益率が下がってしまうため、利益率を維持するためにはコストを下げないといけません。
素原材料価格は市場で決まるため、企業の都合で価格を変化させることは出来ないため、企業側がコントロールできるコストは人件費ということになります。
そこで、企業が非正規雇用を増やしたり、正規雇用者への賞与を減らしたり、昇給を見送ってコストを削減すると、個人はより節約志向が高まります。
すると、また企業はモノやサービスが売れなくなるため、更にコスト削減を実施して価格を下げ…
このような悪循環をデフレスパイラルと呼びますが、これはなかなか止めることが出来ません。なぜなら、ミクロの観点で考えると、個人も企業も合理的に節約やコスト削減をしてしまっているからです。
ただ、各自が合理的に動いた結果、マクロではデフレスパイラルという最悪の状態に陥ってしまっている。不思議ですね。こういう現象を「合成の誤謬」といいます。
このように、ミクロとマクロ両方の観点を持たないと、片方では正しいけれど、もう片方では誤った決断をしてしまったりするのです。

勝率を上げるために必要なマクロの観点

経済の分野で例を出しましたが、これは実業の世界でもよく見られる光景です。
私はベンチャー企業の資金調達の支援もしていますが、企業の経営陣が自社の都合だけで作った資金調達政策については、マクロ環境の現況分析と将来予想に基づいて修正を入れさせてもらっています。
たとえば、経営者は周りの起業家たちがVCから多額の調達を繰り返しているから、自分たちもどんどん先行投資をして赤字を掘っても大丈夫だと強気な計画を立てていたとしましょう。
しかし、マクロ環境を分析すると、明らかに近い将来、金融環境が引き締まっていき、投資家や金融機関の出資・融資判断が厳格化することが分かっていたとします。
その場合においては、会社としてはこのようにすべきであるというミクロの主張に対して、マクロ環境という外部要因による制約を提示することで、資金調達計画をより現実的なものに落とし込むことが出来るのです。
マクロの観点というとミクロの世界では無用と考える人も多いですが、ミクロの世界における勝率を上げるためにはマクロの観点が必要になります。
この度、CFOや事業責任者を目指す方に向け、ミクロとマクロの観点を同時に学べるプロジェクトを開催します。
ぜひ、この機会をご活用ください。
CFOや事業責任者が知るべき、金融と経済の本質』は5月27日 (土)スタートです。
詳細、お申込みはこちら。