[10日 ロイター] - 米銀行危機や景気後退(リセッション)懸念で停滞していた高格付け社債の発行市場が足元で活気づいている。

8日にはアップル、TモバイルUS、メルクをはじめ11社が合計で225億5000万ドルを起債。応募額は612億5000万ドルとほぼ3倍で、需要の強さも示された。1日にもメタ・プラットフォームズやコムキャストなど11社が社債発行に動いた。

インフォーマ・グローバル・マーケッツのデータによると、4月の社債発行額は657億ドルと、同月としては10年ぶりの低水準だった。しかし5月はこれまでに高格付け企業による起債額が575億ドルに達し、4月を上回るペースとなっている。

ペイデン・アンド・ライゲルの投資適格社債戦略責任者ナタリー・トレビシック氏は「社債スプレッドは、銀行破綻とその直後に拡大した水準からは反転縮小してきた。このため企業側からは起債の好機だとの声が出ている」と述べた。

投資適格債利回りの米国債に対する平均スプレッドは3月15日に164ベーシスポイント(bp)まで広がったものの、9日は149bp。USバンクの投資適格債トレーディング責任者ブレア・シュウェド氏は「今月になって大手企業からの起債が続いている。決算発表に伴うブラックアウト期間が終わり、金利環境もそれなりに落ち着いているからだ」と指摘した。

インフォーマのデータに基づくと、9日の高格付け企業の発行は4件にとどまり、他の4件は延期された。

ただ10日に発表された4月米消費者物価指数(CPI)が市場予想通りとなったことは今後の起債環境にとってプラスに働きそうだ。ある市場関係者は「CPIが予想より悪ければ社債発行計画に影を落としただろうが、そのリスクは消え去った」と話した。