住まい空間における「音」問題。コロナ禍で在宅時間が増加し、外からの音だけでなく自分たちが発する音への意識が高まっている。住まい空間における「音」は、心の豊かさやリラックスをいかに育むのか。
大和ハウス工業は、音を漏らさないというだけでなく、音の“響き”にも注目し、空間の明るさと音楽の質を楽しむ快適防音室「奏でる家」を開発。日々を豊かに心地よく過ごせる音と住まいのより良い関係性を提案している。その取組に込めた思いとは。
その内容をLIFULL HOME’S とNewsPicks Creationsが立ち上げた新プロジェクト「住まい選びをアップデートせよ」の関連イベントのセッションで紐解いていく。
Speaker
・大和ハウス工業株式会社 研究所 玄晴夫氏
・グッドモーニングス株式会社 水代優氏

Moderator
株式会社LIFULL 高瀬一輝氏

住まい購入のきっかけは「防音」?

──コロナ禍で在宅時間が増加したことをきっかけに、住まい空間を見つめ直す人が増えたと思います。
 そこでLIFULL HOME’Sは、コロナ禍を経験した人たちが生活や住まいに何を求めるようになったのかを探るべく、「コロナ禍以降の生活や住み替えインサイト調査」を実施しました。
 すると、「家族との時間を大切にできる生活をしたい」「プライベートの時間の充実を重視したい」というニーズの高まりがわかったんです。
 また、生活価値観の変化に関するインタビューを実施すると、住まいを購入する動機として「生活を再構成したい」「家族を大切にしている自分になりたい」「自分を癒せる空間や時間が欲しい」といった声が上がり、コロナ禍は住まいや家族の在り方を見直すきっかけになったと言えます。
 さらに、LIFULL HOME’S住まいの無料相談窓口には、「音」や「防音」をきっかけに住まい購入を検討される方の割合が、コロナ前後で「音」は1.02倍に、「防音」は1.84倍に増えたこともわかりました。

東京の夜は静かすぎる? 音に対する寛容性

──「防音」を気にする人が増えた背景には、在宅時間が増えて家族との時間を大切にしたい、自分らしい暮らしを追求したいといった価値観の変化があると思いますが、「音」と「住まい」はどのような関係性を築けばいいと思いますか。
水代 僕は、そもそも東京の夜が静かすぎると思っているんです。海外に行くと、友人が夜中に音楽を流しながらパーティーを始めることはよくあって、その状況を見ていると日本社会はいろんなことに寛容になった方が解決する問題が多いと日々感じています。
 日本社会に寛容性がなくなりつつあるのは私も肌で感じます。公園や学校に近い立地は住居にとっても良い環境なのですが、近年は嫌がられる傾向にあるんですね。公園で遊ぶ子どもの声がうるさい、学校行事がうるさいという人が増えているようで。
 保育園にしても、ないと困るけれど住居の近くに建設しないでほしいという意見はとても多いです。

──音を出す側と聴く側の双方に、どんな視点が加われば音問題は解決すると思いますか。
水代 僕は普段から街や地域、企業のいろんな問題解決に携わっていますが、「どうすれば問題を解決できるのか」と考えている時点で、解決から遠ざかっているケースが多いです。
 大切なのは「こうなったらいいよね」というワクワクやドキドキから考えること。そうしないと、リアルな解決方法には導かれません。
 たとえば、私が海の家を作ろうとしたとき、いろんな課題が出て反対もありました。でも、「この美しい夕日をたくさんの人に見せたいんだ」というワクワクからアプローチした結果、違う道ができたんです。
 だから、音に関してもワクワクとドキドキを探すのが大事だと思います。
 問題解決というと、何か悪いものを改善するイメージがりますが、音に良いも悪いもないんですよね。その人がどう感じるか次第。
水代 そうですね。極端な話ですが、音が気になる人が防音の家を購入できるような街づくりをしたら、意外と問題は解決できるかもしれません。

窓もあり、天井も高い防音室「奏でる家」

──「防音」をきっかけに住まい購入を検討される人に話を聞くと、「子どもがピアノを弾いたり騒いだりする音が気になる」「ギターを演奏したい」「奥さんがバイオリンを弾く」など、音を楽しみたい人が周囲を気にするケースが増えているようです。
そこで大和ハウスでは、音楽を快適に楽しめる新しい「防音室」を作られました。ご紹介いただけますか。

 従来の防音室は、天井が低くて窓もない、狭い“箱”のイメージだと思います。箱を家の中に設置して、その中で音を出す。
 でも、家で音楽を楽しみたい人と、一緒に暮らす人が快適に過ごせる空間づくりができたら、それはとてもハッピーなことですよね。だから我々は、音響も考えて天井の高い広く明るい防音室「奏でる家」を開発しました。
──防音室に窓があるイメージがないので、従来のものとは全く違いますね。
 そうですね。従来は音楽を演奏する人のためではなく、周りの人に迷惑をかけないための防音室が作られていました。しかも一人でこもって練習するための設備だったんですね。
 でも、音楽を演奏する人にとって大事なのは音響で、音響に必要なのは高い天井や広い空間です。コンサートホールをイメージするとわかりやすいと思います。だから、広く明るい空間の防音室と、低音から高音まで音の響きが向上する音響アイテムを開発しました。
──音を出す側が閉じこもるのではなく、家の中で気兼ねなく演奏ができる。今までにない発想ですね。
 実は、これまで省エネや地震に強い家づくりはクローズアップされても、音は案外注目されてこなかったんです。でもコロナ禍をきっかけに、いろんな人が音を意識するようになりました。
 だから、技術者としてはこれからが腕の見せ所です。大和ハウスは街づくりもしているので、街全体が音に対してどういうアプローチを取ればいいのか、この街のこの暮らしの音環境はどうあるべきかなど、いろんなことに取り組んでいきたいと思っています。
本記事で紹介した「奏でる家」の詳細を紹介したカタログを用意しています。お求めの方は、こちらにご登録をいただければ幸いです。