[ワシントン 11日 ロイター] - イエレン米財務長官は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済的悪影響や最近の米銀行システムなどへの圧力を踏まえ、世界経済が直面する下振れリスクを引き続き警戒するという見解を示した。一方で、全体的な見通しは「それなりに明るい」と述べた。

国際通貨基金(IMF)は11日改定した世界経済見通し(WEO)で2023年の世界経済の実質成長率を2.8%とし、1月の前回見通しから0.1%ポイント下方修正したほか、金融システムの混乱が深刻化すれば生産活動が景気後退に近い水準まで落ち込むおそれがあると警告した。

これに対し、イエレン長官はIMFと世銀の春季会合の冒頭記者会見で「世界経済について否定的な見解をしすぎることはない」とし、「もっと前向きになるべきだ」と語った。

先月の米銀2行の破綻後に信用収縮を示唆する証拠は見られていないが、その可能性はあるとした一方、米銀行システムは引き続き強固で健全な資本と流動性を維持しており、世界金融システムは2008年の金融危機後に実施された大幅な改革により弾力的と指摘。「それでもなお下振れリスクへの警戒は怠らない」と言明し、春季会合では銀行の動向を巡る討議を続けたいという考えを示した。

さらに「引き続き堅調な雇用創出、インフレ率の緩やかな低下、堅調な個人消費など米経済が非常に好調に推移しているのは明らかだ。もちろんリスクは依然としてあるが、景気が悪化するとは想定していない」とした。

また、世界経済は昨秋に見込まれていたよりも良好な状態にあり、エネルギー・食品価格は安定し、サプライチェーンを巡る圧力は引き続き緩和されていると述べた。

ロシア産原油製品に対する価格上限はロシアの主要な収入源に打撃を与えると同時に世界のエネルギー市場安定化の一助となっていると述べた。

このほか、米財務省が金融安定理事会(FSB)やバーゼル銀行監督委員会などの国際的な機関を通じて、ノンバンクの脆弱性に対処しながら取り組んでいくと確約。債務面に関しては、高水準の債務負担が「あまりにも多くの国々に大きな経済的逆風」をもたらし、低所得国の半数以上が債務危機に近いか、債務危機に陥っているとし、国際的な債務再編プロセスを改善するための措置を呼びかけた。

ウクライナ戦争に関しては、ロシアから自国を守り続けるウクライナを支援し続け、制裁などの措置を通じた戦争終結に向けロシアに圧力をかけ続けるよう国際的なパートナー国に呼びかけるとした。