2023/3/31

【AI新時代】業界トップを走る「AI SaaS」が描く未来図

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 ChatGPTやDiffusion Modelなど生成系AI(Generative AI)が話題をさらい、日進月歩の進化に人々が感嘆の声を上げる今。
 私たちの想像を超えるスピードで新しい技術が世界を飲み込みつつあるが、優れたテクノロジーを社会へうまく実装するためには、誰もが手軽に使えるソフトウェアとしての“デザイン”が肝になる。
 今から遡ること10年ほど前の2012年、日本のAI研究を牽引する東京大学松尾研究室の卒業生によって創業された、AI研究開発のスペシャリスト集団がPKSHA Technology。
 2017年には東証マザーズ(現:東証スタンダード)上場を果たし、大手企業を中心に幅広い業種のパートナー企業と共同研究を行い、AI活用のための共創を進めてきた。
 こうして開発された多くのアルゴリズムや知能化技術を、いかにサービス化し、AIの社会実装を加速させるのか──。
「人とソフトウェアの共進化」を掲げるPKSHAグループの中で培った研究成果を、多くの企業が抱える課題を解決する「AI SaaS」として、カスタマーサポート領域に展開するのがPKSHA Communicationだ。
 まず、彼らが取り組むのは、その名が指す通り、企業と顧客の「コミュニケーション」で発生する問題の解決
 企業と顧客のつながりは、対面での接客から始まり、電話からWeb、リアルとネットが共存する世界へと拡大している。多様なチャネルが存在する中、企業は顧客とのつながりをどう設計すればいいのか。顧客コミュニケーションやCX(顧客体験)の重要度が高まり続けている。
 PKSHA Communication代表の佐藤哲也氏に、急伸する「AI SaaS」によって、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)や顧客コミュニケーションがどう進化するのか聞いた。

話題の“あのAI”は日本のDXを牽引するか

──文章生成や自動翻訳など、AIは私たちの生活に徐々に浸透し始めました。一方で、日本企業のDXは「成功した」と謳うには、まだまだ道半ばです。佐藤さんは、ビジネス領域でのAI活用の今をどう捉えていますか。
佐藤 AIがビジネスのすべてを変える──。2000年代にも、AI活用がもてはやされた時期がありました。
 しかし、当時は実際に現場への導入を試みても、かなり丁寧にデータから教え開発を続けないと、多くの業務では使いものにならないとAIへの失望が広がった。
 一方、自動応答をはじめとしたいくつかの領域においては、AIによる機械学習と親和性が高く、研究開発やサービス化が進みました。
 たとえば、チャットボットの活用は多様な業界で広がり、まさに今も、ChatGPTのような“人と対話するAI”が話題を集めています。
 今後、この流れはより加速し、さまざまなソフトウェアにAIが組み込まれ、AIを搭載したソフトウェアや「AI SaaS」が当たり前の世界になるでしょう。
 しかし、日本企業のDXを実現できるかという視点で見ると「AI SaaS」を導入したとしても、単体のソリューションだけでは、ほんの一部の業務改善にしかならないケースが数多くあります。
 当然ですが企業内には実に多くの業務が存在し、それらが複雑に連動しながら事業活動が行われているからです。
 点の業務の“デジタル化”だけでなく、ビジネス変革につながるDX実現のためには、最新テクノロジーを活用した複数のサービス導入と併せて、それぞれの事業活動を俯瞰した全体設計が必須となります。
 PKSHAグループの研究成果を「AI SaaS」として複数展開し、ビジネスとテクノロジーを熟知した専門家によるコンサルティングも行う我々は、企業と顧客のコミュニケーション領域のDXにおいて、一歩先んずる強みを備えていると自負しています。

顧客接点をDXする「AI SaaS

──企業と顧客の接点をDXするPKSHA Communicationのサービスとは? くわしく教えてください。
 企業と顧客をつなぐカスタマーサービスの領域は、「カスタマーサポート」「カスタマーサクセス」の2つに分けることができます。
 まず、カスタマーサポートでは、お客様の不安や不満を解消するため、その声をすくい上げ、抱えている問題をスピーディに解決する役割を担います。
 お客様が企業に問い合わせるチャネルとしては、電話やWebフォーム、メール、チャットなど多様なものがありますが、ここで課題となるのが、単純に多くの問い合わせを受け、人力による対応を続けると、企業側には莫大な時間とコストがかかる点です。
 こうしたカスタマーサポートの課題解決のために、弊社では「PKSHA Communication Cloud」という複数の「AI SaaS」と、DXの実現に向けたコンサルティングを併せたトータルソリューションを展開しています。
 現時点で「AI SaaS」が主に4つあり、今後も新しいサービス展開を目指していますが、すでにメインサービスは国内トップシェアの座にあります。
 問い合わせサイトの構築と管理ができる「PKSHA FAQ」は11年連続国内シェアNo.1で*1、累計800社、1500サイト以上の導入実績があります。
 AI自動応答チャット「PKSHA Chatbot」もチャットボットシェアNo.1で*2、エンタープライズ企業を中心に100社以上への導入実績、累計3億回以上の対話を提供しています。
*1:デロイト トーマツ ミック経済研究所「マーテック市場の現状と展望2022年度版 クラウド型CRM市場編(第6版)」*2:富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」
また、電話での問い合わせに音声で自動対応する「PKSHA Voicebot」や、お客様との会話を自動で書き起こす音声認識ソフト「PKSHA Speech Insight」なども取りそろえています。
 実際のカスタマーサポートの現場では、問い合わせ業務の自動応答を増やすことで全体の人員・時間的なコストを下げ、複数の「AI SaaS」を組み合わせながら、リソースの最適化を進めることが多いんです。
 具体的には「PKSHA FAQ」で問い合わせ業務を“標準化”し、多く寄せられるような問い合わせの質問と回答の中から“自動化”できる内容を見つけ、「PKSHA Chatbot」や「PKSHA Voicebot」の導入につなげていきます。
 これにより、お客様が抱えている疑問をストレスなく、すぐに自己解決できるようにしながら、本当にオペレータにつなぐべき問い合わせだけを抽出し、対応できるようになります。
 さらに、我々の強みは顧客チャネルに合った複数の「AI SaaS」だけでなく、DXの実現に向けた業務改革のご提案もできる点です。
 PKSHAグループには、PKSHA Communicationのほかにも、企業と事業創造をしながらDXなどを推進する「AI Solution事業本部」という組織があります。
 先ほどもお伝えした通り、カスタマーサポートの問い合わせは複数のチャネルからなり、業種や業態によってもプロセスが異なり、より高い効果を発揮するためには業務や事業全体の見直しも非常に重要です。
 また、それぞれの企業が抱える課題や問題を解決するには、「AI SaaS」以外の個別にカスタマイズされたAIソリューションが必要になる場合も多くあります。 
 その場合は、PKSHA CommunicationとAI Solution事業本部がタッグを組み、連携しながら「AI SaaS」のトータルソリューションとDX実現に向けたコンサルティングを提供しています。

継続的な「つながり」がビジネスを制す

──PKSHAの「AI SaaS」でカスタマーサポートのDXが劇的に進むことはよくわかりました。「カスタマーサクセス」領域については、いかがでしょうか。
 近年、従来の売り切り型ビジネスから月額利用型のサブスクリプションモデルがあらゆる業界に広がりを見せています。
 ITにおけるSaaSはわかりやすい例ですが、ほかにもファッションや車、食品・食材の宅配、家具家電、アニメや映画といったコンテンツなど、さまざまなサービスがサブスクリプションで提供されています。
 売り切り型ビジネスでは主に製品力の強さが、その成否を左右していました。
 しかし、テクノロジーの進歩が、他社製品の機能を取り込むスピードを上げ、コモディティ化が進む現代では、製品力だけで勝負していくためには常に最高の製品を出し続けなければならず、非常に難易度が高い。
 一方、SaaSのようにサブスクリプション型のビジネスでは、お客様としっかりつながって信頼関係を築くことができれば、製品力とは違った形での継続性を担保でき、収益も安定します。
 社会インフラが整い、サービスの提供コストが下がっていく中、カスタマーサービスにおける「カスタマーサクセス」の重要性はこれからますます高まっていくのではないかと考えています。
──ビジネスの“当たり前”が変わり、カスタマーサクセスへの取り組みが企業の未来をも左右する、と。
 従来のカスタマーサポート業務は、経営上の“コストセンター”として捉えられていた面も否めません。
 お客様からの問い合わせやクレームの対応先として、できるだけコストはかけたくないけれど、来た球にはしっかり対応してね、と。
 しかし、サブスクリプションモデルが広がった今は、完全にその認識が変化しました。
 既存のお客様がサービスやサポート体制に満足し、使い続けてくれることにこそ価値があり、さらに契約メニューのアップグレードやサービス拡張を依頼されるチャンスが、顧客コミュニケーションの中で生まれる可能性が少なくないからです。
 サポート業務が効率化され、オペレータのみなさんがよりハイレベルな対応や、アップセルにつながるトークに専念できるようになれば、経営へのインパクトも変わってくる。
 100人のオペレータがクレーム対応だけで終わるのか、次の製品導入につながる営業的な働きをしてくれるのかで、カスタマーサービス部門の存在価値は大きく異なります。

「Weave Trust」の実現を目指して

──今後、PKSHA Communicationはどのような未来を描き、AIの社会実装を加速させていきますか。
 私たちは新たな事業ビジョンとして、「Weave Trust(信頼をつむぐ)」を掲げました。
  細い糸がつむがれ、ひとつの太い糸になるように、PKSHA Communicationが取り扱う「AI SaaS」とコンサルティングを組み合わせながら、企業と顧客の信頼を生み出すという想いを込めています。
「信頼」をつむぐためには、顧客の成功や不満解消など、さまざまな要素の実現が必要です。
 PKSHAグループの共通ミッションは「未来のソフトウェアを形にする」ですが、PKSHA Communicationでは、まずカスタマーサービス領域に注力し、未来のソフトウェアを社会実装していきます。
 ルーティン業務の効率化や自動化はもちろんですが、目指すのは“人をエンパワーメントするソフトウェアです。「AI SaaS」がサポートすることで、人がより高度な仕事に挑戦し、人ならではの価値創造にフォーカスできる環境を生むことが重要だと考えています。
──「AI SaaS」が、人をエンパワーメントするとは?
「AI SaaS」は人と対話することで、精度や性能を高め、さらに人がそれを使うことで、能力を高めることができます。
 たとえば、「PKSHA Speech Insight」は、コンタクトセンターで問い合わせに応対するオペレータの能力を高め、拡張するソフトウェアです。
 具体的には、お客様とオペレータの会話をリアルタイムで自動テキスト化する高精度な音声認識AIサービスで、会話後にメモを記載するなどのアフターコールワークを効率化。応対品質の可視化や、NGワードを発していないかなどコンプライアンス違反の検知ができます。
 実は、コンタクトセンターの業務はとても高い技能が求められる一方で、多くの企業がオペレータの定着率に課題を抱えています。なぜなら、マニュアルを用意しても対峙するのは人なので、ノウハウが属人化しやすく、教育のためには一人ひとりの音声をひたすら聞いてアドバイスする必要が生じるなど膨大な工数がかかる。
 そこで、「PKSHA Speech Insight」を使っていただければ、受け応えのうまい方はより上手に効率的に、ノウハウがわからない人は自分がどこでつまずいたかを、テキストを読み返すことで、すぐ理解できます。
 ほかにも「PKSHA Chatbot」や「PKSHA Voicebot」はオペレータに代わってお客様のお問い合わせに自動対応するサービスですが、そこで生まれる「対話データ」から問い合わせや製品自体の課題を導き出せれば、カスタマーサービスの向上だけでなく、プロダクト改善につながる貴重な情報をデータとして開発チームに共有することもできます。
──AIによる真の社会変革が加速する時代。改めて、PKSHAグループの強み・環境の特徴を教えてください。
 PKSHAグループは、アルゴリズムの研究開発と企業との事業共創を通じたソリューション・プロダクト展開、そして「AI SaaS」のようなサービスを「人とソフトウェアの共進化」というビジョンのもとで生み出し、社会実装できる稀有な企業です。
 なかでも、PKSHA Communicationはより幅広い業界や業態へ「未来のソフトウェア」を社会実装していく役割を担っています。
 一般的にSaaSで解決できる業務課題は限定的と思われがちですが、ChatGPTやGPT-4をはじめ進化を続けるAIがより社会に浸透し、身近なものになると考えると「AI SaaS」は、あらゆる分野で展開されるのが当たり前になると思いますし、そのスピードを加速すべく、カスタマーサービス領域では我々が先陣を切り社会実装を推し進めていきます。
 しかし、理想の世界の実現のためには、まだまだ仲間が足りません。SaaS領域での経験を活かしながら、最先端の領域でチャレンジしたい方や、AIやソフトエンジニアリングの知見を使ってビジネスを変革するプロダクトを創りたい方には、とくに活躍いただける環境です。
 また、事業ビジョン「Weave Trust」に強い想いを込めた通り、単純な自動化や効率化をするAIではなく、企業と顧客の間に立ち、お互いの信頼をつむぐ「AI SaaS」を形づくっていきたい
 そのためにも、どんどん新しいサービスも生み出していきます。共に未来を描き、「AI SaaSの社会実装」を推進する仲間をお待ちしています。