2023/3/28

【驚嘆】「見逃されたがん」を見つけるAIドクターの実力

INDEX
  • ハンガリーが先導する「AI診断」
  • 命を救う技術の可能性
  • AIの成果は「地道な訓練」の賜物
  • 乳がん診断の第一人者も太鼓判
  • 各地で広がるAI診断
  • 医師とAIの「共同作業」

ハンガリーが先導する「AI診断」

ハンガリーのブダペスト郊外にあるバーツ・キスクン郡病院の暗い部屋で、キャリア20年以上のベテラン放射線科医エバ・アンブロザイは、コンピュータのモニターに映し出されたある女性のマンモグラフィ画像をのぞき込んでいた。
すでに2人の放射線科医が、このX線写真には乳がんの兆候は見られないと判断していた。だが、アンブロザイは赤い丸で囲まれたいくつかの場所を注視した。それはAI(人工知能)ソフトウェアが、がんの可能性があると判断した部分だった。
「何かがあります」と、彼女は言った。すぐに女性を呼び戻すよう指示し、翌週、生検が行われることになった。
いまやAIは、医師が見逃すような微細な異変を検出できるほどの進歩を遂げ、乳がん検診に飛躍的な進歩をもたらしつつある。その精度は、少なくとも人間の放射線科医に劣らない。
それはAIが人々の健康状態を改善できることを示す、今のところ最も具体的な事例だ。
AIによる乳がん診断を導入しているハンガリーのバーツ・キスクン郡病院(Akos Stiller for The New York Times)
ハンガリーでは乳がん検診が徹底的に行われており、AIを医療現場の診断に活用する最も大々的な実験の場となっている。
2021年以来、同国では年間3万5000件以上の検診を行う5つの病院でAIによる診断が開始され、放射線科医でも見落とす可能性があるがんの兆候を確認するうえで有用であることが明らかになっている。
アメリカやイギリス、EUの病院も、このAIシステムの開発に役立つテストやデータの提供を始めている。