[フランクフルト 16日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は16日の理事会で0.5%ポイントの大幅利上げを決定した。利上げは6会合連続。

理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。

<基調的なインフレ巡る課題>

(基調的なインフレの)特定領域での若干の改善が確認されているが、率直に言って、それほど大幅ではない。

コアインフレを見るにせよ、他のインフレに関する詳細な分析、特にサービス部門のインフレを見るにせよ、われわれのインフレ見通しが確認できるような方向にはまだ向かっていない。

<断固たる決断>

今回の0.50%ポイントの利上げはカバーすべき領域を考慮した断固たる決断であると確実に確信している。

<欧州の銀行は強靭>(デギンドスECB副総裁の発言)

(欧州の)銀行はリジリエント(強靭)だ。自己資本比率は高く、流動性バッファーは頑強で、米国の(金融)機関に対するエクスポージャーは限定されている。全体の評価は極めて明確だ。欧州の銀行業界は強靭だ。

<物価安定と金融安定のトレードオフはない>

物価安定と金融安定はトレードオフの関係にあるわけではない。今回の決定でECBはこれを実証した。

<流動性危機はない>

流動性危機が発生した場合は、必要に応じて極めて短い時間で対応できると(ECBスタッフは)これまでも実証してきた。しかし、現時点でこうしたことは起きていない。

<銀行部門は2008年より一段と強固>

2008年前後に何が起き、何をしなければならなかったのか、今でも明確に覚えている。われわれは枠組みを改革し、(大手行向けの新たな資本規制)「バーゼルIII」に合意し、自己資本比率と財務カバレッジ比率も引き上げた。その結果、銀行部門は現在、08年時点より一段と強固になっている。

<3段階の対応>

第1は入手される経済・金融データを踏まえたインフレ見通しの評価、第2は基調的なインフレ動向、第3は金融政策の伝達の強さだ。

<政策決定>

理事会は声明に記載されている選択肢を提案した。他の選択肢は提案されなかった。

今回の決定はかなりの多数で採択された。3、4人が支持しなかったが、原則を支持しなかったわけではなく、状況の展開や追加データを見るためにもう少し時間をかけることを望んでいた。

<基調見通しの注意点>

ECBスタッフの基調見通しはデータと状況の評価に基づいているが、データ収集の締め切り日は、国際見通しとテクニカルな前提については2月15日、ユーロ圏のマクロ経済予測については3月1日だった。このため、このところの動向や、このところの金融危機で市場に及んだ影響は織り込まれていない。

不確実性は明らかに高まっている。これがデータに依存する原則を強化する理由だ。

<データ依存アプローチ>

不確実性が高まっていることで、政策決定におけるデータに依存したアプローチの重要性が増している。政策決定は入手される経済、金融データ、基調的なインフレ動向、金融政策の伝達の強さを踏まえたインフレ見通しの評価に基づき決定される。

<インフレとの戦い>

インフレとの戦いへのコミットメントは緩めていない。中期的にインフレ率を2%に戻すという決意は揺るぎない。今後のペースは完全にデータに依存する。

<インフレの上振れリスク>

インフレの上振れリスクには、短期的に小売価格の予想以上の上昇につながる可能性のある既存の圧力が含まれる。

<基調的な価格圧力>

基調的な価格圧力はなお強い。

<成長の下振れリスク>

経済成長見通しは下方に傾いている。

市場の緊張が持続的に高まっていることで、広範な信用状況が予想以上にタイトになり、信頼感の低下につながる可能性がある。

ロシアによるウクライナに対する不当な戦争は、引き続き経済に対する重大な下振れリスクになっており、エネルギーと食料のコストが再び押し上げられる可能性がある。

<堅調な労働市場>

賃金の上昇とエネルギー価格の下落は、高インフレによって多くの世帯で生じている購買力低下を一部相殺し、個人消費を支援することになる。経済活動は減速しつつあるが、労働市場は堅調に推移している。

<景気は回復へ>

景気は今後数四半期をかけ回復する見通しだ。供給状況がさらに改善し、信頼感の回復が続き、企業が大規模な受注残に対応することで、工業生産は回復する見通し。

<市場の緊張を監視>

現在の市場の緊張を注意深く監視しており、ユーロ圏の物価安定と金融安定維持に向け、必要に応じ対応する用意がある。