[東京 15日 ロイター] - 東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERA(東京都中央区)が昨年シンガポールで発行したドル建て社債について、環境問題に取り組む非政府組織(NGO)が14日、シンガポール証券取引所(SGX)に異議を申し立てた。ウクライナ情勢が燃料費に与える具体的な影響など、財務と法的リスクに関する重要情報の開示が不十分だとしている。

異議を申し立てたのはオーストラリアを拠点に活動するマーケット・フォース。JERAが昨年4月に発行した5年債3億ドルの目論見書の内容を問題視している。JERAとして初の米ドル建普通社債だった。

申立書によると、SGXは事業リスクの詳細を目論見書などで開示するよう義務付けているが、JERAによる液化天然ガス(LNG)事業に関するリスク開示は部分的と指摘。特に、ロシアのウクライナ侵攻を受けて燃料調達コストが高騰する中で、具体的な影響への言及がないとしている。

同社が関与するオーストラリアでのガス採掘事業をめぐる訴訟など、財務リスクを伴う具体的な係争案件に触れていないほか、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が加速した場合の分析や対策についての開示が不十分とも指摘している。

JERAはロイターの取材に対し、異議申し立てがあったことを含め、事実関係を確認中と回答した。

JERAはLNG調達量で世界有数の発電会社。マーケット・フォースはJERAの社債を保有していないが、SGXの通報制度を通じて今回の申立てを行った。気候変動に関する開示のあり方を巡り、投資家による監視強化を呼びかける狙いがあるとみられる。

マーケット・フォースは昨年、他の団体と共同で、東京電力と中部電力に気候変動対策の強化を求める株主提案を行った。提案は否決されたが、環境問題に関する株主提案の動きは広がっており、企業への圧力は一段と高まっている。

(山崎牧子、大林優香 編集:久保信博)