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Weekly Briefing(スポーツ編)

錦織敗因分析、ジョコビッチとマレーの因縁、カタールのW杯戦略

2015/2/1
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。日曜日はスポーツに関するニュースを紹介します。

Pick 1:カタールはサッカーW杯優勝を金で買えるか?

Kann sich Katar zum Fußball-Weltmeister kaufen?(ビルト紙、2015年1月30日)

カタールで開催されているハンドボールW杯の準々決勝で、ドイツがカタールに24対26で敗れた。

それを受けてドイツの大衆紙『ビルト』が問題視したのは、カタールが帰化選手を中心にした“多国籍軍”だったことである。

今回のカタール代表の帰化選手の出身国は次の通り:キューバ、スペイン、ボスニア、エジプト、チュニジア、モンテネグロ、フランス。確かに『ビルト』が負け惜しみを言いたくなる気持ちもわかる。

『ビルト』の怒りはこれくらいの批判では治まらない。同紙はさらに、カタールの大本命は2022年に同国で開催されるサッカーW杯であると指摘した。

カタールはサッカー強化に惜しみなく資金を投じており、2004年、11億5000万ユーロ(約1500億円)をかけてトレーニングセンター「アスパイア・アカデミー」を完成させた。

2013年9月には元ハンブルガーSVの育成責任者、シュテファン・ヒルデブラント(41歳)をアカデミーのテクニカルディレクターに抜擢。着々と育成環境を整えている。

その甲斐あって、昨年10月、U19アジア選手権で初めてカタールが優勝した(日本は準々決勝で敗退)。

さらにカタールサッカー協会はヨーロッパのクラブとの提携戦略を進めており、U19代表選手の多くがベルギー2部のオイペンでプレーしている。オーストリアのリンツとスペインのビジャレアルとも提携した。

現在のサッカーのカタール代表には、ブラジル、ガーナ、ウルグアイ、アルジェリア、コンゴ、スーダンの出身の選手がいる(FIFAの規定により、カタールに2年間住み、他国のA代表の公式戦の出場経験がなければ、カタール代表になれる)。

そういう“帰化政策”に加え、優れた育成を受けた若者たちが加わってくれば……。カタールが本当に2022年W杯の台風の目になれるかもしれない。

Pick 2:中東勢がオーストラリアのアジアサッカー連盟所属に不満

AFC加盟国の反乱、「オーストラリアよ出ていけ」(AFPBB、2015年1月30日)

AFPによれば、アジアサッカー連盟のサルマン会長が日刊紙アル・イティハドに対し、湾岸諸国やその他の国々がオーストラリアに対し不満を持っていると明かした。

オーストラリアは2006年W杯までオセアニアサッカー連盟に所属していたが、より高い競争を求めてアジアサッカー連盟に加盟。狙い通り、それ以降2大会連続でW杯出場に成功している。

だが、その割りを食ったのが日本と韓国以外のアジア勢。特に中東勢だ。オーストラリアの加盟後、イランしかW杯に出場できていない。

【アジア地区・W杯出場国】
2006年W杯:日本、韓国、サウジアラビア、イラン
2010年W杯:日本、韓国、オーストラリア、北朝鮮
2014年W杯:日本、韓国、オーストラリア、イラン

資源マネーの追い風により、中東勢の発言力が大きくなり続けている。たとえば、5月29日に行なわれるFIFA会長選に、ヨルダンのアル・フセイン王子が立候補した(他には現職のブラッター、元ポルトガル代表のフィーゴが立候補)。

W杯での躍進を狙う日本としては、アジア予選のレベルアップが自分たちの利益につながる。日本サッカー協会は中東勢の声の大きさに負けず、うまく舵を取りたいところだ。

Pick3:カナダ人クライマーが凍結したナイアガラの滝に挑戦

Check out an incredible ice climb up Niagara Falls(レッドブル、2015年1月29日)

カナダ人クライマーのウィル・ガッドが、凍結したナイアガラの滝に挑んだ。

流れ落ちる水が凍結してできた「氷壁」のため、幾つもの氷の層が積み重なってできており、空気も混入していて非常に不安定。ピッケルを打ち込むと、氷が剥がれ落ちてしまうことも。

とにかく圧巻はその映像と写真。一見の価値がある。

今週の主なスポーツイベント

【テニス】2月1日(日):全豪オープン男子シングルス決勝
 【サッカー】2月1日(日):ACミラン対パルマ(*本田圭佑)
 【NFL】2月1日(日):第49回スーパーボウル
 【野球】2月1日(日):プロ野球キャンプイン
 【サッカー】2月4日(水):ドルトムント対アウクスブルク(*香川真司)
 【スキー】2月7日(土):W杯ジャンプ男子個人(ドイツ)
 【スキー】2月7日(土):W杯ジャンプ女子個人(ルーマニア)
 【サッカー】2月7日(土):フライブルク対ドルトムント(*香川真司)
 【サッカー】2月7日(土):エバートン対リバプール(*マージーサイド・ダービー)
 【サッカー】2月7日(土):ユベントス対ACミラン(*本田圭佑)
 【相撲】2月8日(日):大相撲トーナメント
 【カーリング】2月8日(日):カーリング日本選手権(15日まで)

全豪オープン2015ドロー表_150201
【特別テニスコラム 文・上田裕】

◎錦織圭の全豪ベスト8をどう見るか

先週のコラム執筆時点で「全豪オープン4回戦進出」とお伝えした第5シードの錦織圭は、4回戦で第9シードのフェレールにセットカウント3-0(6-3、6-3、6-3)のストレートで勝利するも、準々決勝で第4シードのワウリンカに0-3(3-6、4-6、6-7)のストレートで敗れてしまった。

結果、錦織の今年の全豪の成績は”ベスト8″となったわけだが、この結果をどう見ればよいのだろうか。

実は、錦織が全豪でベスト8に入るのは2012年以来3年ぶりだ。3年前は第24シードで登場し、4回戦で当時第6シードのツォンガにフルセットで勝利してのベスト8であった。つまり、前回は自分より格上に勝ってベスト8に入ったという”快挙”の意味合いが強かったが、第5シードで登場した今回は、当然準々決勝までは自分よりランキングが下の選手にしか当たっていない。

よって、錦織の今回の全豪ベスト8はシード選手としての期待値を守る、ランキング一桁の選手としての責任を果たした結果だと筆者はポジティブに考える。

錦織の具体的な試合に関しては、4回戦の充実感と準々決勝の不完全燃焼感がコントラストになっていると感じた。

4回戦のストレートで勝利したフェレール戦は、事前に「自分の得意なラリー戦に持ち込める」と本人が言っていた通りに、終始錦織ペースでストローク戦を展開していた。フェレールもラリー戦が得意なタイプだが、ストロークの角度の付け方、タイミングのコントロールは錦織に分があったため、途中からフェレールは錦織にいいようにウィナーを取られて、ミスを積み重ねてしまった。

数字にもこれがよく現れている。(錦織のウィナーは43、フェレールは13。錦織のエラーは44、フェレールは44)錦織は相手の土俵で戦い、力の差を見せつけたのだ。

一方、準々決勝のストレートで敗戦してしまったワウリンカ戦は、試合を通して錦織の得意なストローク戦で優位に立つことが出来なかった。ワウリンカの戦術で特に目立ったのはデュースサイドのワイドへのスライスサーブ(右利きの選手のフォアサイドの遠い方に切れていくサーブ)と、片手バックハンドのアングル&ストレートだ。

ワウリンカのこの試合のサービスエース20本のうち、9本がこのワイドへのスライスサーブであった。このスライスサーブを辛うじて返球したとしても、コート右側に大きく追い出されればその後のラリー戦を優位にすることは難しい。

また、錦織の得意なラリー戦のパターンとして、バックハンドのクロスラリーでどんどんタイミングを早めていき、機を見てストレートにコースを変えて叩き込むという戦術があるが、このパターンはワウリンカも同じく得意にしている。そして、この試合ではワウリンカの方がこのパターンとなった時に優位に展開していた。(バックハンドウイナーの数はワウリンカが7、錦織が4)

バックハンドのクロスラリーとなっても、ワウリンカは片手バックハンドで左利きプレイヤーのフォアハンドかと思わせるくらい強いスピンをかけたボールで、厳しい角度をつけ錦織のバックサイドに襲いかかってきた。そのアングルに打たれたバックハンドを錦織は返球したとしても、フォアサイドに大きくスペースが空いているため、ワウリンカのバックハンドでストレートに叩き込まれてしまった。

ストローク戦で主導権を握れなかった錦織はミスを連発して一気に2セットを落とした。3セット目は戦術を変え、自分のサービスゲームでは普段あまり使わないサーブ&ボレーを多用してタイブレークまで持ち込んだが、そのタイブレークも結局6-8で落として敗戦となった。象徴的なのがタイブレークのポイント6-6の時だ。錦織はドロップショットを奇襲として仕掛けたが、そのボールも僅かにネットを越えずに反撃は潰えた。

自分の得意なパターンに持っていけなかった時への対応能力は向上していると感じたが、まだ格上の選手に勝ち切るほどの武器にはなっていないのだろう。この「ベスト8」という結果を錦織本人、そしてマイケル・チャンがどう受け止め対策をしてくるか注目だ。

◎ジョコビッチとマレーの因縁

今年の全豪オープンの男子シングルス決勝は第1シードのジョコビッチと第6シードのマレーの対戦となった。日本時間の本日17:30からスタート予定だ。2人とも1987年5月生まれの27歳であり、ジュニア時代からライバルであったという。

プレースタイルも2人とも頭脳的なストロークを中心としたオールラウンダーという点でよく似ている。サービスやネットプレーといった攻撃が盤石なのはもちろんのこと、2人とも本当によく走り、1試合に何度か信じられない守備やカウンターを披露してくれる。

強いて言うならば、よりジョコビッチの方がストロークにスピンをかけて振り切るタイプで、マレーの方がタッチがよくタイミングを合わせて返球することが多い。

そのスタイルの影響からか、(一般的に緊張すると手元が狂うためタッチショットのミスをしやすくなる)試合の重要なところでラケットを振り切り続けるというメンタルの安定感や勝負強さは、ジョコビッチの方が上という印象を筆者は持っている。

4大大会の優勝回数はジョコビッチが7回(豪4・英2・米1)、マレーは2回(米1・英1)だ。そして、これまでの通算の対戦成績はジョコビッチが15勝、マレーが8勝だが、グランドスラムの決勝に限って言えば2勝2敗のイーブンだ。かつ、マレーが優勝した大会の決勝は両方ともジョコビッチに勝利している。

男子テニスはフェデラー・ナダル・ジョコビッチ・マレーの4人が長らくビッグ4と呼ばれていたが、昨年はマレーが調子を落としていたため、ビッグ4からマレーの名前を外して「ビッグ3」と呼ばれることもしばしばあった。

マレーは相当悔しかったのだろう。ディミトロフ、キリオス、ベルディヒの攻撃を凌駕して勝利した試合を見ると、以前全米やウィンブルドンで優勝した時の強さが戻ってきたように感じる。

王者ジョコビッチのテニスはラオニッチ戦、ワウリンカ戦を見る限り盤石だ。マレーはチャレンジャーになりきることが出来なければジョコビッチに勝つチャンスはないと思うが、どこまで貪欲に食らいつけるか。間違いなく世界最高峰のラリーが展開されるだろう。2人の同い年の因縁の対決から目が離せない。

◎女子シングルスはセレナ・ウイリアムズが優勝

全豪オープンの女子シングルス決勝では、第1シードのセレナ・ウィリアムズが、第2シードのシャラポワに6-3、7-6でストレート勝ちして、5年ぶり6度目の全豪優勝を果たした。セレナの4大大会シングルスの優勝回数は通算19勝目となり歴代3位となった。

筆者はこの試合をテレビ観戦したが、直線的なフラットボールの一本槍で攻めるシャラポワに対し、直線的なボールだけでなく、スピンをかけてボールの高さや角度を自在に操ったセレナが終始試合を有利に展開した印象だ。

パワーで互角、もしくは上回る相手に展開力でも負けていたら試合に勝つことは難しいだろう。セレナの優勝回数19回は本当に素晴らしい記録だと思うが、さすがに独走させすぎではないだろうか。数年前に引退したベルギーのエナン、クリスターズのようにスピード、展開力でセレナと大舞台で互角に渡り合える選手が再び出てくることを願ってやまない。