2023/2/8

悩める24卒に告ぐ。「納得のいく就活」を進めるカギはこれだ

NewsPicks Brand Design Editor
 24卒学生の就職活動も、いよいよ本格化する。
 リモート授業が当たり前になり、学生時代に力を入れたこと――いわゆる“ガクチカ”を作るのも難しいと言われる昨今、不安な気持ちで就活に臨む就活生も少なくないだろう。
「大卒の新卒社員の約3割が入社後3年で離職する」とも言われるなかで、どうすれば中長期的なキャリアにつながり、かつ自分自身が「納得のいく」かたちで就活を進めることができるのか。
 そのヒントを探るべく、就活生向けに2,953名()の“就活履歴”が閲覧できる新機能「就活レポート」をリリースしたばかりで、1,400万件を超える社員クチコミ・会社評価スコアを保有する転職・就職プラットフォーム「OpenWork」の大澤陽樹氏と、現役大学生でありながら、就活系YouTuberとして活動するしゅんダイアリー氏の対談を実施。 ※2023年2月時点
 “超情報過多時代”を生きる就活生に向けた、応援メッセージとともにお届けする。
 学生はもちろん、社会人として働く読者にも参考にしてもらいたい内容だ。

コロナ禍で「二極化」する学生たち

――はじめに、お二方は24卒をはじめとした現在の就活生を取り巻く状況をどう見ていますか。
しゅんダイアリー(以下しゅん) まずは“コロナネイティブ”であることが大きな特徴だと思います。
 コロナ禍によって学校生活が変化した22卒や23卒とは異なり、24卒の大学生は1年生からリモート授業が当たり前になった世代です。
 なので、サークル活動を始めとした、いわゆる「学生っぽい活動」をほとんど経験していない学生の数も少なくありません。
 そのため、学生は二極化していると感じます。
 リモートでインターンや課外活動を頑張ってきたアクティブな学生もいれば、自宅でYouTubeやNetflixを見て時間を溶かす学生もいる。
 自ら行動を起こそうとしなければ、これといった活動ができない環境下で、動いた人と動いていない人の差が明確に出てきているのだと思います。
大澤陽樹(以下、大澤) 私も時たま、ツイッターなどで学生の方から「何をすればいいのかわからない」とメッセージをいただくので、状況はよく想像できます。
 実際、周りの人事の方からも「学生時代に力を入れたこと」―― いわゆる“ガクチカ”をつくれずに焦っている学生が多いという声を聞きます。
 とはいえ、まず就活生の方々にお伝えしたいのは、こと就活に関しては「それほど焦る必要はない」ということです。
 人事の方たちは、その年で相対化して学生を見ていることが多いので、ガクチカがコロナ禍によって少ないというのは当然理解しています。
 その大前提に立ったうえで、これまでの人生でどんな経験をしてきたのか、どういう人間性なのかといったことを見ています。
 大学や大学院だけでなく、中学や高校時代なども含めての「学生時代」ですからね。
しゅん 大澤さんのおっしゃるとおり、僕も面接では、ガクチカの「強さ」よりも、ガクチカをベースにした人間性や考え方が重視されていると感じます。
 やってきたことはもちろんですが、「なぜそれをやれたのか」「この会社で何をしたいのか」という本人の“内なる動機”を重視している、といいますか。
 キャンパスライフが制限される中で、「何から始めればいいのかわからない」と不安を感じる方も多いとは思いますが、自己分析や企業のリサーチなど、できることから一歩ずつ進めていくことをおすすめします。

納得のいく就活に必要な「4ステップ」

――今回の対談のメインテーマは、「納得のいく」就活をするためのポイントです。このテーマについて、お二方の考えをお聞かせください。
しゅん これは僕がYouTubeを運営するなかで実感することですが、就活って「自分を知る」「企業を知る」「受かる方法を知る」という3ステップで構成されていると思うんです。
 そして、そのどれもが重要なのですが、就活をしているとどうしても、「受かる方法を知る」こと、つまりテクニックにばかり目が行ってしまうような気がします。
 でも、実はそれ以前にある「自分を知る」「企業を知る」という2つのステップが非常に重要なんじゃないかと考えています。
 そこをなおざりにしないことが、納得のいく就活をするために必要なことでは、と。
大澤 同意見です。
 もちろんテクニックも重要なのですが、それだけでは不十分で、その前提となるその企業を受ける動機や、もっと言えば自分自身が働く動機を明確にすることが大事だと思います。
 その上で、しゅんさんの言葉に少しだけ付け加えさせていただくなら、「自分を知る」「他人を知る」「企業を知る」「受かる方法を知る」という4ステップで構成されていると思っています。
 そして、昨今の就活シーンでは、この「他人を知る」という要素がどうしても不足しがちになっているのでは、というのが私からの問題提起です。
 コロナ禍以前の学生生活では、身近な先輩から就活の情報が聞こえてきたはずです。たとえば、「マッキンゼーの1次選考に通った」なんて話が聞けて、そこで初めて、外資コンサルという存在を知る人も多かったのではと思います。
 そうすると、どんどん世界が広がっていく。「年収2,000万円の会社があるのか」「投資銀行という会社があるのか」と、選択肢が増えるステップがあったわけです。
しゅん たしかに、他人を知ることで自分をより深く知れる、というのはありますね。
 実は、僕は今でこそ就活系YouTuberとして活動していますが、以前はまったく異なるジャンルの動画を投稿していたんです。HIKAKINさんの真似をして、ビートボックスの動画をアップしたこともありました。
 でも、まったく数字が伸びなかった。そこで、気が付いたんです。「自分はHIKAKINさんではないんだ」って(笑)。
 じゃあどうすればいいのかと考え、仮面浪人に失敗した経験談を投稿してみたところ、はじめて10万回再生を記録。そのタイミングで、方向性をピボットしました。
 そもそもYouTuberになったきっかけは、HIKAKINさんになりたかったからではなく、誰かにポジティブな影響を与えられるようになりたかったから。
 他人を知ったことで、その原点に気付けましたし、自分なりの強みも見つけられました。
大澤 素敵なお話ですね。
 実は、今回のテーマである「納得のいく就活」について考えるにあたって、納得という言葉の意味を調べてみたのですが、一説によるともともとは仏教の用語だそうです。
 いわく、「他人の教えを自分のものにする」という意味合いだった、と。その考えに則るならば、他人を知らずして自分を知ることなんてできないのだと思います。
 でも、今の就活生は外部環境の変化によって、他人と自分を相対化する機会が圧倒的に少なくなってしまっている。
「とりあえず外資コンサルを受けた」「商社に内定した」といった“結果”ばかりが目に入り、なぜそうした選択をするに至ったかが見えなくなっているのです。
 その状態で納得のいく就活をするのは、極めて難しいのでは、と。
 また、これはコロナ禍に限った話ではありませんが、昨年ある大手転職サイトに4月に登録した新社会人の数が、10年前の約28倍になった、というデータがあります。
 終身雇用が崩壊した今、中長期のキャリアを見据えて転職サイトに早々に登録する人が増えているのだと思いますが、一方で入社直後に「あれ?なんか違ったな」と“ドリームクラッシュ”する新社会人も少なくないのでは、と推測します。
 誰しもある程度の「入社後ギャップ」はあるものだと思いますが、もしも「他人を知る」を含めた4ステップで就活ができれば、想像だにしない“クラッシュ”は防げるのではないか、と。

「企業軸」と「人軸」の情報をフル活用しよう

——お話しいただいた前提を踏まえ、就活生はどのようにして「他人を知る」機会を確保すればよいのでしょうか。
大澤 本来であれば、OB訪問などを通じた対話ができればいいのですが、先に述べたとおり、それが難しくなっています。
 その場合は、たとえばSNSや掲示板といった、インターネットサービスを活用するのが、まず一つの手だと思います。
 私たちも、「OpenWork」に新機能を加えました。
 年齢や価値観、出身大学・学部の近い先輩たちが、どのような軸で就活を始め、どの企業の選考を受けたのか、また内定を獲得した企業や最終的に入社を決めた企業はどこか、といった情報を見られる「就活レポート」です。
詳細は画像をタップ
 たとえば、「社会貢献がしたい」という就活軸を持っていた先輩が、どんな会社の面接を受けて内定を獲得したのか、そして最終的にどんな企業に入社したのかがわかる。
 すると、「ああ、こんなキャリアもあるんだな」と視野が広がりますよね。
 内定を得るためのテクニックは世にあふれていますが、他人と自分を相対化して、自分をつくっていくための手段はそう多くありません。
 そこで、およそ3,000人のデータがある「就活レポート」を見れば、それが可能になる。
 ちなみに、企業のクチコミを見られる「OpenWork」と併用すれば、10年後、20年後のキャリアも想像できると思います。
 入社したい会社を見つけて、そこで働く先輩社員のクチコミを見れば、「自分のなりたい30歳に近いな」とか「ちょっと違うな」と気付きを得られるかもしれません。
しゅん「人軸」で情報が検索できるのは、とてもいいですね。
 というのも、既存の就活サービスは、「企業軸」の情報がほとんどだと思います。この「会社の選考では、こういうことが聞かれますよ」とか。
 それは悪いことではないのですが、それでは「自分と価値観が合う人が何を見ているのか」が見えづらい。結果的に、納得できないまま就活を終えてしまう場合もあります。
大澤 おっしゃる通り、もちろん企業軸の情報も大事ですが、人軸の情報とあわせてまんべんなく収集することが大切です。
 私は就活中の情報収集は、横軸に「内定を取ること」と「中長期のキャリアを築くこと」、縦軸に「1対1と1対n」を置いた、4象限で考えるのが理想的だと考えています。
 就活のゴールは就職ではありませんが、とはいえ内定を取るのは重要なことです。
 内定がないのは当然不安ですし、働き口に困るかもしれない。その意味で、内定を取ることを重視するタイミングがあってもいいはずです。
 ただ、やはり先々のことも考えなければいけない。自分の市場価値を最大化するとか、自分らしさを生かすとか、そのためにキャリアという大きな軸で考えることも重要です。
 そして、内定を狙うにしろ、キャリアを考えるにしろ、アプローチの方法はさまざまです。
 一人で自分に向き合うことが重要な時期もあれば、ナビサイトから効率的に情報を取得するのがベストな時期もある。
 これらを使い分けることが、納得のいく就活の最短ルートだと思います。
——OpenWorkの「就活レポート」は、④の象限にあたるのでしょうか?
大澤 そうですね。「就活レポート」を活用したからといって、内定が取れるわけではないけれど、自分が大切にしたい就活軸に気付くことができたり、世界を広げていくことには役立つと思います。
しゅん 効率的に、かつ客観的に判断を下していく材料として、クチコミは革命ですよね。
 OB訪問をするとなると、腰が重い人もいるでしょうけど、クチコミを見るだけなら寝転がりながらもできる。
大澤 まさに、そう使ってほしいと思って開発しました。
 実は、「就活レポート」の開発をリードしたひとりは、現役の大学生なんです。
 いつも彼は「OpenWorkを、就活が始まり入社するまでベッドの上でゴロゴロしながら、何度も何度も気軽に見れるサイトにしたい」と言っていて(笑)。
 そんな彼が感じていた就活の課題は、まさに「出会いがなく、つながりを持ちづらいこと」。そんな状況を、自宅にいながらでも乗り来えられないかと、模索した末に生まれました。
 正直にいうと、この機能に関しては、単体での売り上げのめどは立っていないんです。
 学生は登録をしたら無料で利用できますが、企業からお金をいただくわけではありません。まずは就活生に納得がいくキャリアを築いてほしいという、ピュアな思いでリリースしました。
「OpenWork」はクチコミで広がり、就活生の2人に1人に利用いただけるサービスになりましたから、信頼に応え続けるためにも、学生にとって不利になることは絶対にしません。
 実際の「就活レポート」を見て、興味津々のしゅんダイアリー氏。

「本当の自分」に出会う方法とは?

——とはいえ、実際に働いた経験が少ない学生世代は他人の軸に触れたところで、自分軸を見いだせない可能性もあると思います。
大澤 これは私が多くの就活生とお話ししてきて感じることですが、今この瞬間に「これがやりたい」というWillがある就活生は、ほとんどいないと思います。
 だから、自分軸と言われても、ピンとこないのもわかります。ただ、ピンとこなくても、納得することはできるんじゃないかな、と思っていて。
 「何を一番大切にしたらいいかわからないけれど、少なくとも今はワークバランスを重視したい」というのであれば、ワークライフバランスを重視して就活した人のレポートを読んで、未来の自分を想像してみる。
 想像した自分が、納得できる自分なのであれば、そのまま突き進めばいいと思います。
 なんとなくそう思っているのに、そこに蓋をして、世間的に素晴らしいと言われている企業に入社する……といった選択をしてしまうと、会社も自分も不幸になりかねません。
 世界を広げながら、長い時間軸で、キャリアを考えることを提案したいですね。
しゅん 僕自身もいろんな先輩の話を聞いて今の自分の軸をつくってきたので、すごく共感します。
 そして、もしも、自分の軸が見つからないのなら、他人の物差しを、自分の物差しだと割り切るのも大切だと思いました。
「自分軸は見つからないけど、この先輩の考え方がしっくりくるから、いったんそれで行ってみよう」って。それを自分のものにしていけばいいだけなので。
大澤 そもそも、自分から生まれる知恵なんて、ほとんどないですからね。
 言語もそうですが、書籍や周囲から見聞きして、インプットして、自分のものになっていくんだと思います。
 でも、それをするためにも、やはり多くの人の声に触れるのが重要なんじゃないかな、と。
しゅん そう思うと、暇つぶしにネットサーフィンする時間を、クチコミを読む時間に変えたら、500件なんてあっという間ですね。
 そして、500件の先輩就活生のクチコミを読んだら、かなり立体的にキャリアについて考えられるようになるはず。
 一日かけてクチコミを読んだら、翌日に別人みたいになっている可能性もあります。
大澤 さすがに500件も読むのは大変かもしれませんが(笑)、でもまずは一つでも触れてもらえると嬉しいなと思います。
 繰り返しになりますが、就活における情報収集で気をつけてほしいのは、「こうあるべき」というセオリーに踊らされて、本当に自分が大切にしたい軸を見失ってしまうこと。
 セオリーに乗っかること自体は時に必要だと思いますが、それと同時に自分から見える景色を広げていかないと、結局相対化ができず、納得感が得られないと思うんですね。
 見える世界を広げていき、“This is me”を見つけられる就活生が増えることを心から願っています。